科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学の疑問を、やさしく解説!毎日3分読むだけで、みるみる科学がわかる!
 有機薄膜半導体の印刷 
 プリンターのインクジェット方式を応用し、タッチパネルなどに必須な半導体の薄膜を製造する技術を、茨城県つくば市の産業技術総合研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同開発した。元素が整然と並ぶ単結晶の薄膜印刷に世界で初めて成功した。7月14日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

 従来の印刷法は単結晶ではないため表面がでこぼこし、性能に問題があった。今回の技術では、装置の小型化などにつながる電気的特性を従来の印刷法に比べ100倍以上に高めることができた。常温・常圧で製造できるため基板にプラスチックを使用できる。産総研などが開発した金属配線を薄膜に印刷する技術と複合すると、曲がるディスプレーなどを製造でき、すぐに産業に応用可能という。

 開発したのは、半導体の結晶化を促す有機溶剤のインクと、有機半導体を溶解させたインクをミクロの液滴で交互に吹き付ける、ダブルショットインクジェット印刷法。蒸発するときに2種のインクが混合した液体と気体の境目だけで結晶が成長する。半導体層の全体が均一な厚みとなるのが特徴。厚みは最小で30ナノメートル(ナノは10億分の1)を達成した。

TFT

 産総研フレキシブルエレクトロニクス研究センターの長谷川達生・副研究センター長は「常温・常圧で製造でき、製造時の電力やコストを大幅に削減できる」と説明している。(毎日新聞 2011年7月14日) 

 薄型テレビをさらに薄く
 テレビは今や薄型があたりまえ、しかも値段も下がり、一般の家庭にも普及している。 少し前のテレビが、あの重いブラウン管式だったのがウソのようである。

 総務省の統計では、2007年に薄型テレビの世帯普及率が19.3%、2008年には34.2%、2009年には50.4%と増加した。2010年には、地上アナログ放送の停波(2011年7月24日予定)を見越して75.3%にまで増加した。 2009年末現在は液晶、プラズマ、リアプロジェクションの次の薄型テレビ用技術としてLED、有機ELや無機EL、FEDなどの研究開発が進められている。

 テレビの薄型化には、すべての部品の薄型が欠かせない。その薄型に必要な技術が、プリンターのインクジェット方式を応用した印刷技術である。この技術は文字や写真などの画像を紙の上に再現すだけでなく、シート上にマイクロメートル(µm)レベルの微細電子回路を描画形成する電子デバイス製造に応用できる。

 例えば、真空成膜技術とリソグラフィーを印刷技術で置き換えると、ディスプレーなどの大型電子機器製造の際に、大量の電力を消費する大規模な真空設備が不要になる。さらに、プラスチックのシートを用いることによって、軽い・薄い・落としても壊れないという特徴を備えたフレキシブルデバイスの実現につながり、今後のエレクトロニクス産業に大変革をもたらすと期待されている。

 このようなプリンタブルエレクトロニクス技術の実現には、薄型ディスプレーなどの大面積電子機器に必須であるTFT(薄膜トランジスタ)を印刷法で作製することが必要であり、特に、印刷法によるTFTの大幅な性能向上が強く求められている。半導体は、原子や分子が規則正しく配列することで初めてその性能を発揮するが、シート上に印刷法で塗布したミクロ液滴から、均質性の高い半導体層をいかに形成するかが、プリンタブルエレクトロニクス技術の成否を握る主要な課題となっていた。

 ダブルショットインクジェット
 産総研では、プリンタブルエレクトロニクス技術の実現を目指した研究開発を幅広く行っている。その一環として、プリンタブルエレクトロニクス技術に最適な半導体材料である、有機溶剤によく溶け、かつ常温・常圧でのデバイス加工に適した有機半導体を対象とした研究開発を進めてきた。

 有機半導体は、結晶性の高い低分子系材料ほど高いデバイス性能が得られるが、液滴内部の対流やランダムな結晶化のため、溶液からの半導体の析出を制御することが難しく、通常の印刷法では均質な半導体層の形成が極めて困難とされてきた。

 今回、有機半導体を溶解させたインク有機半導体の結晶化を促すインクの2種類のインクによるミクロ液滴を交互に印刷するダブルショットインクジェット印刷法を開発し、分子レベルの平坦性を持つ半導体単結晶薄膜を作製した。この結果、プリンタブルエレクトロニクス技術の主要な課題となっていた高い膜厚均質性を持つ有機半導体薄膜の印刷と、それを用いた有機TFTの大幅な高性能化に成功した。

 今後は、印刷条件・半導体材料・デバイス構造を一層最適化し、性能と安定性の向上を図る。さらに、金属配線、電極などの印刷法による作製技術と組み合わせて、全印刷による高性能アクティブバックプレーンの試作に取り組む。

 有機半導体
 有機半導体(Organic Semiconductor, OSC)は、半導体としての性質を示す有機物のことである。有機半導体を用いたデバイスには、有機EL(発光ダイオード)、有機TFT(薄型トランジスタ)、有機薄膜太陽電池などがある。

 有機半導体の開発には、電気を通す有機物の発見が大きかった。中でも1977年に白川英樹らによってヨウ素をドープしたポリアセチレンのフィルムが高い伝導度を示したことが報告され、この業績により、白川英樹は2000年に「導電性高分子の発見と発展」を理由にノーベル化学賞を受賞している。

 現在、半導体特性を持つ有機物は、ペンタセンやアントラセン、ルブレンなどの多環芳香族炭化水素や、テトラシアノキノジメタン (TCNQ) などの低分子化合物をはじめ、ポリアセチレンやポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)などのポリマーで発現することが知られている。

 有機半導体には有機電荷移動錯体と、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンのような様々な直鎖状ポリマーがある。電荷移動錯体は無機半導体と似た伝導メカニズムで起こる。そのようなメカニズムはバンドギャップによって分離された電子やホールの伝導層の存在により生じる。

 ポリアセリレン系の有機半導体も、無機のアモルファス半導体のようにトンネル効果や局在化状態、移動度ギャップ、フォノン支援ホッピングが伝導に関わっている。無機半導体のように、有機半導体もドーピングが可能である。ドーピングしたポリアニリン (Ormecon)やPEDOT:PSSの有機半導体は、"有機金属"としても知られる。(Wikipedia)

参考HP 産業総合技術研究所 世界最高性能の有機薄膜トランジスタを実現

有機ELディスプレイ概論―基礎から応用まで
クリエーター情報なし
産業図書
有機半導体デバイス?基礎から最先端材料・デバイスまで?
クリエーター情報なし
オーム社

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please