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 恒星の最低温度記録更新
 太陽の表面温度は約6000℃だが、2011年3月に、たった100度の恒星が発見された。米・ハワイにあるケック天文台の「ケックII望遠鏡」で発見したものだった。

 ケックII望遠鏡がとらえた「CFBDSIR 1458+10」連星系は、太陽~地球の約3倍の距離を30年周期で回りあっている。これは地球から約75光年の距離にある褐色矮星の連星系の1つで、「CFBDSIR 1458+10B」と呼ばれる。褐色矮星とは、質量が小さいために核融合ができず、恒星になりそこねてしまった星のことだ。(2011年3月25日 ヨーロッパ南天天文台)

  ところが、今回、NASAの赤外線天文衛星「WISE」のデータから、さらに温度の低い、星のスペクトル分類のうち最も低温で暗い「Y型星」が初めて見つかった。太陽系から40光年以内に発見されたもので、表面温度が摂氏25度という観測史上最も低温の星である。

Y_dwarf

 NASAの赤外線天文衛星「WISE」の観測データから100個の褐色矮星が発見され、そのうちの6個が初発見となった幻の天体「Y型星」であることが判明した。またこれらの星は、太陽系から40光年以内と比較的近距離に位置している。一番近い「WISE 1541-2250」までの距離は約9光年で、知られている星の距離ランキングの7位に相当する近さだ(シリウスが約8.6光年で第5位)。

 恒星の明るさと褐色矮星
 恒星は、宇宙空間の塵やガスが集まって高温になり、核融合を起こして光や熱のエネルギーを放出しはじめることで生まれる。集められた材料が多いほど高温で明るく輝き、その寿命は短い。

 星は高温で明るい方からO、B、A、F、G、K、M、L、T、Yとタイプ分けされ、太陽はG型に属する。最も低温で暗いT型とY型は「褐色矮星」と呼ばれており、低温のため核融合をじゅうぶんに行うことができない。暗くくすぶっている、いわば「星のなりそこない」のような天体だ。暗いため可視光では観測できないが、その熱によって放たれる赤外線を観測することでその存在を知ることができる。

 WISEサイエンスチームの一員で、100個の褐色矮星発見に関する発表を行ったDavy Kirkpatrick氏は「今まで見つかった褐色矮星はオーブンで焼いているぐらいの温度。今回のY型星は文字通り人体と同じくらいの温度ですから、キッチンからリビングルームの領域へ到達したといえますね」と語る。Y型星に関する発表は、同じくWISEチームのMichael Cushing氏らの研究によるものだ。

 恒星の周囲に誕生する惑星と違って、褐色矮星は単独あるいは似た質量の天体とともに星間物質の中から誕生する。太陽質量の約1.3%(木星の約13倍)以上の天体では一時期だけ特殊な核融合反応が起きるため、一般にこれが惑星と褐色矮星の境界とされている。

 褐色矮星の研究は、星の形成過程や、太陽系外の惑星の大気について理解を深めることにつながる。褐色矮星の大気は、系外惑星の多くを占める木星型巨大ガス惑星(ホットジュピター)のそれと似通っているが、褐色矮星の方は主星を持たず独立しているために邪魔な光がなく、ずっと観測しやすいのだ。

 WISEの観測データからは他にも、もしかしたらもっと近くにある星も見つかるかも知れないと期待されている。2009年12月に打ち上げられたWISEは、赤外線全天サーベイ観測などのミッションを完了した後、現在は冬眠モードに入っている。その観測データから新たな発見を求めて、現在も日々研究が進められている。(2011年8月24日 NASA)

 暗すぎる系外惑星を発見
 一方、今まで見つかった中でもっとも暗い系外惑星が発見されている。中心星からの光を吸収する大気成分を持つと考えられるが、主要な原因物質ははっきりしていない。今後同様の惑星を発見・観測することで謎の解明が待たれる。

 非常に暗いことが判明したのは、りゅう座の方向約750光年先の11等星「GSC 03549-02811」星を回っている木星サイズの巨大ガス惑星「TrES-2b」である。2006年に「大西洋両岸系外惑星サーベイ」(TrES)で発見されたものだ。

 米ハーバード・スミソニアン天体物理センターのDavid Kipping氏らは、この惑星をNASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」で観測した。ケプラーはTrES同様、惑星が主星の前を通過する際に起こるわずかな減光をとらえるという手法(トランジット法)で系外惑星の存在を検知するが、非常に高精度で明るさを測定することもできる。

 月が形を変えるのと同じように、主星を公転している間の惑星は、光が当たる面の大きさにしたがって明るさが変化する。50周期分のデータから測定した「TrES-2b」の明るさの変化は、これまで測定されたものの中で最も微小だった。このことから、中心星から受ける光の1%しか反射しない、非常に暗い惑星であることがわかったのだ。

 太陽系の場合、たとえば木星は表面のアンモニアの雲が太陽光の3分の1を反射して明るく輝く。だがこの「TrES-2b」は、主星からわずか480万kmという近い距離にあり(注)温度が摂氏1,000度近くにもなってしまうために、光を反射する雲が存在できないのだ。その大気は、気化したナトリウムやカリウム、酸化チタンといった光を吸収する物質を含んだものになるが、これほどまで暗いのにはこれらの物質以外に要因がありそうだという。

 ただし、光が全く皆無なわけではなく、電気ストーブのコイルさながら、熱による暗く赤い光を放っているようだ。今後は、ケプラーが発見した1200個もの惑星候補のデータから、このような暗い惑星の存在を探っていく。(2011年8月16日 CfA)

参考HP アストロアーツ・NASA 気温たったの25度のY型星を発見 CfA 暗すぎる系外惑星発見

宇宙は「地球」であふれている -見えてきた系外惑星の素顔- (知りたい!サイエンス)
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