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 骨から何がわかるか?
 人骨資料は、形態学的研究のみならず、骨に残るタンパクとか微量の元素をもとに、たくさんの分析が可能である。たとえば、炭素の放射性同位元素を用いて、人骨の絶対年代を出す、炭素と窒素の安定同位体を用いて食性分析することなどが挙げられる。さらには、骨から直接、ミトコンドリアや核のDNAを抽出、増幅し、遺伝学の研究も行われるようになっている。

 例えば、2004年の11月15日に平壌から持ち帰った横田めぐみさんのものとされる遺骨は帝京大学法医学教室の吉井富夫氏と科学警察研究所でそれぞれ分析された。科学警察研究所ではDNAの抽出に成功しなかったが、吉井氏は選んだ5個の骨片のすべてから2種のDNAを見出した。しかし、そのいずれも横田めぐみさんの臍の緒から抽出したDNAとは一致しなかった。

Skulls    
 日本政府はこのデータに基づいて骨は横田さんとは別人のものであると結論し北朝鮮に通告した。北朝鮮は1200℃で焼いた骨にDNAが生き残るはずはない、これは捏造であると反論した。

 1200℃で焼かれたという骨にDNAが検出された事については吉井氏自身も「本当に驚いた」と語った。しかし彼自身もそれまでに火葬された骨の分析の経験は無く、この試験結果は最終的なものでないこと、また試料が汚染されていた可能性は否定出来ないことを認めた。「骨は固いスポンジのようなもので何でも吸着する。もし骨を扱った人の汗や脂が滲み込むとそれを完全に除去することは不可能だろう」と彼は述べた。

  骨から出身地までわかる?
 イギリス南部の町ウェイマス近郊で2009年6月に発見された人骨51体は、およそ1000年前に首を刎ねられたバイキングと判明した。いずれも若い男性の遺骨で、頭部が切断された状態で発見された。翌月に行われた放射性炭素年代測定法の分析で、骨の年代は西暦910~1030年と特定されていた。イギリス本土にバイキングの侵入が頻発していた時代で、彼らの出身は判然としなかった。

  今回の調査で10代後半から20代前半の遺骨の歯を分析した結果、10人がスカンジナビア半島の各地からやってきたことがわかり、さらに北極圏の出身者も1体含まれていたという。

  分析を行ったのは、イギリス自然環境研究会議(NERC)同位体地学研究所(Isotope Geosciences Laboratory)のジェーン・エバンズ氏を中心とする研究チーム。エバンズ氏らは、遺骨に含まれる特定元素の同位体比に注目した。元素中には質量数の異なる同位体が存在し、その含有比(同位体比)を調べれば出身地を特定する有力な化学指標となる。

 たとえば、飲み水の酸素原子は体内に取り込まれると歯に蓄積するが、酸素原子の同位体比は地域によって異なる。エバンズ氏らは、発見された人骨がすべてイギリスよりはるかに寒冷な土地で生育したと断定した。 「同位体比の結果は彼らの故郷がイギリスではないと示している」とエバンズ氏は話す。「現在のノルウェーやスウェーデン、つまりスカンジナビア半島出身と考えていいだろう」。  研究チームは、窒素の同位体比についても分析を行い、彼らの食習慣は肉などの動物性タンパク質が中心だったと突き止めた。これは、スウェーデンで発見された同時期の人骨とほぼ同じ分析結果だという。

 バイキング処刑の跡
 エバンズ氏はこう話す。「バイキングといえば、略奪と暴虐の限りを尽くす存在として悪名高いが、今回の調査によって彼らがアングロサクソン人の手で一斉に捕縛され処刑されたことがわかった。傍若無人な彼らの振る舞いも野放しにされていたわけではないようだ」。

 発見された人骨の多くは頭部や顎、首に深くえぐられた傷跡が見られる。建設工事の事前調査を行った際にこのバイキングの処刑跡を発見したオックスフォード・アーキオロジーのデビッド・スコア氏は、彼らが戦いの末に捕えられ、かなり乱暴な方法で斬首されたと考えている。「彼らの多くは、首が飛ぶまで何度も斬りつけられたようだ。一撃では済まなかったに違いない」とスコア氏は指摘する。

 切断箇所以外にも骨には深い傷跡が残っており、首に振り下ろされる斧や刀をかわそうとした事実を物語っている。切断された頭部は戦勝の証として、胴体を埋めた穴の傍らに整然と積み上げられた。  衣類の名残は見つかっておらず、彼らは裸で埋められたと見られる。スコア氏によると、武器や貴重品が奪われたとしても、身につけていた獣骨のボタンなどは残っているのが普通だが、今のところ一切見つかっていないという。 「船を降りて内陸へ侵入したバイキングは、驚くほど組織化されたサクソン軍に行く手を阻まれ、降伏を余儀なくされたのだろう」。そう話すのは、『Viking Weapons and Warfare』の著者キム・シドーン(Kim Siddorn)氏。

 シドーン氏によれば、バイキングの野蛮さは広く知れ渡っているが、戦場では彼らとサクソン軍との間に違いはほとんどなかったはずだという。「武器を持ったバイキングとサクソン人を見分けることは難しかったのではないか」。シドーン氏はそう話している。 (National Geographic News March 17, 2010)


参考HP ナショナルジオグラフィック「
51体の首なし人骨はバイキングと判明」 

骨から見た日本人―古病理学が語る歴史 (講談社選書メチエ (142))
鈴木 隆雄
講談社
ビジュアルブック骨―骨格から探る生き物のふしぎ (NEWTONムック)
クリエーター情報なし
ニュートンプレス

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