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 日本はワクチン後進国
 世界では無料のワクチン接種が、日本では有料になっていることがある。例えば、小児用肺炎球菌やヒブワクチンは米国、英国、ドイツ、フランスなどでは無料だが、日本では有料だ。最近は、自治体などが予算を組んで、少しずつ無料化しようとしていた矢先に、この2種のワクチンを接種した乳幼児が、数日後に死亡する事例が4件起きた。

 厚生労働省は両ワクチンの接種を一時見合わせることを決め、全国の自治体などに連絡、近く専門家の検討会を開き、因果関係を評価し、問題があれば接種を再開しないことになった。

 人命は尊重せねばならないから、当然のことだとは思うが、接種できない人たちの多くが、感染症で、生命の危険にさらされることが心配だ。今回の小児用肺炎球菌やヒブワクチン以外で、日本で有料になっている任意接種ワクチンに、B型肝炎、おたふくかぜ、みずぼうそう、子宮頸がんのワクチンなどがある。これらは先進国では、どれも無料だ。何で日本はワクチンの後進国になってしまったのだろうか?

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 麻疹(はしか)については、最近ようやく日本でも2回打つようになった。現在、1歳代と小学校入学前年度に計2回打つ。2012年度までは中1と高3も接種することになっている。これらの年代は1度しか接種していない人が多いからだ。打つ打たないの判断は最終的に親がするとしても、これらの感染症のワクチン接種を無料で提供するしくみは、国が全力で確保するべきだと思う。

繰り返す麻疹の流行
 2007年、2008年と流行した麻疹(はしか)。2007年のゴールデンウィーク明け、10~20代の若者に広まり、上智、早稲田、慶応など首都圏の大学が次々と休講した。空気感染(飛沫・接触も)する麻疹ウイルスは強い伝染力をもち、免疫のない人が感染するとほぼ100%が発病する。

 麻疹は予防接種が唯一の予防策とされているが、日本の10~20代の若者は1回しか予防接種を受けておらず、こうした流行が日本ではたびたび起きる。国立感染症研究所によると、毎年、乳幼児も含む全体で推定10~20万人規模で患者が発生している。グローバル的には、日本は、麻疹根絶に成功した米国などから「麻疹輸出国」として警戒されている。

 WHO(世界保健機関)では日本を最も対策の遅れた「制圧期」(恒常的に発生し時に流行が起こる)に位置づけし、2012(平成24)年までに麻疹排除を目標に掲げている。なぜ日本では、麻疹の予防接種を1回しかしなくなったのだろう?

任意接種になったわけ
 私が子供のころは、有無を言わさず注射されてた...って思う方もいらっしゃるのではないだろうか?これには理由がある。昔は、予防接種は「義務接種」だったのだが、1995年に法律がかわり、「任意接種」となったのである。任意接種とは、「義務じゃないけど、でも出来る限り予防接種受けてね」ということ。つまり、選べるようになった。 

 予防接種をすることによって、かわいい子供が重い病気にかからない、免疫をつけることができる。でも、もしかしたら、副反応によって死んだり、重い障害を背負うことになってしまうかもしれない。痛い思いをして予防接種を受けても、結局病気にかかってしまうことだってある・・・それらすべてを知った上で、かわいいこどもに予防接種を受けさせるか、それとも受けないか、こどもを守る親として、判断しなくてはいけなくなった。

 しかも、任意接種では有料である。任意は選択の自由があってよいようだが、なぜ無料にしないのだろう?これでは、予算がもったいないから、任意接種にしたとも見て取れる。また、任意では誰もが受けるわけではない。すると、受ける人は助かったけど、受けない人の間ではどんどん感染が広まって、死者が増えていく…、こんな状態ではWHOのいうように根絶は不可能だし、日本は後進国と言われてもしかたがないかもしれない。 

日本の常識は世界の非常識
 一般の方にはほとんど知られていないことだが、先進国である日本の予防接種制度は、いわゆる先進国、中進国のなかでは最低レベルである。専門家の間では、よく「日本の予防接種(種類、受け方など)の常識は世界の非常識で、間違っている」と言われることがある。日本と世界のギャップを具体的にみてみよう。

 他の国では接種できて、日本では無料で接種できないワクチンが多くある。とりわけヒブワクチン(アクトヒブ)や小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)という、子どもの極めて重い病気である細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)を予防するワクチンが誰でも使えないのは非常に問題である。

 いくらよいワクチンを作っても皆が受けてくれないことにはワクチンで防げる病気の被害が続く。子どもの健康と命を守るためにはワクチンの無料接種が大切だ。ヒブワクチンは2008年12月から、小児肺炎球菌ワクチンは2010年2月から使用できるようになったが、いずれも任意接種(費用は自己負担)。実はヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチン(このウイルスによる重い下痢症・脳炎を防ぐもので、日本では未発売)の4種類は、WHOがどんなに貧しい国でも国の定期接種に入れて、無料で接種して国民を守るように指示している。

 またWHOでは、おたふくかぜとみずぼうそうも先進国では無料化することが望ましいと勧告している。被害が多い子宮頸がん予防のHPVワクチンとインフルエンザワクチンは米国では定期接種である。これを見てわかるように、日本はとても「先進国」とはいえない状況だ。ワクチン先進国の米国では、きちんとワクチンを接種していないと入園・入学を拒否される場合もある。集団生活をしたいのであれば、ワクチンを受けておくことは最低限のルールであるということだ。このため、海外赴任や留学など、日本人が海外に渡航する時には、これらのワクチンを接種しなければならないことがある。多くの先進国では、国が無料で接種を勧奨するワクチン(定期接種)の数は、日本より多い。

日本の無料予防接種(定期接種)
 次のワクチンは対象期間中は無料で受けられる。居住地域内で受けることになるが、地域外の医療機関での接種も可能である。

1.三種混合(百日咳、ジフテリア、破傷風)
 百日咳はひどい咳が特徴。赤ちゃんでは重症化しやすく入院が必要となることがある上、ひどければ命に関わることがある。 ジフテリア、破傷風も感染すると命にかかわる症状がで出る。

2.BCG(結核ワクチン)
 現在も結核の患者は発生しつづけている。赤ちゃんがかかると粟粒結核や結核性髄膜炎といった重症結核を起こす可能性があるため、生後6か月までに打つことになっている。

3.ポリオ
 感染すると麻痺を残すことがある怖い病気。現在、日本国内の自然発生はないが、インドなどで流行が続いており、いつ持ち込まれてもおかしくない状況である。日本では飲むワクチンだが、他の先進国ではより安全な注射のワクチンに変わっている。

4.麻疹風疹混合ワクチン
 麻疹(はしか)は昔、「命定め」と呼ばれていたほど怖い病気で命に関わることがある。脳炎も比較的起こしやすく、インフルエンザよりもはるかに怖い病気。風疹は妊婦がかかると赤ちゃんに障害を起こすことがある。脳炎を起こすこともある。より効果を高めるため海外では早くから2回打っている国が多かったが、最近ようやく日本でも2回打つようになった。1歳代と小学校入学前年度に計2回打つ。2012年度までは中1と高3も接種することになっている。

5.日本脳炎ワクチン
 日本脳炎ウイルスを持った蚊が人間を刺すことで感染する。自然に感染した場合には1/100~1/1000の確率で発症。症状が出るものでは、6~16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に、光への過敏症、意識障害(意識がなくなること)、けいれん等の中枢神経系障害(脳の障害)を生じる。脳炎を発症した場合20~40%が死亡に至る病気といわれており、幼少児や高齢者では死亡の危険は大きくなっている。助かった方も多くが何らかの後遺症を残す。行政の不適切な判断のため5年もの長きにわたり予防接種が控えられてしまった不幸な出来事があったが、2009年6月より新しいワクチンの接種が始まり、2010年度より従来通りの形に戻った。ただし2010年2月の時点では接種期間を逃してしまわれた方にどのような救済処置が行われるかはまだ決定していない。

 日本の有料予防接種(任意接種)
 ここに紹介するワクチンは諸外国ではごく一般的なワクチンで多くの子供たちが接種している。しかし、日本では残念なことに行政からの補助がないため有料で、接種率も高くない。どれも受けてほしいワクチンばかりだが、子供手当てを充てるなどして子供の健康を守ろう。

1.おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン
 ほほの腫れと痛みが特徴です。発熱を伴うこともあります。200~3500人に1人くらいの割合で回復が難しい聴力低下や難聴を起こす。また髄膜炎、膵炎といった合併症も起こしやすく、入院が必要なこともある。またおたふくかぜと紛らわしい病気が多いため正確に診断できないことがある。そのため何度もおたふくかぜの疑いで園や学校を休む子供がいる。予防接種の副反応で非常にまれだが、髄膜炎を起こすことがある。しかし自然に感染するよりもはるかに確率は下がりますし、大半はワクチンと関係なく起こる。日本のおたふくかぜの流行状況を考えると非常にメリットが大きい予防接種のひとつである。WHO(世界保健機構)は予防接種体制のしっかりした国では積極的に行うべき予防接種と各国に通達しているが、残念ながら日本はそれに従っていない。

2.みずぼうそうワクチン
 体中に水疱ができる。症状を軽くする薬もあるが、みずぼうそうの後、数年から数十年して起こる可能性があるひどい痛みが特徴の帯状疱疹は薬では予防できない。免疫に問題のある方の場合は命に関わることがある。これらの点で予防接種にメリットがある。ときに予防接種をしてもみずぼうそうになることがあるが、軽くてすむことが多い。WHOは先進国ではみずぼうそうの予防接種のメリットが大きいとしており、予防接種を勧めているが、やはり日本では実現されていない。
      
3.子宮頚癌ワクチン
 現在、日本人では1年に2500人程がこの癌のために亡くなっている。発癌性ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で起るため、このウイルスの感染をワクチンで予防することで癌の発症を抑えることが可能だ。女性の8割がこのウイルスに一生のうちに1度は感染すると言われている。ヒトパピローマウイルスは感染しても多くの方は自然と治るのだが、十分な免疫がつかないため、繰り返し感染する可能性がある。そして感染された方の一部が癌化することがわかっている。20代、30代の女性の癌では一番多い癌でもあり、そのため子供のうちに予防することが効果的である。諸外国では小学校高学年もしくは中学生の女の子全てを対象にワクチン接種が行われている国が増えている。WHOは全ての女の子に接種することを勧めているが、やはり日本では実現されていない。50歳くらいまでの女性にも効果がある。ただしワクチンを受けても完全に予防はできないため、20歳以降は定期的に子宮頚癌検診を受けることは必要である(ワクチンと検診を合わせることが最も効果的とされている)。

4.ヒブ(Hib)ワクチン
 ヒブとはインフルエンザ桿菌b型のこと。インフルエンザウイルスと紛らわしいのですが、全く別の細菌でインフルエンザ自体とも特に関係はない。しかしこの菌は小児において細菌性髄膜炎を始めとした重症感染症の原因となることがある。小児の細菌性髄膜炎の原因菌の約60%を占めており、年間発症者数は600人と推計されている。ヒブ髄膜炎の予後は悪く、5%が死亡し、23%が難聴、硬膜下水腫、てんかんなどの後遺症を残す。

 治療薬は抗生剤で行いますが、最近は抗生剤の使いすぎの影響もあり、薬の効きが悪いヒブが増えてきています。感染しないことが重要となる。予防接種は大変有効であり、実際、多くの国ではこの予防接種をすべての子供に打つことでヒブ髄膜炎の発生を90~100%の高確率で抑え込んだ。日本は予防接種に関しては残念ながら後進国であり、WHOが全小児への接種を勧めているにも関わらず、2008年末までは接種できなかった。小さい子ほどかかりやすいのでできるだけ早く打つことが大事。

5.小児用肺炎球菌ワクチン
 肺炎球菌はヒブについで多い細菌性髄膜炎の原因菌で、死亡率や後遺症を残す確率はヒブよりも高くなっている(ヒブワクチンの項目の最初の図を参照)。この菌による髄膜炎は、年間200人くらい発生している。肺炎(12,000人)や、重い中耳炎、菌血症や敗血症も起こしている。ワクチンを打つことでこの菌が原因の感染症のリスクが7~8割減少しする。この菌も治療薬である抗生剤の効きが悪い耐性菌が多いので予防接種でかかりにくくしておくことが大切。WHOが全小児への接種を勧めているにも関わらず、最近まで接種もできなかった。

 海外ではこれらの予防接種は積極的に行われている。多くの国では無料のようだ。またここにあげた以外の予防接種(B型肝炎など)も行われている。日本ではいまだに打つことができないワクチンもある(ロタウイルスや副作用のより少ないポリオワクチンなど)。残念なことですが、日本は予防接種の後進国だ。ここに取り上げたような情報も行政からは提供されない。この現状を変えるためにはできるだけ多くの方に今の状況を認識していただくことが大事だと考える。

 何よりも、日本のすべての子供たちに世界標準レベルの予防接種を受けさせてあげたい。

 参考HP Wikipedia「予防接種」・Know VPD 日本vs世界のワクチン事情

ワクチンと予防接種の全て―見直されるその威力
大谷 明,三瀬 勝利
金原出版
Hib感染症とHibワクチン徹底解説ガイドブック
武内 一
文光堂

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