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 「反水素」瓶に閉じこめた!
 理化学研究所などでつくる国際研究グループは、反物質の一種「反水素」を約0.2秒閉じこめることに世界で初めて成功した。反物質と物質の違いが分かれば、宇宙誕生の謎に迫ることができる。成果を英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
 Antimatter

 反物質は、通常の素粒子とは逆の電気を帯びた「反粒子」から成る。反水素の場合、マイナスの電気を帯びた反陽子と、プラスの電気を帯びた陽電子でできている。だが、両者を混ぜ合わせて反水素を作っても、「物質」と合体してすぐに消滅してしまう。

 研究グループはコイルや電極を組みあわせた特殊な磁気瓶を開発。スイスの欧州合同原子核研究機関(CERN)の加速器でうまれた約3万個の反陽子と約200万個の陽電子を混ぜ合わせて反水素を合成し、38個を瓶の中に約0.2秒閉じ込めたことを確認した。

 宇宙が誕生したとき、反物質と物質は同数あったとされる。両者は出会うとすぐに消滅するが、ほんのわずかな性質の違いのために完全には消滅せず、物質だけが残っていまの宇宙ができたとされている。 (asahi.com 2010年11月18日)

 反物質とは何か?
 反物質は、ダン・ブラウンの小説「天使と悪魔」で、ごく微量でも大規模な爆発を起こす爆弾の材料として登場するが、今回の方法ではすぐに消滅してしまい、爆弾に使える量ほどはためられなかったという。ふだんは見たり、聞いたりすることもない反物質とは何だろう?

 反物質は、質量とスピンが全く同じで、構成する素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ反粒子によって組成される物質。例えば電子はマイナスの電荷を持つが、反電子(陽電子)はプラスの電荷を持つ。中性子と反中性子は電荷を持たないが、中性子はクォーク、反中性子は反クォークから構成されている。

 この反物質と物質が衝突すると対消滅を起こし、質量が大量のエネルギーとなって放出される。例えば、1gの質量は約 9×10000000000000(90兆)J(ジュール) のエネルギーに相当する。ただし 発生するニュートリノが一部のエネルギーを持ち去るため、実際に反物質の対消滅で発生するエネルギーは、これより少なくなるといわれる。

 反物質の発見と生成
 1932年、宇宙線の研究をしていた物理学者のアンダーソンにより正の電荷を持つ電子、陽電子が発見された。また1955年、物理学者のセグレとチェンバレンにより、前年に建設された粒子加速器ベヴァトロンを用いて反陽子、反中性子が発見された。

 1995年、欧州原子核研究機構(CERN)とドイツの研究チームにおいて、陽電子と反陽子からなる「反水素」が生成された事が分かり、翌年1月に発表。2002年 欧州原子核研究機構で日本を含む国際共同研究実験グループにおいて、反水素の5万個ほどの大量生成に成功している。

 反物質は自然界には殆ど存在しないので、人工的に作らねば得ることが難しい。非常に高いエネルギーを持つ粒子どうしを衝突させると多くの粒子が新たに生成されることは、粒子加速器の実験で知られている。これは粒子が衝突前に持っていたエネルギーがそれに相当する質量に変わるためであり、物質と反物質の衝突とは逆の事が起きている。

 現在では、この粒子加速器という非常に巨大な装置を使って、人工的に高エネルギーの粒子を作り出し、それらを衝突させて反粒子を作りだし、捕獲することで反粒子を得ている。

 どうやって反物質を捕らえたか?
 今回研究グループは、八重極磁場という特殊な磁場分布を持つ磁気瓶を開発し、そこへ反水素原子を閉じこめることに成功した。具体的には、反水素原子の原材料である反陽子(陽子の反粒子)と陽電子(電子の反粒子)を、電場と磁場を調整してこの八重極磁気瓶中に蓄積し、そっと混ぜ合わせることにより、冷たい反水素原子を大量に生成した。

 次に、反水素原子ができあがったころを見計らって、磁気瓶中に蓄積した荷電粒子(反陽子と陽電子)をことごとく排出した後、磁気瓶の磁場を瞬間的にゼロにした。もし反水素原子が磁気瓶に閉じ込められていると、この瞬間に反水素原子が磁気瓶から逃げ出して装置の壁に当たって消滅し、その際パイ中間子などさまざまな粒子を放出する。従って、この放出粒子を観測することで、反水素の捕捉を確認することができる。

 この原理により、磁気瓶に閉じ込めた38個の反水素原子を確認することに成功した。反水素原子の捕捉は、次の反水素原子の高精度レーザー分光実験に向けた大きな前進である。(2010年11月18日 理化学研究所)

 反物質をエネルギーに利用
 反物質は粒子加速器を使う核融合実験の際に、微量ずつ発生しては、発生の次の瞬間には対消滅で消え去っている事が観測データから確認されている。石油やウランなどと異なり自然には殆ど存在せず、そのため反物質を得るには一から生成する必要がある。

 ただし、反物質を生成するのに必要なエネルギーは、反物質を燃料として消費するときに得られるエネルギーよりも大きいため、結局は損をする。これは、水素を燃料として使うために水を電気分解した後、再び燃料電池として電気に戻して消費するサイクルに似ている。ただ、エネルギー密度だけを考えれば非常に高密度であるので遠い将来の宇宙開発のような特殊な用途での利用が想像されている。反物質は物質に触れると爆発的な対消滅を起こすので貯蔵や取り扱いには工夫が必要になる。

 反物質は、周囲の物質と対消滅を行うことにより自身の質量の200%をエネルギーに転換できるので、宇宙開発上課題となっている燃料の質量を軽量化できる。NASAは反物質動力の推進機関に関心を示している。宇宙機のエンジンとして比べれば、化学燃料は質量の10-8倍が、核融合では質量の10-2倍、反物質を使えばその大部分がエネルギーとなる。例えば100kgの深宇宙探査機を50年間加速させるのに必要な反物質燃料は、わずか100μgで良い。

 

参考HP Wikipedia「反物質」・理化学研究所プレスリリース「反水素原子38個磁気瓶に閉じこめる」 
アイラブサイエンス「2009.3.22 反物質で大量破壊兵器?」「2009.3.23 実在する反物質をつかまえろ!


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