原子とは何か?

 原子(Atom)とは何だろう?Atomという言葉は、元はギリシャ語であり、「分割できないもの」という意味である。古代ギリシャのデモクリトスらによって、原子論という仮説が唱えられた。  

 近代に入り、現代的な意味での元素の概念が確立されると、「原子」はその最小構成単位を意味するようになり、これが現代的な意味での原子となった。当初は仮想的な存在であった「原子」は、その後の研究でその存在が確実視されていくと共に、その「原子」が更に内部構造を持つことも明らかになっていった。


Atom

 現代的な意味での原子は、もはや究極の分割不可能な単位ではなく、あくまで元素(これももはや世界の究極の構成要素ではないが)が元素としての性質を保ちつづけることができる限りにおいての最小単位である。

 中間構成単位としての原子は、下部構造として原子核と電子が存在する。このうち原子核は、更に陽子と中性子から構成され、その組み合わせに応じて現在約3000から約6000種類の原子の存在が知られている。

 ここで原子の化学的性質は、量子力学によれば原子核の電荷(=陽子の数=中性な場合の電子の数)によってほぼ規程されるため、陽子の数が等しいものを同じ原子と考えた場合は、約110種類の元素にまとめることができる。

 原子の半径は1億分の1 cm程度であり、質量は種類によって異なるが、10-24~10-22gである。分子は複数の原子が共有結合によって結びついたものである。種類は少ないものの1個の原子から成り立っている分子(単原子分子)も存在する。


 交換型垂直原子操作

 近年では、走査型トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いて、原子の一粒一粒が識別可能な分解能の像を観測したり、原子を一粒単位で移動させたりすることも可能になっている。

 大阪大学の森田清三氏教授は原子間力顕微鏡(AFP)を使って、原子を移動、スズ(Sn)原子が規則的に並んだ表面に探針先端シリコン(Si)原子を試料表面Sn原子と交換して埋込んで、原子埋込み文字”Si”を 作製した。

 原子間力顕微鏡(AFP)にある、非常に細い探針で表面の1つの原子に触れて力を加えると、探針先端原子と位置を交換することができるようになった。(2008年10月17日 読売新聞)


 水素原子の撮影に成功

 東京大の幾原雄一教授(材料科学)らのチームが、元素の中で最も小さい水素原子の撮影に初めて成功した。撮影に使ったのは「走査透過型」と呼ばれる最先端の電子顕微鏡。水素原子の大きさは1千万分の1ミリ程度しかない。これとほぼ同じ細さにしぼった電子のビームを、水素とバナジウムの化合物の結晶にぶつけ、結晶中の水素原子をとらえた。

 電子顕微鏡は、ピンぼけを防ぐ技術が開発されたことを背景に、どれだけ小さなものを撮影できるかの競争が近年、世界で激化している。  幾原教授は「すべての元素が見える時代になってきた。水素を使う燃料電池など、次世代のエネルギー技術の開発にもつながる」と話している。(asahi.com 2010年11月12日)


 世界初!の技術

 今回、東京大学の幾原教授らはファインセラミックスセンターナノ構造研究所および産業技術総合研究所と共同で新原理軽元素観察手法をさらに高度化することで、最小原子番号の水素原子を直接観察することに世界に先駆けて成功した。

 上図は、水素貯蔵金属として有望視されている水素化バナジウム(VH2)の超高分解能走査透過電子顕微鏡像(ABF-STEM 像)だが、バナジウム原子に加えて水素原子が鮮明に観察されている様子が分かる。

 本観察は、球面収差補正を用いた走査透過電子顕微鏡法による最先端観察技術と観察条件の理論計算を組み合わせることによってはじめて実現した。すなわちこの観察技術は、走査透過電子顕微鏡のレンズに球面収差補正を行うことで1オングストローム以下の分解能を達成すると共に、理論計算を用いて水素原子が観察できる検出角度を決定して計測することではじめて可能となった。

 本成果は、最先端の電子顕微鏡を用いることで全ての元素が観察されることを実証した画期的な結果であり、今後のナノテクノロジー・材料開発における研究のブレークスルーになることが期待される。

 また、次世代のエネルギーとして注目されている水素エネルギー関連の研究開発にも大きなインパクトを与えることも期待されている。(東京大学プレスリリース)

 

参考HP Wikipedia「原子」「電子顕微鏡」・東京大学「水素原子の観察に成功!」・日本表面科学会「原子を動かして文字を描く

液晶モニタで確認できるスタンドアローン電子顕微鏡 デジタルマイクロスコープ aigo EV5610

EXEMODE

このアイテムの詳細を見る
これならわかる電子顕微鏡―マテリアルサイエンスへの応用
奥 健夫
化学同人

このアイテムの詳細を見る

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please