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 原発を停止するとCO2は増加する
 菅首相は7月13日の会見で、将来的に原発に依存しない社会を実現する考えを表明した。これはドイツなどの環境先進国にならったものだ。ドイツ、イタリア、スイスは原発を廃止する方向に決まったが、世界全体の流れはまだ原発推進である。原子力発電は我が国の先端技術であり、トルコ・ベトナムなどの発展途上国にODAなどの開発援助を経て、原子炉の受注を予定していた。

 例えば、ベトナムでの受注が取り消されると、原発受注に伴い日本側が表明した総額約790億円の政府開発援助(ODA)などの支援策が無駄になる。原発1基あたりの受注規模は3千億~5千億円で、数千億から兆単位の損失になりそうだ。

 菅首相の予定では、原発は次々に稼働停止にする。そうすると、その代替え発電として、火力発電が受け持つことになる。 原子力のエネルギーコストが1kWhの発電をするのに5~6円で済むのに対し、火力では7円~8円。1円から2円多くかかる。この増額分を払うのは、各家庭だ。従って今後電気代が高くなるのは確実となる。

 日本エネルギー経済研究所は、全ての原発を停止して火力発電で代替した場合、天然ガスや石油などの燃料調達コストは年間3.5兆円増加、標準的な家庭の電気料金は、2010年度と比較して月額1,049円増加すると発表した。更に工場等の負担増は膨大になる。

 それだけでない。火力発電にするとCO2排出量が増える。7月12日の衆院東日本大震災復興特別委員会では昨年のエネルギー計画で示した2030年までに原発依存度を53%に引き上げる目標を撤回する意向を明らかにした。 そうすると、京都議定書にある、温室効果ガス削減目標はどうなるのであろうか?

 気候変動枠組条約
 気候変動枠組み条約とは、地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した条約である。現在の地球温暖化は、大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素[亜酸化窒素:N2O]など、HFCs、PFCs、SF6)の増加が関係していると考えられている。

 温室効果ガスが地球を温暖化し、自然の生態系などに悪影響を及ぼすおそれがあることを、人類共通の関心事であると確認して、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ、現在および将来の気候を保護することを目的とする。気候変動がもたらすさまざまな悪影響を防止するための取り組みの原則、措置などを定めている。

 第3回気候変動枠組み条約締約国会議では、地球温暖化の原因となる、温室効果ガスの一種である二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、亜酸化窒素 (N2O)、ハイドロフルオロカーボン類 (HFCs)、パーフルオロカーボン類 (PFCs)、六フッ化硫黄 (SF6) について、先進国における削減率を1990年を基準として各国別に定め、共同で2008年から2012年までの約束期間内に目標値を達成することが定められた。これを京都議定書と呼ぶ。

 京都議定書、各国の目標
 京都議定書で設定された各国の温室効果ガス6種の削減目標はどのくらいだろうか?京都議定書第3条では、2008年から2012年までの期間中に、先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量を1990年に比べて少なくとも 5%削減することを目的と定め、続く第4条では、各締約国が二酸化炭素とそれに換算した他5種以下の排出量について、以下の割当量を超えないよう削減することを求めている。

 1990年比(-8%)を目標にするのが、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、(欧州連合15か国)
 1990年比 (-7%) が、アメリカ合衆国(離脱)以下 、 (-6%)カナダ、ハンガリー、日本、ポーランド、(-5%) - クロアチア (0%)が、ニュージーランド、ロシア、ウクライナ、(+1%)が、ノルウェー 、(+8%)がオーストラリア、(+10%) - アイスランドとなっている。

 プルサーマルともんじゅ
 菅首相が7月13日に突然「脱原発」の発表をして、驚きの声をあげた人がいた。高木義明文部科学相である。文部科学省では、高速増殖原型炉「もんじゅ」の開発をすすめているが、事前に菅首相から何の連絡もなく突然「脱原発」発言を聞いたからである。核燃料サイクルや「もんじゅ」の開発にはこれまで2440億円の予算がつぎ込まれてきた。これまで費やしてきたお金が無駄になり消えようとしている。

 原子力発電所から出る使用済み核燃料は、「燃えないウラン」である非核分裂性のウラン238の比率が高いが、ウランから生成されたプルトニウムや、僅かながら「燃えるウラン」である核分裂性核種のウラン235も混じっている。このプルトニウムやウラン235を抽出し核燃料として再利用すれば、単に廃棄処分することに比べ多くのエネルギーを産出できる。また、使用済み核燃料の燃えるウランやプルトニウムの比率を下げることになるため、廃棄処分される使用済み核燃料の放射能を減少させることにもなる。プルトニウムの核燃料としての使用法は現在のところ2種類に大別出来る。

 一つは、MOX燃料の形で軽水炉で燃やす方法であり、この方法は日本ではプルサーマルという造語で呼ばれている。プルサーマルとは、プルトニウムとサーマルアクターからできた言葉。プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を通常の原子力発電所(軽水炉=サーマルリアクター)で利用することをプルサーマルという。原子炉の中でのMOX燃料のふるまいは、ウラン燃料と大きな差がなく、ウラン燃料と同様に原子炉の安全性を確保できる。

 もう一つは、高速炉(高速増殖炉を含む概念であるが、高速増殖炉のようにウラン238をプルトニウム239に転換しながらの運転を行わない概念も存在する)を使ってプルトニウムを燃焼させる方法である。

 高速増殖炉(FBR)とは、高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉のことをいう。もんじゅは高速増殖炉である。

 燃料を増やす夢の原子炉
 世界中の地球温暖化対策のひとつとして、原子力が見直されている。「もんじゅ」の運転再開もその一つである。しかし「もんじゅ」は他の原子力と違う高速増殖炉(FBR)。いったいどんな仕組みになっているのだろうか?  

 高速増殖炉(FBR)とは、 高速中性子による核分裂連鎖反応を用いた増殖炉のことをいう。高速中性子を利用しながら核燃料の増殖を行わない原子炉の形式は、単に高速炉(FR)と呼ばれる。通常の原子炉は軽水炉(LWR)と呼ばれる。

 ウランは貴重な資源で、どの国も原子力発電に力を入れていることから、ウランの値段が4~5倍になっている。高速増殖炉ならば、発電しながらプルトニウムという燃料をつくっているので、一石二鳥の発電なのだ。

 核分裂を起こしやすいウラン235は天然に存在するウランの0.7%程度にしか過ぎず、約99.3%は核分裂をほとんど起こさないウラン238であるため、エネルギー源として利用できるウランは、ウラン資源の1%にも満たない。

 しかし、高速増殖炉によってウラン238をプルトニウムに転換することができれば、核燃料サイクルが実現し、理論上ウラン資源の約60%をエネルギーとして使用することが出来る。

 現在、プルトニウムをウランと混ぜて軽水炉原発で燃やす「プルサーマル計画」が進行中であるが、ウラン資源のうち燃料として使える量の比率は、これまでの原発を「1」とすると、プルサーマルでは「約1.2倍」、高速増殖炉の場合は「100倍」とされるほどエネルギー効率がアップする。

 高速増殖炉「もんじゅ」
 現行の商用発電用原子炉として一般的な軽水炉と比較した場合の高速増殖炉の特徴を述べる。

1.増殖比(核反応において消費される核分裂性核種の消滅数に対する生成数の割合)が1.0を超えること
2.核燃料の主体がウラン238/プルトニウム239となること(他に核反応起動用のウラン235が若干必要)
3.減速材を使用しないこと(熱中性子を利用せず、高速中性子をそのまま利用するため)
4.減速材が不要であり、従来と比べ核燃料(核反応断面積がウラン235と比べ格段に小さい)の高密度配置が必要となるため、炉心単位体積あたりのエネルギー量の大きさが飛躍的に向上する。また冷却材の高能率化が必須となる。
5.冷却材に軽水(つまり普通の純水)を使わずに、代わりに溶融金属(主に金属ナトリウム)を使用する
6.燃料には天然ウランまたはウラン/プルトニウム混合燃料(Mixed oxide: MOX燃料)を使用する

 MOX燃料の元となるプルトニウム239とウラン238はいずれも核廃棄物として処分する他に使い道はあまりないものであるが、高速増殖炉の炉心で燃やすことでそれらを有効利用しながら、さらに不要なウラン238から次の高速増殖炉用の核燃料であるプルトニウム239を作り出すことで核燃料を循環させる「核燃料サイクル」を実現するための要となる装置である。

 こういった意欲的な構想の下に先進工業国で研究開発が進められて来たが、軽水炉にはない様々な問題を含んでいるため、実験炉から原型炉までは数か国でいくつか完成したが、2009年現在も実証炉の完成までには至っていない。

参考HP Wikipedia 高速増殖炉プルサーマル
読売新聞 検証 脱原発1~5

原発とプルトニウム (PHPサイエンス・ワールド新書)
クリエーター情報なし
PHP研究所
動かない、動かせない「もんじゅ」―高速増殖炉は実用化できない
クリエーター情報なし
七つ森書館

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