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 地球を取り巻く反物質帯を発見
 新たな観測データから、地球の上空に閉じ込められた複数の反陽子の証拠が確認された。地球は薄い反物質帯に取り囲まれているという。

  反物質粒子は、通常の物質粒子に対して鏡に映したような性質をもつ。例えば、反陽子は原子の基本的な構成要素の1つである陽子とほぼ同じ性質だが、電荷だけがマイナスである。

 宇宙線(太陽や太陽系外から届く高エネルギーの粒子)が原子に衝突すると、分裂して“エキゾチック”な粒子が大量に発生する。この中にわずかな割合で反陽子が含まれると予測されている。

Van-allen-belts-earth

 問題は、反物質が物質に衝突すると、エネルギーを発して両方とも消滅してしまうことだ。宇宙には物質の方が多いため、新たに発生した反物質はすぐに消えてしまう。

 だが最近、ヨーロッパの宇宙放射観測衛星PAMELA(Payload for Antimatter Matter Exploration and Light-nuclei Astrophysics)によって、バンアレン帯で反陽子が複数発見された。バンアレン帯(Van Allen radiation belt)とは、地球の磁場にとらえられた、陽子、電子からなる放射線帯。地球をドーナツ状に取り巻いている輪で、外側の輪の下にもう1つ輪がある。

 研究チームのメンバーでイタリアにあるバーリ大学の天体物理学者アレッサンドロ・ブルーノ(Alessandro Bruno)氏は、「宇宙線と地球大気の相互作用によって発生した反物質粒子が地球の磁場に捕らえられると予測されており、今回の発見で裏付けられた」と語る。

 宇宙線と地球大気が衝突して反陽子が生まれた?
 反物質が地球を取り巻いているとは驚きだが、いったいどういう仕組みで発生するのだろうか?

 PAMELAは、宇宙線や宇宙線が地球大気の分子と衝突して発生する粒子を調査するため2006年に打ち上げられた。約2年半の間に、搭載したセンサーで地球を周回する反陽子の証拠を28回検出した。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の宇宙科学教授バシリス・アンゲロプロス氏は、「わずかな数に聞こえるかもしれないが、宇宙空間で予測される反陽子の平均密度より3桁ほど大きい」とコメントしている。同氏は今回の研究には関与していない。

 バーリ大学のブルーノ氏は、「PAMELAが検出した反陽子の大部分は、間接的な発生だと考えられる」と話す。宇宙線によって地球の上空数十キロで原子が分裂するとき、「反中性子」という粒子も発生する。「この反中性子の一部が大気から飛び出し、より上空で崩壊して反陽子になる」とブルーノ氏は説明する。

 反陽子の証拠はバンアレン帯の「南大西洋異常帯」で発見された。高度1000キロのバンアレン帯の内側の輪が、地表に向かって600~700キロ下がっている領域だ。

 反陽子はバンアレン帯の他の場所にも存在する可能性があるが、高度が高すぎるためPAMELAでは検出できないという。

 宇宙ステーションは反物質科学の実験室
 国際宇宙ステーション(ISS)で反物質の観測ができるとは思わなかった人も多いだろう。なぜ、高度400kmのISSで観測が可能なのだろうか?

 2011年6月5日、欧州合同原子核研究所(CERN、ジュネーブ)は、宇宙や自然界にほとんど存在せず、物質と出合うと消滅する「反物質」の一種を、実験装置の中に16分余りとなる1000秒間閉じ込めることに成功した。

 日本の理化学研究所なども参加する国際実験チームが長時間の閉じ込めに成功したのは、水素原子を構成する陽子と電子それぞれの反粒子でできた「反水素原子」で、昨年11月には約0.2秒の閉じ込めに成功している。(毎日新聞 2011年6月6日)

 地球上では反物質を作り出すには、粒子加速器や反陽子と陽電子を捕まえる装置など、大がかりな実験装置が必要である。しかも、粒子加速器などで人間が作り出せるエネルギーは、重心系で最大1013 eVのオーダー(CERNで計画されているLHCが 1.4×1013 eV)であり、実験室系に換算しても、1017 eV程度である。

 それに対し、宇宙線のエネルギーは実験室系で最大 1020eVに達する。このため、宇宙線によって超高エネルギー領域での素粒子反応について重要な知見を得ることができる。 実際に、様々な新粒子が素粒子実験より先に宇宙線中から見つかている。

 このように宇宙線は猛烈なスピードで飛び回っているので、宇宙空間は地球上では得られない粒子を観測するには適した場所なのだ。

 PAMELAの反粒子観測を継続すれば、銀河での宇宙線の生成と伝播や、発生した粒子が地球大気を通過する経路を解明する大きな手掛かりが得られるだろう。

 PAMELAの成果は、アメリカのエネルギー省が運用する「アルファ磁気分光器」によって裏付けられる可能性もある。今夏、国際宇宙ステーション(ISS)へ運ばれた、費用15億ドルの最新の宇宙線検出装置だ。

 NASAでは次世代宇宙船の燃料として反物質を収集、活用するアイデアも検討されているが、実現はまだ先の話になるだろう。

 今回の発見は「Astrophysical Journal Letters」誌オンライン版で7月27日に発表された。 (Ker Than for National Geographic News August 11, 2011)

 反物質とは?
 反物質(antimatter)は、質量とスピンが全く同じで、構成する素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ反粒子によって組成される物質。例えば電子はマイナスの電荷を持つが、反電子(陽電子)はプラスの電荷を持つ。中性子と反中性子は電荷を持たないが、中性子はクォーク、反中性子は反クォークから構成されているという。しかし、「なぜ反物質は自然界に存在しないのか、なぜ、私たちのまわりは物質ばかりでできているのか」ということがわかっていない。

 反物質がなぜ自然界にほとんど見られないのかは、長い間、物理学の大きな疑問の一つであった。最近その疑問への回答が部分的ではあるが得られつつある。初期宇宙においての超高温のカオス状態の中で、クオークから陽子や中性子が出来、中間子が生まれ、それぞれの反粒子との衝突で光子(電磁波・ガンマ線)に変換されたり再び対生成されていた頃にすべては起こったと考えられている。

 従来、物質と反物質は鏡のように性質が逆なだけでその寿命を全く同じだと考えられてきた(CP対称性)。だが近年、粒子群の中で「物質と反物質の寿命がほんの少しだけ違う」というものが出てきた。最初はK中間子と反K中間子である。そして、B中間子もはっきりと反B中間子とでは寿命が違うことが確認された。

 「反物質の寿命の方がわずかに短かった」(CP対称性の破れ)のである。これにより、初期宇宙の混沌の一瞬の間の「物質と反物質の対生成と対消滅」において、ほんのわずかな可能性だが反物質だけが消滅し物質だけが取り残されるケースがあり、無限に近いほどの回数の生成・消滅の果てに、「やがて宇宙は物質だけで構成されるようになった」と説明できる。

 もちろん多種さまざまな粒子群の中のわずか2つの事例であるが、他の粒子での同様の現象の発見やそもそもの寿命のずれの発生機序が解明されれば、この謎は遠からずすべてが解明されると期待されている。(Wikipedia)

 宇宙線とは?
 宇宙線のほとんどは銀河系内を起源とし、超新星残骸などにより加速されていると考えられている。これらは、銀河磁場で銀河内に長時間閉じ込められるため、銀河内物質との衝突で破砕し、他の原子核に変化することがある。実際、Li、Be、B、Sc、Vなどの元素の存在比が、太陽系内のものと宇宙線中とで大きく異なることが知られている。このため、宇宙線の元素比や同位元素の存在比を測定することで、宇宙線の通過した物質量を推測することが出来る。

 エネルギーの高い宇宙線の到来頻度は極端に低くなるが、そのエネルギースペクトルは冪関数 dI/dE∝E-α(α〜3)で近似できる。このため、宇宙線の加速は熱的なものではなく、星間磁気雲や衝撃波との衝突を繰り返すフェルミ加速のような機構が考えられる。

 地球大気内に高エネルギーの宇宙線が入射した場合、空気シャワー現象が生じ、多くの二次粒子が発生する。寿命の短いものはすぐに崩壊するが、安定な粒子は地上で観測される。 このとき、大気中に入射する宇宙線を一次宇宙線、そこから発生した粒子を二次宇宙線と呼ぶ。 一次宇宙線の大部分は陽子をはじめとする荷電粒子である。それに対して、二次宇宙線は地上高度では大半がμ粒子である。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia 反物質バン・アレン帯
National Geographic 地球を取り巻く反物質帯を発見!

消えた反物質 (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社
反物質はいかに発見されたか―ディラックの業績と生涯 (パリティブックス)
クリエーター情報なし
丸善

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