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 石油はどうやってできるのか?
 石油はどうやってできるのだろう?

 正解は生物の遺骸が長い年月をかけ、高温や高圧、微生物などのはたらきで分解してできたという「生物由来説(有機成因論)」が現在の主流である。100万年以上の長期間にわたって厚い土砂の堆積層に埋没した生物遺骸は、高温と高圧によって油母 (kerogen) という物質に変わり、次いで液体やガスの炭化水素へと変化する。これらは岩盤内の隙間を移動し、貯留層と呼ばれる多孔質岩石に捕捉されて、油田を形成する。このため、石炭とともに化石燃料とも呼ばれる。

Aurantiochytrium

 これら石油の大部分は微生物よりも、油母(kerogen)の熱分解によって生成していると考えられている。 生物由来説の根拠としては、石油中に含まれるバイオマーカーの存在がある。これは、石油中の炭化水素の光学活性が、地球型生物のものであるL型が多いということが根拠になっている。私たち生物の体はL型の有機物でつくられており、分解してもL型は変わらないからだ。

 石油のできかたには、これ以外にも、「無機由来説(無機成因論)」や「石油生成菌説」などがある。

 無機由来説では、「惑星が誕生する際には必ず大量の炭化水素が含まれる」「炭化水素は地球の内核で放射線の作用により発生する」「この炭化水素が惑星内部の高圧・高熱を受けて変質することで石油が生まれる」「炭化水素は岩石よりも軽いので地上を目指して浮上してくる」というものである。

 石油生成菌説では、1993年、京都大学大学院の今中忠行(現在:立命館大学生命科学部)は、研究室内の「無酸素実験装置」において、 相良油田から採取した石油分解菌「Oleomonas sagaranensis HD-1株」が通常状態では石油を分解する能力を持ちながら、 石油も酸素もない環境におかれると、逆に二酸化炭素などから原油を作り出すことを発見している。

 石油の生成には、別の方法も考えられる。筑波大学の研究チームが調べているのは、石油をつくる「細菌」ではなく「藻」であった。

 生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見
 筑波大学の研究チームでは、効率よく石油をつくる微生物を探している。これまでに「ボトリオコッカス」という藻が、炭化水素を生成することを発表していたが、今回、その10倍も効率よく炭化水素をつくる「オーランチオキトリウム」という藻を、沖縄の海底から発見した。研究チームは工業利用に向けて特許を申請している。

 将来は燃料油としての利用が期待され、資源小国の日本にとって朗報となりそうだ。茨城県で開かれた国際会議で12月14日に発表した。

 発見したのは、筑波大の渡邉信教授、彼谷邦光特任教授らの研究チーム。海水や泥の中などにすむ「オーランチオキトリウム」という単細胞の藻類に注目し、東京湾やベトナムの海などで計150株を採った。これらの性質を調べたところ、沖縄の海で採れた株が極めて高い油の生産能力を持つことが分かった。

 球形で直径は 5~15マイクロメートル(マイクロは 100万分の1)。水中の有機物をもとに、化石燃料の重油に相当する炭化水素を作り、細胞内にため込む性質がある。同じ温度条件で培養すると、これまで有望だとされていた藻類のボトリオコッカスに比べて、10~12倍の量の炭化水素を作ることが分かった。

 研究チームの試算では、深さ 1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約 1万トン作り出せる。「国内の耕作放棄地などを利用して生産施設を約 2万ヘクタールにすれば、日本の石油輸入量に匹敵する生産量になる」としている。

 炭化水素をつくる藻類は複数の種類が知られているが生産効率の低さが課題だった。渡邉教授は「大規模なプラントで大量培養すれば、自動車の燃料用に 1リットル50円以下で供給できるようになるだろう」と話している。

 また、この藻類は水中の有機物を吸収して増殖するため、生活排水などを浄化しながら油を生産するプラントをつくる一石二鳥の構想もある。(asahi.com 2010年12月15日)

 オーランチオキトリウムとは?
 オーランチオキトリウム(英語: Aurantiochytrium)は、重油に似た炭化水素を精製することで注目される藻の1種。

 ラビリンチュラ類に属し、光合成はしない。そのため光当てなくても石油を生産することを筑波大学の渡邉信教授らのグループが発見した。海などにすみ、他の有機物から石油と似た成分を作り出す。石油をつくる藻類はこれまでも知られていたが、油の回収や処理を含む生産コストは1リットルあたり800円程度かかるのが難点だった。

 オーランチオキトリウムはその10分の1以下のコストで生産できるとされる。また、これまで有望だとされていた藻類のボツリオコッカス・ブラウニーと比べて同じ温度条件で培養すると、10~12倍の量の炭化水素を精製する。

  「アオコ」からバイオ燃料
 バイオ燃料をつくる微生物は、これまでにもさまざまな微生物の利用が考えられている。

 2010年、電力中央研究所エネルギー技術研究所(神奈川県横須賀市)では、湖や池の水面を埋めるをアオコから、簡単に安くバイオ燃料を生み出す新技術の開発に成功した。従来の方法より約70倍も生産性が高く、製造時の環境影響も少ないという。東大阪市で開かれた日本化学会で3月29日発表し、水の浄化と地球温暖化対策の一石二鳥になる「緑の原油」として数年後の実用化を目指している。

  同研究所の神田英輝主任研究員は、スプレーの噴射ガスに使われる無害な溶剤ジメチルエーテル(DME)を20度で5気圧に加圧して液化し、アオコと混ぜ合わせる方法を考案。溶剤の性質からアオコに自然に染み込み、乾燥・粉砕して細胞組織を壊さなくても、油分を溶かし出せることを確認した。溶剤は減圧すれば蒸発するため分離・回収も簡単で、製造過程のエネルギー使用も激減するという。

 京都市内の池のアオコを使った実験では、従来の方法ではアオコの乾燥重量の0.6%相当しか油分を抽出できなかったのに対し、新技術では約70倍の40%相当が抽出できた。

  これまで発見された「藻」
 筑波大や国立環境研究所などの共同研究チームは藻類の中でも飛び抜けて油分を豊富に持つ「ボトリオコッカス」に注目してきた。「ボトリオコッカス」は、光合成でCO2を取り込んで炭化水素を生成、細胞外に分泌する。生産する炭化水素は重油に似た成分の油で、そのまま船の燃料に使えるほど質が高いという。 (参考HP 国立環境研究所

 アリゾナ州のエネルギー企業米PetroSun社は、テキサス州の風光明媚な行楽地「ハーリンジェン」に近いテキサス湾沿岸に、藻類からバイオ燃料を製造する「農場」を開設した。この農場には、あわせて約4.5平方キロメートルにおよぶ海水の池があり、そのうち約0.08平方キロメートル分は、環境志向的なジェット燃料の研究開発用として使われる予定だ。(参考HP PetroSun社)

 このように、海岸や湖を使った農場ならば、余計な土地を必要としない。熱帯雨林を伐採したり、環境破壊する恐れはない。藻だから酸素を作ってくれるし、生活排水に含まれる窒素、リンを養分とし水質浄化にもつながる。

 トウモロコシなどのバイオ燃料に比べて、藻類は1エーカーあたり30倍以上のエネルギーを生み出すという。2008年のオイルショックのように石油の値段に振り回されることもない。食糧不足とも無縁である。筑波大や環境研の「ボトリオコッカス」以外には、慶大先端研とデンソーなどで「シュードコリシスチス」という藻が研究されている。ぜひ実用化につなげたいものだ。(参考HP 慶應大学先端生命科学研究所) 


参考HP アイラブサイエンス「
アオコから緑の原油抽出」・「藻からバイオ燃料」・
Wikipedia「石油」・筑波大学「
藻類バイオマスエネルギーの展望

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化・地球・環境
井上 勲
東海大学出版会
図解入門 よくわかる最新バイオ燃料の基本と仕組み―次世代エネルギーの動向がわかる バイオマス燃料の現在・未来・課題 (How‐nual Visual Guide Book)
井熊 均,バイオエネルギーチーム
秀和システム

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