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 放射線は心配だが…
 福島第一原発事故の影響で各地で放射線の測定を行うようになった。神奈川県足柄市の農家のお茶から放射線が検出され、出荷自粛に追い込まれた事件では、まさか?こんなに離れているのに放射線物質が飛来するのか…と驚かされた。お茶農家では、東京電力に対し、1億4000万円余りの損害賠償を請求するという。

 公共機関では定期的に放射線を測定し、公表もしているようだが、小さいお子さんを持つ母親などは、それだけでは不安だと、個人で放射線測定装置(ガイガーカウンター)を購入する人もいる。しかし、ガイガーカウンターは外国に特許があり、値段は一台数万円と高額でなかなか一般の人には手が届かない。

 ところが、今回、京都大の中村秀仁助教らは、ペットボトルに使われる樹脂を改良して、安価な放射線測定用のセンサーにする方法を開発した。中村助教は昨年、ペットボトル用の樹脂が、センサーに使えることを発見したが、感度が低いのが欠点だった。今回、樹脂の酸素の含有量を高めたところ、放射線の感度が5倍になった。丈夫で簡単に加工できるためセンサーの大型化も容易にできる。欧州物理学会の速報誌に6月29日発表した。

Sintirex

 今後の開発により、空港、港湾設備、鉄道の駅などで違法な放射性物質を検査するための機器への使用や、放射線を視覚的に把握できる防護マスクなどへの応用、さらに、小中高等学校での放射線学習用の教材として幅広く普及できるという。

 6月29日付の毎日新聞では次のように述べている。

 放射線検知し、青く光るプラスチック
 放射線が当たると青く光るプラスチック製素材を、京都大と放射線医学総合研究所(千葉市)、帝人化成のチームが開発した。「シンチレックス」と命名した。安価で加工しやすい特長を生かし、持ち歩く線量計への応用が期待され、今秋の製品化を目指している。29日、欧州物理学会速報誌(電子版)に発表した。

 従来の放射線検出器は、放射線を当てると可視光を出す物質が利用されている。プラスチックを使った検出器もあるが、可視光を出すために特殊な加工がされ、製造コストは数万~数十万円かかるという。

 チームの京大原子炉実験所の中村秀仁助教(放射線物理学)は昨年、市販のペットボトルに放射線が当たると紫外線を検出できることを発見。プラスチックに含まれる酸素が放射線に対する感度にかかわっていることを突き止め、改良を重ねて作製した。

 性能は従来品と同程度かそれ以上で、アルファ線、ベータ線、ガンマ線に対応できる。加工しやすく大量生産が可能で、製造コストを10分の1以下に抑えられる。内部被ばくを測る「ホールボディーカウンター」のような大型装置にも応用できるという。

 中村助教は「福島第1原発事故の影響で、放射線検出が身近に必要になっている。携帯ストラップにぶら下げる放射線検出器などに応用したい」と話す。(毎日新聞 2011年6月29日)

 プラスチックシンチレータ
 放射線検出器は、放射線の管理に不可欠な機器で、世界の原子力発電所の放射線モニターとしても利用されている。放射線検出器には様々な検出素子が用いられているが、プラスチックシンチレータは非常に有用な検出素子であり、世界で年間数十億円規模で使用されている。しかしながら、高価であるとともに、その市場は外国企業に独占されており、昨今の需要増を背景に、プラスチックシンチレータの価格は高騰しつつある。また、プラスチックシンチレータでは、発生した光を効率よく検出するため表面に特殊な研磨を行う工程が必要であり、そのこともコスト高の要因になっている。

 中村助教らの研究グループは、こうした現行のプラスチックシンチレータの性能を超える素材の研究の探索を行い、世界的にも大量に使用され価格が非常に安いPET樹脂でも放射線が計測可能であることを示しました(平成22年5月19日報道発表)。しかしながら、通常のペットボトルPET樹脂の性能は、放射線が入射した際に発する蛍光量とその蛍光波長の二点で、プラスチックシンチレータに劣っていました。

 そこで、中村助教は、京都大学と放射線医学総合研究所を研究拠点とする研究グループと、高分子素材開発に世界トップクラスの技術力をもつ帝人化成株式会社と連携し、性能の向上と生産技術の開発に取り組み、今回の成果につながった。

 それにしても、どこにでもあるPETボトルに使われる、安価なPETを使い改良して、放射線測定センサーができたのは驚きだが、どうやって性能を高めたのだろうか?

 シンチレックスの開発
 この研究では、PET樹脂と類似の分子構造を持ちながらプラスチックシンチレータの性能を凌駕するため、放射線蛍光プラスチックの分子構造を決定するモノマーを選択し、重合触媒を種々変更することにより、多種類のプラスチックを合成した。これらのプラスチックについて、現在世界で最も使用されているSaint-Gobain社製のプラスチックシンチレータと性能を比較し、最終的に極めて高性能な放射線蛍光プラスチックの開発に成功した。このプラスチックは、商標名として「シンチレックス」と命名し申請した。   

 従来のプラスチックシンチレータは主に水素と炭素で構成されているが、シンチレックスは、水素と炭素に加え酸素を主要な構成要素としており、非常に強い強度を持つプラスチックで、密度が1.33g/cm3以上、屈折率は1.65以上、最大波長は可視光領域、蛍光量は1MeVあたり1万光子以上であるなど、プラスチックシンチレータと同等以上の性能があることが示された。

 シンチレックスのベース素材は、私達の生活に非常に身近なプラスチックの一つであるため、従来のプラスチックシンチレータと比較してコストを大幅に低減できる。また、加工が非常に容易であることから、様々な形状の放射線検出器の開発が可能だ。実に画期的な発明だ。今後は小学生でも購入できるほど使いやすいものができるかもしれない。

参考HP 京都大学news 革新的な放射線蛍光プラスチック「シンチレックス」の開発に成功  

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