科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学の疑問を、やさしく解説!毎日3分読むだけで、みるみる科学がわかる!
 砂から太陽電池、砂漠で発電
 3月11日の東日本大震災にともなう、福島第一原子力発電所の事故によって、原子力の安全性に問題が生じている。現在、再生エネルギーへの移行が検討されている。しかし、発電電力量の割合は「水力8.1%、火力61.7%、原子力29.2%、再生可能エネルギー1.1%」(2009年度)で、再生可能エネルギーの割合はわずか1.1%。再生可能エネルギーの導入量を増やすことは大切だが、すぐには原子力の代替にはならず、これまでのエネルギーを併用する時代はまだ続きそうだ。

 再生可能エネルギーの種類も、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどさまざまある。太陽電池はもっとも期待されているが、天候に左右されること、昼と夜では電力の供給量が一定していないこと、材料費が高く、発電コストが高くなることなどの問題がある。

 これらの太陽電池の欠点のすべてに応える壮大な計画、サハラ・ソーラーブリーダー(SSB)計画が、始まった。どんな計画だろうか?

SSB

 サハラ・ソーラーブリーダー(SSB)計画とは、サハラ砂漠の砂から太陽電池を作り、超伝導で都市に送電、電力貯蔵も超伝導で行う、未来のエネルギーシステムだ。東京大、東京工業大、中部大などの研究グループが8月24日、名古屋市で開かれた「アジア・アラブ持続可能エネルギーフォーラム」で、新しいエネルギー供給モデルを発表した。

 サハラ・ソーラーブリーダー(SSB)計画と名付けた研究は2008年にスタート。太陽電池の材料には主にシリコンが使われているが、砂漠の砂にシリコンが多く含まれていることに着目。砂からシリコンを取り出して太陽電池を作り、日差しの強い砂漠に置いて発電する仕組みを考えた。

 超伝導は、物質をある温度以下に冷やすと電気抵抗がなくなり、これまでの高圧線による送電の10倍以上に効率が高まるという。また、電力貯蔵も容易になる。

 中部大の超伝導・持続可能エネルギー研究センター長を務める山口作太郎教授は「東日本大震災による原発事故以降、エネルギーの安全性が求められている。SSB計画は技術的には5年ほどで可能」と話す。(asahi.com 2011年8月25日)

 サハラ砂漠に太陽光発電基地をつくれ!
 2011年5月7日、NHKサイエンスZEROで放送した番組の中でも、「サハラソーラーブリーダー計画(SSB計画)」が紹介されている。

 アフリカのサハラ砂漠に、大規模な太陽光発電基地をつくる計画がすすめられている。その名も「サハラソーラーブリーダー計画(SSB計画)」。砂漠の強烈な太陽光で電気を生み出し、さらにその電気を使って、太陽光パネルに使うシリコンを砂から低コストでつくり出していく。そして、十分に規模を拡大したところで超電導ケーブルを使って世界中に電気を送るという壮大なプロジェクトだ。

 SSB計画では、シリコンを使った太陽電池で発電を行う。シリコンには半導体の性質があり、光が当たると電子が動くという特徴を持っている。さらにシリコンは、ホウ素を混ぜるとプラス極になり、リンを混ぜるとマイナス極になる。このプラス極とマイナス極を重ね合わせて光を当てると、マイナス極の電子がプラス極に移動することで電気が流れる。シリコンの性質をうまく利用することで、効率のいい太陽光パネルをつくることができるのだ。

 現在、シリコンの太陽光パネルは、精密電子機器に使われる高純度のものを使っているためコストが高い。そこでSSB計画では、材料に砂漠の砂を使い、しかも純度を落とすことで安い太陽光パネルをつくろうとしている。実は、砂の成分は二酸化ケイ素(SiO2)、つまりシリコンと酸素が結びついた物質だ。ここから酸素を取り除けばシリコンを取り出すことができるというわけだ。現在、鉄鉱石から酸素を取り除く製鉄法を応用して、砂から酸素をとりのぞく研究が行われている。

 SSB計画で発電した電気を世界中に送るために、送電ロスを少なくする研究も行われている。その鍵となるのは直流超電導技術だ。中部大学では、長さ200mの直流超電導送電のケーブルを敷設し実験を行っている。超電導状態を実現するため、管の中のケーブルは液体窒素で冷やされている。コストや効率を考えてケーブルの最適な太さを計算し実験を行ったところ、電気抵抗ゼロで、毎分1200アンペアの電気を流すことに成功した。(NHK サイエンスZERO)

 サハラ砂漠に降り注ぐ太陽が欧州の重要な電力源に?
 この計画は、日本だけではない、欧州連合(EU)でも計画が始まっている。2010年9月9日のBloomberg Businessweekでは次のような記事を掲載している。

 サハラ砂漠には毎年、欧州の大半の地域に比べて2倍もの日光が降り注ぐ。欧州連合(EU)は今後10年以内に電力の20%を再生可能エネルギーで賄うことを目指している。そこで、北アフリカのサハラ砂漠一帯に太陽熱発電施設を建設し、地中海に埋設した送電線を通じて欧州に電力を供給する計画を検討している。

 2009年、欧州の有力企業が集まり、「デザーテック・インダストリアル・イニシアチブ(DII)」と呼ぶ企業連合体(コンソーシアム)を結成した。サハラ砂漠において太陽エネルギー発電事業を目指す。現在は30社以上が参加している。

 デザーテックは今後40年間で5600億ドル(約47兆円)を投資し、北アフリカに太陽エネルギーと風力による発電施設を建設する計画。近く採算性分析調査を完了し、2013年までに最初の発電所を完成させる目論見だ。

 7月には別の企業連合体「トランスグリーン」が結成された。トランスグリーンは送電に必要な数千キロの高圧送電網の整備を計画している。だが、克服すべき課題は多い。欧州と北アフリカのさまざまな国々の合意を得て、史上最大級のインフラ事業計画を実現するのは容易ではない。(2010年9月9日 Bloomberg Businessweek)

参考HP サイエンスZERO  サハラ砂漠に太陽光発電基地をつくれ!

太陽光発電システムがわかる本
クリエーター情報なし
オーム社
60W 多結晶ソーラーパネル 12V システム系
クリエーター情報なし
YMT ENERGY

 ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please