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 クロロフィルの研究の歴史
 クロロフィルは葉緑素とも呼ばれ植物の葉の緑色をした色素で、植物が光合成を行い、酸素をつくることは学校でも学び、よく知られている。光合成は、植物が地中から吸い上げた水と、大気中の炭酸ガス(二酸化炭素)を利用して糖などの有機物を作り出す仕組みで、その過程で必ず太陽の光が必要になる。植物は太陽の光を受けて水を分解し水素と酸素に分ける。

 クロロフィルは不思議である。人間が水を分解して水素と酸素に分けようとするとき、水の電気分解で知られているように多くの電気エネルギーを必要とし、その分解効率も悪い。ところが、植物はこの困難な水の分解を簡単にやってのける。そこで、活躍するのがクロロフィルである。クロロフィルは太陽の光を水を分解するエネルギー、つまり化学反応を行う電気化学エネルギーに変える。

 光を自由に他のエネルギーに変えることができたら…。クロロフィルの謎を解明すれば、人類は無限のエネルギーを得ることができるかもしれない。クロロフィルは、多くの科学者の関心を集め、その不思議な分子の姿を知るのに研究が続けられた。さて、クロロフィルの構造を最初に解明したのは誰だろう?

Hans_Fischer

 まず植物の葉からクロロフィルを純粋に取り出すことに最初の研究目的がおかれ、1817年ピエール・ジョセフ・ペルティエとジョセフ・ベイネミ・カヴァントゥーによってクロロフィルは粗製の抽出物として初めて分離され、分子構造解明の開始となった。しかしクロロフィルを純粋に分離することは困難を極め、クロロフィルを単体で分離することは不可能だという説まで発表された。

 このような研究の混迷を極めた後、1906〜14年の間にウィルシュテッターとその共同研究者達がクロロフィルaとbを単体で分離することに成功し、分子の骨格構造を確立し研究の基礎を築いた。そして1920年になり、米国のJ.B.コナントとドイツのハンス・フィッシャーはクロロフィル分子全体の正しい構造式を決定すべく取り組み、やっと1939年に正しい構造式を発表した。ウィルシュテッターは1912年、フィッシャーは1930年、これらの業績によりノーベル化学賞を受賞した。

 ヘミン(ヘモグロビン)とクロロフィルの共通構造
 フィッシャーのノーベル化学賞の受賞理由は「ヘミンとクロロフィルの構造研究、特にヘミンの合成」である。ヘミンとは何だろうか?

 ヘミン(Hemin)とは、鉄を含むポルフィリンである。 ヘモグロビンからグロビンを除いた色素部分の鉄が三価となり,塩素イオンと結合した物質。ヘミンの鉄が第二鉄のときヘモグロビンとよぶ。

 また、ポルフィリン (porphyrin)とは、ピロールが4つ組み合わさって出来た環状構造を持つ有機化合物。環状構造自体はポルフィン (porphine) という名称であるが、これに置換基が付いた化合物を総称してポルフィリンと呼ぶ。

 分子全体に広がったπ共役系の影響で平面構造をとり、中心部の窒素は鉄やマグネシウムをはじめとする多くの元素と安定な錯体を形成する。また、πスタッキング(J会合)によって他の化合物と超分子を形成することもある。金属錯体では、ポルフィリン平面に対してz方向に軸配位子を取ることも多く、この効果を利用しても様々な超分子がつくられている。

 ポルフィリンや類似化合物の金属錯体は、生体内でヘモグロビン、クロロフィル、シアノコバラミン(ビタミンB12)などとして存在し、いずれも重要な役割を担う。また、人工的にも色素や触媒として多様に用いられる。

 動物の血液に必要なヘモグロビンと、植物の光合成に必要なクロロフィルの分子構造が、そっくりなのには驚かされる。中心の金属イオンが鉄であるか、マグネシウムであるかの違いだ。これらに共通したポルフィンという構造は、生物に必要な物質なのだろう。この複雑な環状化合物の構造をつきとめ、合成までしたフィッシャーはすごい人である。

 ハンス・フィッシャー
 ハンス・フィッシャー(1881年~1945年)はドイツ・ヘーヒスト・アム・マイン出身の化学者。ヴィースバーデンのギムナジウムで学んだ後、ローザンヌ大学とマールブルク大学で化学と薬学を学ぶ。

 卒業後にミュンヘンの病院で働いた後、ベルリンのベルリン第一化学研究所 (Erstes Chemisches Institut Berlin) でエミール・フィッシャーの下で働く。

 1911年にミュンヘンに戻り、1913年にはミュンヘン生理学研究所 (Physiologisches Institut München) で講師となった。1916年にはインスブルック大学で薬化学部の教授となる。

 1918年にウィーン大学教授、1921年にミュンヘン工科大学の教授となり、以後死ぬまでその地位にあった。血液や葉に含まれるポルフィリン化合物の研究を行う。

 1930年にクロロフィルとヘミン合成の研究によってノーベル化学賞を受賞。受賞理由は「ヘミンとクロロフィルの構造研究、特にヘミンの合成」である。
 1945年、第二次世界大戦で彼の研究所が破壊されてしまい、ミュンヘンにて自殺。63歳没。

 ポルフィリンを合成するには、ピロールとアルデヒドを酸性条件で縮合させるのが一般的である。この手法は開発者の名をとってローゼムント合成 (Rothemund Synthesis) と呼ばれる。用いるアルデヒドを変化させることで、ピロール間の炭素上(メソ位)へ、またピロールの誘導体を使うことでピロール上(ベータ位)へ様々な置換基を導入することができる。ただし、この方法では他にも多くのピロール重合体が生成するため、収率はあまり高くない。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia ハンス・フィッシャー クロロフィル研究所 クロロフィル研究の歴史

鉄と人体の科学 (悠飛社ホット・ノンフィクション)
岡田 茂
悠飛社
クロロフィル -構造・反応・機能-
三室 守,垣谷 俊昭,民秋 均
裳華房

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