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 塩分と高血圧、カギは腎臓のたんぱく質
 塩分を取りすぎると高血圧になるといわれるが、血圧が上がりにくい人もいる。私もその一人である。けっこう塩分は取っているのに、病院では血圧が上がらず不思議に思っていた。

 今回、東京大の藤田敏郎教授(腎臓内分泌内科)らは、塩分による血圧の上昇は、腎臓でのたんぱく質の働きの差で起こることが、ネズミの実験でわかった。治療薬の開発に役立ちそうだ。

 藤田さんらは、ネズミに塩分過多の食事(塩分8%)を与えて3週間観察。ネズミは最高血圧(収縮期血圧)が160に達した高血圧グループと正常値の120にとどまったグループに分かれ、前者では腎臓の細胞の形の維持などに必要なたんぱく質「Rac1」が活性化していた。このたんぱく質の働きを妨げる薬を高血圧ネズミに与えたところ、塩分過多の食事でも高血圧にならなかった。

Salt

 藤田さんは「Rac1」の阻害薬は高血圧治療に使える可能性がある。どの程度の投与なら副作用が出ないかなどを調べたい」と話した。結果は7月18日付の米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」に掲載された。(asahi.com 2011年7月19日)

 どうやら「Rac1」という遺伝子、腎臓にあって、塩分に反応して、血圧を上げるはたらきがあるようだ。

 高血圧にエピジェネティクスが関与
 藤田敏郎教授らは以前にも、塩分と高血圧の関係を発表している。それによると塩分の過剰摂取によって、塩分排泄に関わる遺伝子(WNK4遺伝子)の転写活性を抑制していることを世界に先駆けて明らかにしている。

 塩分の過剰摂取が高血圧をきたすことは良く知られているが、その機序については多くの不明な点がある。このたび、東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 教授 藤田敏郎らの研究チームは、塩分感受性高血圧では塩分摂取過剰による交感神経活性異常塩分排泄に関わる遺伝子(WNK4遺伝子)の転写活性を抑制していることを世界に先駆けて明らかにした。

 本研究は血圧に関係するホルモンであるカテコールアミンのナトリウム貯留作用の新たな分子メカニズムを明らかにするとともに、塩分摂取による高血圧発症の機序解明にもつながる画期的な発見である。肥満やメタボリックシンドロームでは血圧の塩分感受性が高いことが知られているが、今回の研究の成果は食塩や肥満などの環境因子が塩分排泄性遺伝子の転写活性を抑制して、疾病(高血圧)が生じる“エピジェネティクス(後天的な遺伝子制御)”の関与を解明したものであり、新たな視点による高血圧治療薬の開発が期待される。

 この研究成果は、米国の科学雑誌「Nature Medicine」オンライン版に、米国東部標準時間4月17日午後1時(日本時間4月18日午前2時)掲載された。

 高血圧とは何か?
 高血圧(Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症リスクとなる点で臨床的な意義は大きい。生活習慣病のひとつであり、肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「syndrome X」「インスリン抵抗性症候群」などと称されていた。これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。

 日本高血圧学会では高血圧の基準を定めている。すなわち、収縮期血圧が140以上または拡張期血圧が90以上に保たれた状態が高血圧であるとされている。しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いだけ合併症のリスクが高まるため、収縮期血圧で120未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされている。

 ここで注意すべきは、血圧が高い状態が持続することが問題となるのであり、運動時や緊張した場合などの一過性の高血圧についての言及ではないということである。高血圧の診断基準は数回の測定の平均値を対象としている。運動や精神的な興奮で一過性に血圧が上がるのは生理的な反応であり、これは高血圧の概念とはまた違うものである。

 高血圧の複合原因
 高血圧は原因が明らかでない本態性高血圧症とホルモン異常などによって生じる二次性高血圧に分類される。 本態性高血圧の原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝的素因や、生まれてから成長し、高齢化するまでの食事、ストレスなどの様々な環境因子によって修飾されて高血圧が発生するとされる。主な原因には、次のようなものがある。

 動脈硬化症による脳内酸欠:一般的に病院で高血圧と診断される大部分の原因は、上行大動脈の動脈硬化症による脳内酸欠を防ぐため、血圧が上がっている状態のことをいう。
 遺伝:両親の一方あるいは両方が高血圧であると高血圧を発症しやすい。
 塩分:日本人の高血圧の発生には食塩過剰摂取の関与が強いとされる。日本人の食塩摂取量は1日平均12gであり、欧米人に比べて多い。日本人の食塩嗜好は野菜の漬け物、梅干し、魚の塩漬けなど日本独自の食生活と関連があるが、2004年版に発行された日本の高血圧治療ガイドラインでは1日6g未満という厳しい減塩を推奨している。食塩(塩化ナトリウム)だけでなく重曹(炭酸水素ナトリウム)などを含む食品および胃腸薬の摂取に対しても注意が必要。
 さらに、ストレスや肥満、飲酒なども高血圧の発症に関与するとされる。

参考HP Wikipedia 高血圧・エピジェネティス
東京大学病院プレスリリース
塩分摂取による高血圧症発症にエピジェネティクスが関与解明

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