アドルフ・ヴィンダウス

 アドルフ・オットー・ラインホルト・ヴィンダウス(Adolf Otto Reinhold Windaus, 1876年~1959年)はドイツ帝国・ベルリン出身の化学者。

 ベルリンで学生のときに薬学について学んだ。卒業後、1913年にフライブルク大学の助手となり、コレステロールの研究を開始する。その後、研究対象はステロイド全般に渡った。1915年からはインスブルック大学の教授となった。その後、ゲッティンゲン大学でオットー・ヴァラッハの後任として化学科の学科長となった。

 1928年にステロイドとビタミンの研究の業績に対し、ノーベル化学賞を受賞した。受賞理由は「ステリン類(ステロール類)の構造およびそのビタミン類との関連性についての研究」である。

Adolf Otto Reinhold Windaus

 胆汁酸とステロイドの研究に加えて、ビタミンB群とビタミンDの構造を解明してその化学合成を可能にしたという業績がある。この成果は製薬会社(バイエルとメルク)によって製品化されることで結実した。また、彼のコレステロールの構造についての研究は性ホルモンの研究の基礎となる結果を導き、また彼のジギタリス研究は心臓疾患の治療のへ向けたさまざまな薬剤の開発を導いた。

 彼の研究したステロイド、ステロール、胆汁酸、ビタミンB群、ビタミンDとは何だろう?調べてみるとビタミンB群以外はみなステロイドに分類される構造を持つことがわかった。

 ステロイドとは何か? 
 ステロイド (steroid) は、シクロペンタヒドロフェナントレンを基本骨格とし、その一部あるいはすべての炭素が水素化されている。通常はC-10とC-13にメチル基を、また多くの場合C-17にアルキル基を有する。天然のステロイドはトリテルペノイド類から生合成される。共通して、ステロイド核(シクロペンタノ-ペルヒドロフェナントレン核)と呼ばれる、3つのイス型六員環と1つの五員環がつながった構造を持っている。ステロイド骨格そのものは脂溶性で水に不溶であるが、生体物質としてのステロイドはC-3位がヒドロキシル化されあるいはカルボニル基となったステロール類であり、ステロイドホルモンをはじめ、水溶性の性質も有する。

 何百もの異なるステロイドが植物、動物、菌類で見つかっており、それらすべてのステロイドがそれぞれの細胞においてラノステロール(動物および菌類)またはシクロアルテノール(植物)といったステロールから生成され、これらステロール(ラノステロールとシクロアルテノール)は何れもトリテルペンスクアレンの環状化により誘導される。

 ステロイドは、ほとんどの生物の生体内にて生合成され、中性脂質やタンパク質、糖類とともに細胞膜の重要な構成成分となっているほか、胆汁に含まれる胆汁酸や生体維持に重要なホルモン類(副腎皮質ホルモンや昆虫の変態ホルモンなど)として、幅広く利用されている。

 ステロールとは何か?
 ステロール (sterol)はステロイドの特殊型であり、C-3にヒドロキシ基を有しコレスタンから生成される骨格である。コレステロールは最もよく知られるステロールのひとつである。

 植物由来のステロールはフィトステロール、動物由来のものはコレステロールあるいはズーステロール (zoosterol) と呼ばれる。重要なステロール類として動物のステロイドホルモン、植物のカンプエステロール、β-シトステロール、スチグマステロールが挙げられる。

 ステロールは真核生物の生理機能において重要な役割を果たす。例えばコレステロールは細胞膜の一部を形成し、その流動性や機能を調節したり、発生シグナル伝達において二次情報伝達物質としてはたらく。

 植物ステロールはヒトの内臓のコレステロール吸収サイトを塞ぎ、コレステロール量の減少を助けることが知られている。

 胆汁酸とは何か? 
 胆汁酸(bile acid)は、哺乳類の胆汁に広範に認められるステロイド誘導体で、コラン酸骨格を持つ化合物の総称である。胆汁酸の主な役割は、消化管内でミセルの形成を促進し、食物脂肪をより吸収しやすくするものである。

 肝臓で生合成されたものを一次胆汁酸という。また一部は腸管で微生物による変換を受け、その代謝物は二次胆汁酸と呼ばれる。胆汁酸は、通常グリシンやタウリンと結び付いており、これらは抱合胆汁酸(胆汁酸塩)と呼ばれる。

 ヒトでの代表的な2つの胆汁酸は、コール酸とケノデオキシコール酸である。胆汁酸、グリシン又はタウリンとの抱合胆汁酸、7-α-デヒドロオキシ(脱水酸)誘導体(デオキシコール酸及びリトコール酸)は、人の腸内での胆汁から発見されたものである。

 肝臓の疾病によって血液中に放出されるので、肝臓病の検査に用いられることがある。 検出法として、マックス・フォン・ペッテンコーファーが発見したペッテンコーファー反応が知られる。これは試料にグルコース加えて、硫酸を添加すると、試料が赤色になるという反応である。

 ビタミンB群とは何か?
 ビタミンB群とは、水溶性ビタミンのうち、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチンの8種の総称で、ビタミンB複合体とも呼ばれる。発見当初ラットの発育に必須の単一の水溶性因子として知られていたが、後の研究で複数種の物質からなる混合物であることが突き止められた。ビタミンB群に含まれている8種の物質は、いずれも生体内において、補酵素として機能することが知られている。

 ビタミンB群の物質はどれも構造が違う。これはなぜだろうか?これは、ビタミンBの定義によるもの。ビタミンB群の性質は、平たく言えば水に溶けること(水溶性)と、炭水化物をエネルギーに変える手助けをするという2つの共通した働きを持つ。

 ビタミンDとは何か? 
 ビタミンD (vitamin D) は、ビタミンの一種であり、脂溶性ビタミンに分類される。ビタミンDはさらにビタミンD2(エルゴカルシフェロール、Ergocalciferol)とビタミンD3(コレカルシフェロール、Cholecalciferol)に分けられる。ビタミンD2は植物に、ビタミンD3は動物に多く含まれ、ヒトではビタミンD3が重要な働きを果たしている。ちなみにビタミンD1はビタミンD2を主成分とする混合物に対して誤って与えられた名称であるため、現在は用いられない。

 ヒトにおいては、週に2回、5分程度、日光の紫外線を皮膚に浴びることで、十分な量のビタミンDが体内で生合成される。1923年にアルフレッド・ファビアン・ヘスは、コレステロールの誘導体、7-デヒドロコレステロールに紫外線を照射することによって脂溶性ビタミンDを生成できることを発見した。

 ビタミンDには、骨や歯の発育に欠かせないカルシウムやリンの働きを調整するという役目がある。食物から摂取されたり、体内で合成されたビタミンDは小腸から吸収され、一旦肝臓に集められる。その次に腎臓へと送られ、この段階で「活性型のビタミンD」へと変化する。この活性型ビタミンDの形になって初めて、腸管からのカルシウムやリンの吸収を助けるようになり、骨にカルシウムが沈着するようになる。ビタミンDが不足していると、カルシウムやリンが十分に足りていても丈夫な骨や歯をつくることができない。

  またビタミンDは血中のカルシウム濃度が低いときには、骨からカルシウムを溶出させ血液中のカルシウム濃度を調節したり、尿として排出されないよう腎臓で再吸収させる働きもしています。また、逆にカルシウム濃度が高いときには骨や歯に沈着させるなど、血液中のカルシウム濃度を調節する重要な役割を担っている。

 

参考HP Wikiopedia「アドルフ・ヴィンダウス」「ステロイド」「ステロール」「胆汁酸」「ビタミンB群」「ビタミンD」

がん予防に実は「日光浴」が有効なわけ――ビタミンDの驚きの効力 (講談社プラスアルファ新書)
平柳 要
講談社
胆汁酸と胆汁
内田 清久
創英社/三省堂書店

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