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 リニアコライダーで震災復興
 与謝野馨経済財政相は7月7日、BS11の番組に出演し、岩手県が東日本大震災からの復興策に掲げる物理学研究施設の誘致を支援する考えを示した。岩手県は産業創出につながるとして期待している。

 県が目指すのは、全長30~50キロの地下トンネルにつくる直線型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」。宇宙誕生の「ビッグバン」直後の状態を再現できるという。

 達増拓也知事が政府の復興構想会議で頑丈な地盤にある北上山地への誘致を提案した。ただ、まだ研究者の調査段階で、政府内でも検討されていない。

ILC

 与謝野氏は「世界最先端の研究センターになり、派生的に雇用も産業も生まれる」と話した。「8千億円と言われる建設費も各国が少しずつ割り勘すれば、日本は半分程度だ」とも語り、各国と協力すれば、日本の建設費負担は4千億円程度との見方も示した。(asahi.com 2011年7月7日)

 リニアコライダーとは?
 リニアコライダー(Linear Collider)は、衝突型粒子加速器(Collider)の一種。加速器には直線のものと円形のものが存在し、リニアコライダーはその名のとおり直線(Linear)型に位置づけられる。超精密装置であるため地下の固い地盤の上にトンネルが掘られ、その中に構築される予定。トンネル内には全長約40kmにもおよぶ真空管が設置され、その両端から入射する電子と陽電子を光速まで加速し、正面衝突させることができます。こういった加速器という実験施設は世界中にも様々なところに存在しますが、現在世界で最大、最高性能の加速器はスイス、ジュネーブ郊外の地下に存在するLHC(Large Hadron Collider:大型ハドロン衝突型加速器)だ。形は円形でありその周長は約27km、ほぼ山手線と同じ大きさである。リニアコライダーはさらに高性能の加速器として、LHCの次の世代を担うことになっている。

 リニアコライダーにおいては、光速まで加速された電子と陽電子が正面衝突することによって消滅し、そこには宇宙の始まりの状態であるビッグバンと同様なエネルギーのかたまりが生み出される。この人工的ビッグバンからは宇宙の始まりと同様に様々な粒子が噴出する。これらの粒子を観測することにより、どのようにして、そしてなぜ、宇宙が生まれ、物質が生まれ、人が生まれたのか、という人類が長年抱いてきた謎の解明に挑むのがリニアコライダー計画である。

 リニアコライダーで加速する電子・陽電子のビームのサイズは従来の加速器と比べて圧倒的に小さい。衝突点付近でのビームのサイズは5ナノメートル(1ナノメートルは1メートルの10億分の1)で、これは水素原子たった数十個分でしかありません。 さらに、月まで行ってもなんと1メートルしか広がらない超平行ビームとなっている。リニアコライダーはこのような最先端技術を結集して宇宙創成の謎に挑む。 

 日本は素粒子物理学の技術大国
 日本は世界が認める素粒子物理学と加速器技術の大国である。日本はこれまでに、素粒子物理学の研究で湯川秀樹氏、朝永振一郎氏、小柴昌俊氏といったノーベル賞受賞者を輩出してきている。最近では、南部陽一郎氏、益川敏英氏、小林誠氏の2008年のノーベル賞受賞も記憶に新しい。

 茨城県つくば市にあるKEKB加速器は世界で最も密度の高い電子ビームを作ることができ、兵庫県にあるSpring8は輝度・エネルギー・指向性などの点で世界最高の放射光を発生することができる。さらに2009年に稼動を開始した茨城県東海村のJ-PARCでは、世界で最も密度の高い陽子ビームを作るべく現在調整中だ。このように日本は、素粒子物理学と加速器技術の分野において世界で第一級の成果を出し続けている。   
 
 そのような中で生まれるリニアコライダー施設は、世界最高水準の性能を持つ、素粒子物理学における世界拠点となるだろう。このような科学の分野における世界拠点がアジア地域に設置されることは、人類の歴史から見ても大きな意義がある。この素粒子物理学の世界拠点がアジアに設置されることに対して、中国、韓国、インド、ベトナム、フィリピン等のアジアの国々の研究者は強い期待を寄せている。

 アジア12カ国と1地域の代表的な素粒子・加速器研究者で構成される「アジア将来加速器委員会」は、日本に建設することを要望する声明を発表。日本はリニアコライダーの基幹技術である超平行ビーム生成と超伝導加速空洞の性能の両方で世界記録を持つ。 

 そして、2004年8月、世界の素粒子・加速器研究者は、日米欧で並行して進められていた研究開発を統合することに合意した。現在、アジア・欧州・北米からなる国際設計チームを中心に世界が一丸となって開発・設計を推進中だ。  
 
 日本が世界のリーダーに
 宗教・人種を超え、世界中の人々が集う国際研究施設を作ることは、世界に門戸を開くことのできる寛容な国「日本」だからこそできることでもある。リニアコライダーが日本にできることにより、世界中の素粒子物理および加速器科学の研究者及び学生は日本に集うことになる。世界の様々な文化を背景とする多くの人々が日本を舞台として活躍し、日本は新たな文化・技術の創造・発信の拠点となる。

 また、世界拠点となる国際研究施設が日本にできることは、日本の国際的な地位の向上にもつながることになる。そして、このような国際研究施設を日本に作り、世界の文化・技術の発展に寄与することは、世界の素粒子物理学をリードする日本の責務でもある。 
 
 リニアコライダーの設計、建設、運用には、幅広い分野の多くの企業・技術者の人々と素粒子研究者が力を合わせてはじめて実現される。そして、それによる成果は、技術の産業波及、地質や環境などの調査、教育・医療・文化育成への利用など多岐に渡って還元されていく。リニアコライダー計画は、まさに、分野の垣根を越えた一大プロジェクトといえる。 

参考HP ILC リニアコライダー計画

リニアコライダー―素粒子の謎に挑む最強の加速器
クリエーター情報なし
技術経済研究所
ビッグバンをつくりだせ―新型加速器:リニアコライダーが宇宙誕生の瞬間に迫る
クリエーター情報なし
プレアデス出版

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