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 第4の選択
 第3のエコカーとして、マツダの「デミオ」などの低燃費ガソリンカーが注目されている。第1のエコカーはハイブリッドカーで、第2のエコカーは電気自動車だろうか?

 ハイブリッドカーも電気自動車も、年々低価格化しているが、まだまだ一般庶民には手が出ない。その中でガソリンカーでハイブリッドカー並みの低燃費を実現したマツダの技術はすばらしい。ガソリン車ながら1リットルあたり30キロメートルを走り、ハイブリッド(HV)車と遜色ない走りを見せる。

 しかし、ガソリンは値段が高い。そこで、今注目されているのが第4のエコカーともいうべき天然ガス(CNG)車である。2010年3月現在ではレギュラーガソリンは131.3円、軽油は110.5円となっているが、LPGは85.0円(店頭現金価格)である。しかも、低公害。黒煙はでないし、窒素酸化物も少ない。二酸化炭素の排出量もガソリンと比べて10~35%も少ない。

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 LPG車普及台数では第1位がお隣の韓国で232万台(乗用車保有の20%)、第2位がトルコの224万台、第3位がポーランドの208万台、第4位イタリアの93万台、第5位オーストラリアの65万台、第6位がロシアの60万台となっている。自動車燃料の多様化が世界各国で進む中、日本での普及はわずか4万台。その原因は何だろうか?

 LPGは、ガソリンよりも油分が少ないため、エンジンへの負担が若干大きい。おおむね、国内向けの自動車は、海外輸出向けよりも早いサイクルで買い換えられている。そのため、エンジンの耐久性は、海外輸出向けよりも国内向けの方が劣る。つまり、国内向けのエンジンの寿命は短い。だから、海外輸出向けはLPガスの使用はOKで、国内用はNOという状態になってしまっている。 

 アメリカの現状
 アメリカでは、トラックを多数保有する企業が天然ガスに注目している。業界団体NGVグローバルが発表した2010年のデータによれば、天然ガス自動車はほとんど普及しておらず、全世界の自動車の1%にも満たない。

 しかし、市場調査会社パイクリサーチは2010~2016年にかけ、全世界の販売台数が毎年9%超のペースで増加すると予測している。現在、天然ガス自動車の大部分はパキスタン、イラク、アルゼンチン、ブラジル、インドで使用されており、NGVグローバルによれば各国とも100万台を上回る保有台数だという。

 「もしインセンティブがなくても順調に増加するだろう。天然ガスのコストは今後も、軽油やガソリンよりかなり低い水準を維持すると予想される。さらに、普通トラックや大型トラックの市場では、排ガス規制対策で軽油のコストが増加する。いずれは天然ガスに切り替えても採算が合うようになる」。

 2011年発表のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究によれば、既に州や国のインセンティブがいくつか始まっているが、車載燃料として使われる天然ガスの割合はわずか0.15%だという。現状では、大部分が工業用のボイラーと住宅暖房で消費されている。(Josie Garthwaite for National Geographic News September 5, 2011)

 普及しない理由
 自動車での利用が増えない原因の一つが、天然ガス自動車への改造費用である。ガソリン車やディーゼル車を改造した場合、排気ガスに関する当局の認可を受ける必要がある。業界団体、アメリカ天然ガス自動車協会(Natural Gas Vehicles for America)の会長リッチ・コロジェイ(Rich Kolodziej)氏によれば、カリフォルニア州の基準は特に厳しく複雑で、改造業者が認可を得るには5万~10万ドル(約380万~760万円)の費用が見込まれるという。同州の基準はほかの州でも採用されている。

 1回の燃料充てんによる走行距離にも問題がある。燃料が気体であるため、貯蔵容積効率がガソリン車の1/3~1/4程度で、1回のガス充てんで走行できる距離がそれだけ短くなり、走行可能距離は小型貨物車(バン)では約300km。最近では、ガス容器の軽量化により搭載本数が増え、ガソリン車との走行距離に差がなくなりつつある。

 改造により、車体重量が増える問題もある。ガス容器積載による、車体重量の増加を抑えるために、 FRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)容器やオールコンポジット容器などの軽量容器による重量の軽減化が進められている。

 その他には、天然ガスの供給スタンドが現在のところ限定されていることがあげられる。アメリカには18万のガソリンスタンドがある一方、CNGの補給スタンドは1000程度(一般に開放されているのはその約半分)しかないという。日本全国でも280ヶ所程度しかないが、毎年40ヶ所以上のペースで増加している。

 天然ガス(LPG)自動車とは?
 LPG自動車は燃料にLPGを利用する自動車で、エンジンの基本構造はガソリンエンジンと差異はなく、燃料タンクや燃料と空気を混合する装置に大きな違いが見られる。

 LPGは液化石油ガス(liquid petroleum gas)の略で、2気圧から8気圧という比較的低い圧力で液化し、体積が250分の1となることからガス燃料としては可搬性に優れる。圧縮天然ガス車(NGV・CNG車)の200気圧と比較しても積載性で有利である。オクタン価はブタンが約90RON、プロパンが130RONである。実際に流通しているLPGはブタン・プロパン比が8:2で約105RONと、ハイオクガソリン(プレミアムガソリン)並みのオクタン価である。

 一般的に排気ガスを減らす「クリーン」な燃料として広く使われている。黒煙が全く排出されず、PM (粒子状物質)も測定限界以下、低NOx であることである。LPガスはC分(炭素)が 3–4 と少なく、逆にH分(水素)は8–10と多いので、CO2排出量も同一排気量エンジン、同一燃料供給方式のガソリンエンジンに比較して約12 - 15%、ディーゼルエンジンに比較しても約6%少ない。

 LPGとLNG、CNGの違い
 「LPG」とは、液化石油ガス(Liquefied petroleum gas)のことで、石油をくみ出したり、加工するときに出る気体を液化したもの。主な成分はプロパンやブタンである。

 「LNG」とは、液化天然ガス(Liquefied natural gas)のことで、気体のまま埋もれている天然ガスを掘り出し液化したものである。主な成分はメタンである。LPGもLNGも、どちらも大気汚染の原因物質とされる硫黄酸化物や窒素酸化物、温暖化の原因とされる二酸化炭素などの排出が少ない。

 「CNG」とは、圧縮天然ガス(Compressed natural gas)のことで、高い圧力で圧縮された天然ガスのこと。環境に優しい自動車の燃料として注目を浴びるようになった。

参考HP Wikipedia LPG自動車 ・ 東京ガス 天然ガス自動車
National Geographic トラックを天然ガス車に!実は割安

天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学
石井 彰
日経BP社
トコトンやさしい天然ガスの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
井原 博之,島村 常男,本村 真澄,佐々木 詔雄
日刊工業新聞社

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