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 胃がん増殖助長する遺伝子発見!
 現代医学の進歩は素晴らしい。不治の病といわれた、がんにさまざまな治療方法が発表され、その有効性が報告されている。外科療法、化学療法に加えて、陽子線治療や、免疫療法、がんワクチンといった治療法である。

 最近は遺伝子面でも、研究が進み、がんを発生させやすくする、特定の遺伝子がわかってきた。先日、東京大や横浜市立大などのグループは、胃がんの増殖を助ける遺伝子を見つけた。この遺伝子を働かなくしたマウスは胃がんができにくくなった。胃がんの新しい治療薬の開発に役立つと期待される。

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 横浜市立大の前田愼教授らが66人の胃がん患者のがん組織を調べたところ、ASK1という遺伝子が活発に働いていた。この遺伝子はもともと、侵入してきた細菌やウイルスに対抗するために炎症を起こしたり、傷ついた細胞をがん化する前に殺したりする働きがある。しかし、胃がんでは細胞分裂を促して増殖を助けていることがわかった。

 ASK1を働かなくしたマウスに胃がんになる薬を飲ませたところ、正常なマウスに比べて、できた胃がんの数が3分の1ほどに減り、胃がんの大きさも半分以下に抑えられたという。前田教授は「ASK1の働きを抑える薬ができれば、胃がんの新しい治療薬になりそうだ」と話す。成果は米科学アカデミー紀要に掲載された。(asahi.com 2011年1月6日)「ASK1」はがん遺伝子である。

 大腸がん転移抑える遺伝子
 一方、京都大と東北大、金沢大のチームが、大腸がんが肝臓や肺へ転移するのを抑える遺伝子を突き止め、1月19日付の米科学誌キャンサーセル電子版に発表した。

 京都大の武藤誠教授(遺伝薬理学)は「大腸がんの悪性化や転移を抑制する薬の開発につながる可能性がある」と話している。

 チームによると、大腸がんが転移してできたヒトの肝臓がんでは、「Aes」という遺伝子の働きが低下。大腸がんのマウスでAesを強制的に働かせると、がんが血管を経由して肝臓、肺に転移した割合が、Aesを働かせない場合と比べ20~30%に低下し、Aesが転移を抑えていることが分かった。(2011/01/19 共同通信)「Aes」はがん抑制遺伝子である。

 消化器がんは、がんの中でも最も死亡率が高い。特に遠隔転移が死因となっているため、そのメカニズムの解明および予防・治療法の確立が急務となっている分野だ。このような遺伝子の研究により将来、がんの発生、転移、消滅のメカニズムが解明されるかもしれない。

 がん遺伝子とがん抑制遺伝子
 ところで、遺伝子がこわれ、細胞が無限に増えるシステムはどうなっているのだろう?

 壊れるとがん化を起こす遺伝子は、がん遺伝子とがん抑制遺伝子の2種類に分けられる。がん遺伝子(Oncogene)とは、その分子がたくさんつくられたり、機能の調節がうまくいかなくなるような壊れ方をして常にスイッチがonになった状態の時にがん化を誘導する遺伝子で、多くの場合、細胞の増殖を促進したり、細胞死を抑制したりする働きをもっている。このような遺伝子として、rasとか、fos、myc、cyclin D、Bcl-2などがある。

 一方、がん抑制遺伝子(tumor suppressor gene)とは、遺伝子が壊れてその分子の機能が失われることによって、がん化に関与するもので、がん遺伝子が車のアクセルとすると、そのブレーキにあたる遺伝子が、がん抑制遺伝子だ。

 がん抑制遺伝子は細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをする。DNAの傷が蓄積するとがん化に結びつくので、修復が必要だが、異常細胞が無限に増殖すると大変ですので、異常を感知して、その細胞に細胞死を誘導するはたらきを、がん抑制遺伝子はしていると考えられる。この遺伝子には、p53、Rb、APC、Smad4などの遺伝子がある。

 多段階発癌説-がんは多様な個性を持つ
 がん遺伝子とかがん抑制遺伝子と言っても、ひとつの遺伝子が壊れただけで、すぐに転移をするような悪性のがんができるわけではない。いくつかの遺伝子が壊れるにしたがってだんだんと悪性度の強いがんになっていくことが知られている。

 これを多段階発癌説と言う。多段階発癌の機構が最も調べられているのが大腸癌である。大腸癌の場合、APCとかCOX-2という遺伝子が壊れると小さな大腸ポリープ(良性腺腫)ができ、これにp53やrasの遺伝子異常が加わるとポリープはがん化し、さらに未だ不明の何らかの遺伝子の異常がさらに加わって浸潤したり転移したりするようになると考えられている。

 壊れる遺伝子の組み合わせは沢山あり、それによってがんの性質も色々違ってくる。従って、同じ大腸癌という診断がついたとしても、そこだけ取ってしまえば全く問題のないものから、小さくても転移しやすい悪性度の高いものまで色々ある。がんとは多様なものであり、同じ大腸癌とか乳癌、肺癌などという診断がついても、隣のベッドの人と治療法が違う場合があるのは当然のことである。

 がんは発生の母体となった細胞の種類、遺伝子の壊れ方、発見までの進行の程度などによって多様な性質を持ち、また、そのがんの宿主となる個体の年齢や栄養状態、免疫能、薬による副作用の強弱など、私達の体の方の多様性もあって決してみんな同じではない。


参考HP 国立がん研究センター「
細胞ががん化するしくみ」・筑波大学「がん細胞ではどのような遺伝子が壊れているか」 ・
京都大学「
AesはNotchシグナルを阻害して大腸がん転移を抑制する

がん遺伝子の発見―がん解明の同時代史 (中公新書)
黒木 登志夫
中央公論社
がん遺伝子に挑む〈上〉
野田 洋子,野田 亮,ナタリー・エインジャー
東京化学同人

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