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 セシウム牛の暫定規定値
 セシウム牛の出荷停止が続いている。これ以外にも腐葉土やコメなどの農作物もセシウム検査をするらしい。目に見えない放射線量は、いったいどこまでが安全なのか?

 栃木県北部の那須塩原市と日光市にある計2軒の農家で、福島第一原発の事故後に田んぼで集めたり購入して、肉牛に与えた稲わらから暫定規制値(1キログラムあたり300ベクレル)の100倍以上に当たる3万5000~10万6000ベクレルの放射能が検出された。

 これらの農家から出荷された肉牛4頭から牛肉の暫定規制値(1キログラムあたり500ベクレル)を超える560~904ベクレルの放射能が見つかった。

Hormesis

 この数値を見るといかにも怖そうだが、厚生労働省も放射性物質の暫定規制値は、その食品を1年間、通常通りの食生活で摂取し続けたとしても、健康に影響を及ぼさない基準として算出されているという。「これまで判明している規制値を超えた牛肉を食べても健康に影響はない」としている。

 秋田県では8月1日、2日から開始する肉用牛の放射性物質全頭検査について説明。放射性セシウムを含む稲わらを食べたとされる牛256頭については精密検査を実施後、暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)以下の場合は、安全牛として県が証明し、ほかの牛と同様に市場に出すという。(2011.8.2 msnニュース)

 生涯100ミリシーベルト 
 国の暫定規制値とは何だろう?これは、厚生労働省が定めている値。しかし、この基準正しいのだろうか?

 内閣府にある行政機関に「食品安全委員会」がある。食品を通じた放射性物質の影響を評価していた食品安全委員会(小泉直子委員長)は7月26日、生涯の累積線量の限度を100ミリシーベルトとする答申案を発表した。

 消費者の安全に配慮した「かなり厳しい値」(委員)で、消費者は歓迎するが、規制値の強化で生産者に大きな影響が出る可能性もある。

 生涯100ミリシーベルトは、人生80年とすると1年あたり1.25ミリシーベルト。放射性セシウムで年5ミリシーベルトという今の数値に比べ、相当に低い。 厚生労働省は今後、安全委の答申に基づき、飲料水や野菜など食品ごとの規制値を見直していく。肉と穀類の放射性セシウムの暫定規制値は今1キログラムあたり500ベクレルだが、引き下げられる(基準が厳しくなる)余地もある。(毎日新聞 2011年7月27日)

 ベクレルとシーベルト
 ベクレルとかシーベルトなど、放射線にはいろいろな単位がつけられていてわかりにくい。どんな違いがあるのだろうか?

 ベクレル(Bq)とは、放射能の量を表す単位である。単位記号は、「Bq」である。1 s(秒)間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1 Bqである。例えば、毎秒370 個の原子核が崩壊して放射線を発している場合、370 Bqとなる。

 グレイ(Gy)は、ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位である。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。 

 シーベルト(Sv)は、生体の被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量)の単位。記号はSv。線量当量とは、放射線から受けるエネルギー、グレイ(Gy)に、法令で定められた係数(放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさ)を掛けたものである。 つまり、人体に対する影響は、シーベルトの数値を見て判断する。

 ベクレル(Bq)、シーベルト(Sv)計算・換算表はこちら → http://testpage.jp/m/tool/bq_sv.php 

 ホルミシス効果とは?
 低線量の放射線は健康によいという「ホルミシス効果」も報告されている。ホルミシス効果とは、生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用のこと。1982年、これまでの定説をくつがえす見解がアポロ計画の中で提出された。 宇宙飛行士は2週間もの間、地球の何百倍という宇宙線(放射線)を浴びるが、身体にとってどのくらいのダメージになるのか?

 当時のNASAの医学顧問でミズーリ大学の生命科学教授であったトーマス・D・ラッキー博士は、「人体への放射線の影響」を10年にわたり調査した。予想に反してその結果は、「宇宙飛行士たちは宇宙に行くと元気になって帰ってくる」というものであった。 微量放射線は人体に対して刺激として働き、生体を活性化させ、生命活動にとってはかえって有益である——米国保健物理学会「Health Physics」誌(1982年12月号)に論文発表され、微弱な放射線による人体への効果は、ギリシャ語の「horme(刺激する)」より「放射線ホルミシス」と名付けられた。 ラッキー博士が提唱した放射線ホルミシス効果微量な放射線は次のような効果がある。 1.免疫機能の向上  2.身体の活性化 3.病気の治癒 4.強い身体をつくる 5.若々しい身体を保つ

 約50年前に国際放射線防護委員会(ICRP)は「放射線は微量でも有害であり、DNAは受けた放射線の量に比例して変異する」という説(LNT仮説)を採用した。これは放射線量とその影響には生体反応を起こす限界線量である「しきい値」は存在しないとする説。 しきい値とは一般に境界線、境目のことを指し、それを境に効果に変化が現れることを示す。放射線にしきい値がないとする説は、放射線は少しでも有害であり、放射線が有効に働く線量はない、従って、効果が変化する境目のしきい値は設定できないとするものだ。

 ところが、ラッキー博士は、放射線は低線量であれば、生体を刺激して高い細胞活性効果が認められる。放射線も生体にとって有益な分量であるしきい値があると発表した。 しきい値内の低線量放射線であれば、ホルミシス(刺激)効果として、生体にとって有効であると考えられ、多くの放射線学者や医療関係者の注目を集めるようになった。

 ホルミシス効果への反論
 反対意見もある。2006年、世界保健機構(WHO)は、ラドンの放射線が肺がんの重要な原因であることを警告した。アメリカもWHOに準じており、環境保護庁(EPA)は、ラドンに安全な量というものは存在せず少しの被曝でも癌になる危険性をもたらすものとしている。

 また、米国科学アカデミーは、毎年15,000から22,000人のアメリカ人が屋内のラドンによる肺がんによって命を落としていると推計する。日本政府は2011年現在、特に警告は発していない。 放射線の医学的利用法については、放射線療法を参照。

 ラドンの安全基準については、いまだ解明されていない。 理論的には有害作用に対する生物の適応現象と考えられるが、必ずしも再現性が得られず、確立されたものとはいえない。 カリフォルニア大学の生物学者レスリー・レッドパースは、「低用量時にある種の防御メカニズムを刺激するもので概念的にはワクチンに似ている」としている。

 ロチェスター大学医科歯科校のバーナード・ワイスは、「高用量での測定に基づく低用量での有害性の推定は間違いのもとになる」と指摘している。 米国立環境健康科学研究所(NIEHS)のクリスチーナ・サイヤーは、エドワード・キャラブレスの主張を支えるために用いられている論理とデータの論文について評価し、その根拠の欠陥を指摘している。 ジョーン・ピータソン・マイヤーズは、「ホルメシスは欠陥のある理論」と指摘している。

 疫学の専門家アリス・スチュワート医師の調査結果は、放射線に無害な量はないことを示しており、バックグラウンド放射線や低線量条件下において引き起こされた癌の数が放射線防護委員会によって軽視されていたことを示した。 (Wikipedia)

 飛行機に乗っているパイロットや客室乗務員は地上より高い(6-7倍)放射線をあびており、パイロットや乗務員は乳癌や皮膚癌の発症リスクが高いという研究結果が複数報告されている。(2003.2.5 NHK news)

 また、植物のタバコには低濃度のポロニウム210が蓄積する。その大部分は肥料に含まれている天然の放射性元素から生じたものだ。 喫煙者が吸入したポロニウムは肺の“ホットスポット”に定着し、がんを引き起こす原因となりうる。(日経サイエンス 2011年2月24日)

 ホルミシス効果について、調べてみたが、このように、放射線が低線量でも有害だという報告もあり、実際の効果はわからなかった。放射生物質の種類によっても違いがあるのかもしれない。今後の研究成果が待たれる。

参考HP Wikidedia ホルミシス効果 阿修羅 少量の放射線は怖くない百薬の長になる

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