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 世界遺産に毒草異常繁殖
 奈良県天川村洞川の観音峰(1347メートル)の山頂付近で、ヨーロッパ(西アジア)原産の毒草・ジギタリスが異常繁殖している。南側斜面などの約1万平方メートルを覆うように群生しており、同村は「他の希少植物を圧迫し、大峰山系独自の生態系を脅かす」として、除草などを検討している。

 ジギタリスはゴマノハグサ科の多年草で、背丈は約1メートルに成長。初夏に淡い紫色の小さな花を咲かせ、日本では「キツネノテブクロ」とも呼ばれ、観賞用として親しまれている。葉は強心薬としても用いられるが、毒性が強い。

 観音峰周辺では約10年前からジギタリスが自生しているのが確認されていたが、数が少なかったため、山野草として放置されていた。昨夏頃から急激に繁殖し始めたという。

Digitalis

 専門家らによると、ジギタリスは有毒植物のため、野生動物の餌にならず増える一方で、「繁殖のスピードがはやく、数年後には他の山々にも広がるのでは」と警戒している。

 同山は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に隣接し、山中には「クルマユリ」や「キレンゲショウマ」などの希少な山野草が自生。1995年には本州で初めて「ワタナベソウ」の自生が確認されている。(2011年8月17日  読売新聞)

 ジキタリスとは?
 ジキタリスは別名をキツネノテブクロ(英名のfoxgloveの直訳である)という。ヨーロッパ原産であるが、観賞用あるいは薬用に世界中で広く栽培される。高さ1メートル前後で分枝しない。

 全体にジギトキシン、ジゴキシン、ラナトシドCなどの強心配糖体を含み、これらはジギタリスの葉を温風乾燥したものを原料としていたが、今日では化学的に合成される。古代から切り傷や打ち身に対して薬として使われていた。1776年、英国のウィリアム・ウィザリング (William Withering) が強心剤としての薬効を発表して以来、うっ血性心不全の特効薬として不動の座を得るに至っている。ただしジキタリスには猛毒があり、素人が処方すべきではない。

 日本薬局方ではジギタリスの一種 Digitalis purpurea が医薬品として収録されている。これはハトを使って効力を定量した「ジギタリス単位」という単位(詳細な定量方法は、日本薬局方を参照)で効力を表示する。

 不吉な植物としてのイメージがあり、暗く寂れた場所に繁茂し、いけにえの儀式が行われる夏に花を咲かせることからドルイド達に好まれると言われる。「魔女の指抜き」「血の付いた男の指」などと呼ばれていた地域もある。メーテルリンクは、「憂鬱なロケットのように空に突き出ている」と形容している。(Wikipedia)

 ジギトキシン
 ジギトキシン(英: digitoxin)は、強心配糖体のひとつ。CAS登録番号は [71-63-6]。細胞膜に存在するNa+,K+ATPaseを阻害することにより心筋細胞内のカルシウムイオン濃度を増加させ、心筋の収縮力を増大させる(陽性変力作用)。心不全、心房性不整脈患者に適用される。

 心臓のポンプ機能が低下すると、血液や水分の循環が悪くなる。その結果、体に余分な水分がたまりやすくなり、浮腫(むくみ)を生じたり、息苦しさや疲れを感じるようになる。肺に水分がたまると、咳がでたり、ゼーゼーとぜん息のような呼吸になることもある。このような状態が「心不全」だ。

 ジキトシンは、ジギタリス系の強心薬。心臓の収縮力を強くし、脈をゆっくりさせる作用がある。血液がよく回るようになるので、息が楽になり、浮腫も改善される。実際に、ジギタリス薬を使用すると、心不全悪化による入院の割合が減るという臨床研究が報告されている。

 心筋の収縮に必要なカルシウムを細胞内に取り込むことで、心臓の収縮力を強くする。その結果として、全身の血液循環がよくなり、心不全の症状も改善される。強心作用とともに、交感神経の緊張をやわらげることで、脈を強くゆっくりさせる。心房細動などある種の頻脈性不整脈に優れた効果を発揮する。 

 西欧で古くから用いられきたジギタリスという薬用植物に由来している。肝臓で大部分が代謝される。他の薬と相互作用を起こしやすい性質がある。別の薬を飲んでいる場合は、医師に相談すること。また、注意事項や副作用について十分医師の説明を受けてくおくこと。服用に適さないケースとして、房室ブロック、洞房ブロック、閉塞性心筋疾患などがある。

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」
 さて、思いがけない毒草が発見された、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」とはどんな場所だろう?

 和歌山県、奈良県、三重県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」は、自然崇拝に根ざした日本古来の神道と百済より伝来した仏教が結びついた神仏習合思想をよくあらわしていること、神社や寺院などの建造物が自然環境と一体となって文化的景観を構成していることなどが評価され、2004年、世界文化遺産に登録された。

 登録資産は、次の資産群がある。吉野・大峰 吉野山、金峯山寺、大峰山寺、吉野水分神社、吉水神社、金峯神社 熊野三山 熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、西岸渡寺、那智大滝、那智原始林、補陀洛山寺 高野山 丹生都比売神社、金剛峯寺、慈尊院、丹生官省符神社 参詣道 大峰奥駈道(玉置神社を含む)熊野参詣道(熊野川、七里御浜、花の窟を含む)高野山町石道 登録地域は、登録資産(核心地域)約4.95平方キロメートルと、その周辺の緩衝地帯を加えた約118.7平方キロメートル。

 登録されている参詣道の総距離は307.6キロメートル。 「道」が世界遺産として登録されたのは、スペイン~フランスにまたがる巡礼道「サンディアゴ・デ・コンポステラへの道」についで2件目である。 紀伊山地の3つの霊場は、それぞれ異なる信仰の霊場であったが、それぞれが参詣道で結ばれ、日本古来からの神道と仏教が融合した神仏習合の文化が育まれてきた。

  しかしながら、明治維新政府の神仏習合を禁止する神仏分離令(神仏判然令)をきっかけに、全国各地で廃仏毀釈運動がおこり、寺院や仏具が破壊されてしまった。さらに、明治39年(1906年)に施行された「神社合祀令」によって全国で5万もの神社がつぶされ、熊野でも神社の森が伐採されるという危機に瀕しました。この危機に対し、和歌山県出身の博物学者・南方熊楠(みなみかたくまぐす)は、「神社をつぶすということは自然と人間社会を破壊するもの」と日本で初めてエコロジーの考えを提唱して「神社合祀令」に反対、「熊野の森を守れ!」と立ち上がり、那智滝の原生林や樹齢500年をこえる熊野古道の杉木立を守った。

参考HP 平和が一番 紀伊山地の霊場と参詣道 Wikipedia ジキタリス Chemi Book ジキトキシン

世界遺産 吉野・高野・熊野をゆく 霊場と参詣の道 (朝日選書)
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朝日新聞社
世界遺産 日本編 6(紀伊山地の霊場と参詣道 1・2) [DVD]
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