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 すべての動物は発電する
 発電する動物にはどんな動物がいるだろう?そう、デンキウナギ、デンキナマズ、シビレエイなどがよく知られている。生物は細胞膜の性質として膜電位を持つから、すべての生物はわずかながら電気を作っている。デンキウナギなどは、方向をそろえて作り出すことで、より高い電圧を生み出すしくみになっている。

 ところで太陽光で発電する動物はいるのだろうか?最新の研究によると、スズメバチの一種オリエントスズメバチ(学名:Vespa orientalis)には、太陽光から電気を生成する“ソーラーセル”が組み込まれているという。初めて動物界で“太陽光発電”が確認された。研究チームのリーダーでイスラエルにあるテルアビブ大学のマリアン・プロトキン氏は、「オリエントスズメバチは外骨格の内部で電気を生成する。しかしその仕組みは謎だった」と話す。

Vespa orientalis

 オリエントスズメバチの発電現象を発見したのはプロトキン氏の師に当たる故ヤコブ・イシャイ氏。太陽が最も強く照らす時間帯に活発に行動する生態から、この事実にたどり着いていた。ほかのスズメバチにはこのような習性はないという。プロトキン氏の研究チームはこの発見からさらに一歩進み、ハチの外骨格の構造を解析し、電気がどのように生成されるのかを解明した。

 まず表面の茶色の組織が光を捕獲し、黄色の組織が光から電気を生成する。「ただし、この電気を何に利用しているのかよくわからない」とプロトキン氏は述べる。「それでも、研究を始める際に周りから“うまくいくはずない”といわれていたので、まずは十分な成果だと思っている」。

 世界初!太陽光発電する動物
 人間が作る太陽電池の発電効率は通常10~11%程度だが、オリエントスズメバチはわずか0.335%しかないという。したがって、エネルギーの大部分は依然としてエサから得ていることになる。

 「しかし、この点はそれほど重要ではない」とプロトキン氏は話す。「なぜなら、植物や微生物の間で太陽の光を捕獲する集光性がみられることは珍しくないが、動物界ではいままで確認されたことはなかったのだ」。

 研究チームはオリエントスズメバチの茶色の組織の多くにメラニンを発見した。人間の肌では有害な紫外線を吸収して熱に変換し、肌の細胞を保護している色素だ。光を捕獲する溝も組織にある。太陽の光線を組織内に導きつつ、小さな光線に分割していた。プロトキン氏は、「茶色の組織は太陽光を閉じ込める“光トラップ”として機能し、受けた光のわずか1%しか反射していなかった」と話す。

 一方、黄色の組織には、キサントプテリンという色素が含まれていた。チョウの羽や哺乳類の尿を黄色にしている色素である。研究チームは、キサントプテリンを単離して液体溶液を作り、一種の導体である固体太陽電池の電極内にその溶液を配置した。そして、電極に光を放つと、溶液中のキサントプテリンが電気を生成した。

 イギリスにあるロンドン自然史博物館の昆虫学者クリス・ライアル氏は、今回の研究を受けて次のように話す。「素晴らしい研究だ。発電しないスズメバチとの外骨格構造の比較研究が望まれる。今回の研究が正しければ互いに全然違うはずだ」。

 また、ライアル氏によると、“発電能力”を持つ昆虫はほかにもいる可能性があるという。「例えば、フランスとスペインの国境にあるピレネー山脈で出会ったアポロウスバ(学名:Parnassius apollo)は、羽ばたく前に太陽の光を十分に浴びる習性を持っていた。おそらく、太陽放射を吸収していたのだろう。両者を比べてみるとおもしろいだろうね」。(2010年12月24日 ナショナルジオグラフィック)

 光合成は植物の太陽光発電
  では植物は太陽光発電をするのだろうか? 光合成は、小学校の理科で習う。小学校では光合成は「水と二酸化炭素を材料とし、葉緑体が光を受けてデンプンと酸素をつくりだす働き」と学ぶ。では葉緑体が光を受けると、どうして光合成が起きるのだろう?

 葉緑体の中には葉緑素と呼ばれる緑色の物質がある(葉が緑色なのは、この物質の色)。光が葉緑素に当たると、そこから自由電子が飛び出す。つまり、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。

 さて、葉緑素(この葉緑素は波長680ナノメートルの可視光に反応します)から飛び出したエネルギーの高い電子はさまざまな物質の間を動き回り、水を分解し酸素を生じさせる。その後、高エネルギーの電子はさまざまな物質の橋渡しにより別の場所に移動していく。そして目的地に着いたときには電子のエネルギーは低くなっているのだが、ここで再び葉緑素(この葉緑素は波長700ナノメートルの可視光に反応します)が光のエネルギーを受け、電子が飛び出す。このとき、移動してきた電子のエネルギーによってパワーが増幅される。つまり、太陽光のエネルギーを2段階に分けて受け取ることにより、エネルギーを増幅させる。

 この増幅されたエネルギーによってNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)と呼ばれる物質が合成される。ここまでが光合成の明反応と呼ばれる。この後、暗くなるとNADPHが大気中から吸収した二酸化炭素を、炭水化物(糖分)として閉じこめる。これが植物が自分のために作り出す養分である。これが、光合成のうち暗反応と呼ばれる部分だ。

 生物発電は効率が課題
 
産業技術総合研究所(産総研)の研究者が、このうち明反応に着目し、効率よく夢の次世代エネルギー水素を作りだすことに成功した。産総研では2段階の水分解のみならず、1段階の水分解システムの研究も同時に進めてきた。その結果、2段階の人工光合成システムの成功と同時に、可視光による1段階の水の分解にも成功した。この成果は2001年12月6日イギリスの科学論文雑誌「ネイチャー」に掲載され、人工光合成システム同様、世界から注目された。

 しかし、どちらの方法もまだ効率が低く、実用化には至っていない。たとえば稲は、受け取った太陽エネルギーの1~2%、藍藻類は4%程度を利用できると言われている。それに対し人工光合成システムは、まだ0.03%にとどまっている。この数字を上げていくにはより性能の高い触媒の開発と、利用できる太陽光の範囲の拡大が必要である。

 さらには光合成の暗反応、つまり二酸化炭素の固定も人工的にできるようになれば、植物が養分を作り出すように、燃料や材料、衣料などを作り出すことも可能になる。すっかり悪者になってしまった二酸化炭素をこのように資源として循環させることができれば、環境に負荷をかけない“夢の生産システム”が完成することになる。

 民間では、2003年3月31日、松下電器産業はがアリゾナ州立大学と共同で、光合成の仕組みを利用し人工の葉緑素を使った発電技術を開発したことを明らかにしている。将来的には食物などから電気を取り出すことも可能になるという。 (2003/03/31 共同通信) 
 また、 2004年06月25日、マサチューセッツ工科大学のMarc・Baldoらによって、ほうれん草の葉の葉緑体から取り出された様々な光合成蛋白質から、太陽電池が創る研究が発表された。(Nature news 25 June 2004


 参考HP ナショナルジオグラフィックニュース「
“太陽光発電”するスズメバチ」・産業総合研究所_地球環境を守るために「地球を救う光合成

知っておきたい太陽電池の基礎知識 シリコンの次にくるのは化合物太陽電池?有機太陽電池でみんなが買える価格に? (サイエンス・アイ新書)
齋藤 勝裕
ソフトバンククリエイティブ
人工光合成と有機系太陽電池 (CSJ Current Review)
日本化学会
化学同人

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