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 コイやナマズの祖先は海水魚だった
 世界中の川や湖に生息しているコイやナマズの仲間は、約2億5000万年前に世界の大陸が一つだった時代の海水魚を共通の祖先としていることが、東京大大気海洋研究所の西田睦(むつみ)教授(分子進化生物学)らの研究で明らかになった。

 大陸の分断に伴って淡水域が広がり、多様性を増したらしい。成果は、英国の進化生物学専門誌に掲載された。

 コイやナマズは水中の音を増幅させる器官を持つ「骨鰾(こっぴょう)類」の仲間。約1万2000種類いる淡水魚の3分の2を占めるほど多様性に富み、南極大陸を除く世界中に分布する。なぜ海を渡ることができない淡水魚が大陸を超えて広く生息しているのか謎だった。

Carp&Catfish

 研究チームは骨鰾類66種を含む110種の魚類の遺伝子配列を比較。その結果、現在の骨鰾類は、約2億5000万年前の共通の海水魚を祖先に持つことを突き止めた。ちょうどその頃に巨大大陸「パンゲア」が分裂し、淡水域が拡大したことから、多彩な姿に進化したと見られている。(2011年7月23日 読売新聞)

 コイ・ナマズのなかま「骨鰾類」
 魚類は基本的に一生の間水中生活を営み、えら(鰓)呼吸を行い、ひれ(鰭)を用いて移動する。体表はうろこ(鱗)で覆われ、外界の温度によって体温を変化させる変温動物である。 全体の種数は2 万5000~3 万近くにものぼり、脊椎動物全体の半数以上を占めている。

 魚類はあごの発達していない無顎(むがく)類と、その他の顎口(がっこう)類に分かれる。顎口類はサメなどの軟骨魚類と、その他の硬骨魚類に分かれ、硬骨魚類はシーラカンスなどの肉鰭(にくき)類と条鰭(じょうき)類に分かれる。 

 いわゆる一般にサカナというとこの条鰭類のことだが、このなかまで一番多く、最も進化したのが、棘鰭(きょくき)類であり、スズキ目やカサゴ目など13目267科2,422属が所属し、魚類全体の約50%にあたる14,797種が含まれる。鯛などのように背びれの硬い棘が特徴である。

 次に骨鰾(こっぴょう)類は、魚類の2番目に大きななかまで、この多様なグループは、現生魚類の約28%にあたる8,000近い魚種を包含し、淡水魚では68%を占める。コイやナマズやデンキウナギのなかまがいて、表皮の傷口から他魚に危険を伝える警報物質が放散されることや、ウェーバー器官をもち聴覚に優れることなど、多くの共通した特徴がある。

 骨鰾類のDNA全塩基配列を分析
 東京大学大気海洋研究所の西田睦(にしだ むつみ)教授と千葉県立中央博物館の宮正樹(みや まさき)上席研究員らの研究グループは、骨鰾類51種のミトコンドリアDNA全塩基配列 (約16、500塩基対) を独自に開発した手法で決定した。

 これらの配列を既知の配列59種に加え (計110種)、骨鰾類がどのような道筋を経て進化してきたのかを示す系統樹を構築した。系統樹の構築にあたっては、DNAの塩基置換モデルを考慮した最新の手法を用い、推定の確からしさを数理的に分析した。さらに、得られた系統樹上に現生種の生息場所をプロットし、祖先の生息場所を最尤法と呼ばれる手法により系統樹上に再構成した。

 また、魚類の化石から得られる情報を利用して、ベイズ法と呼ばれる手法により系統樹に時間軸を入れた。分析の結果得られた系統樹は、8000近くもの種を含む骨鰾類が単一の祖先種から進化してきたものであることを明瞭に示した。また、その祖先種の生息場所を推定した結果、海水から淡水への移行が明らかになった。

 最尤法やベイズ法は、DNAの塩基置換に対して統計モデルを立て、与えられたデータ (この場合は多数の種から得られたDNAの塩基配列) に基づき、尤度 (確率) を最大化するようなパラメータ (この場合は系統樹のかたちや分岐年代) を「点」(最尤法) や「空間」(ベイズ法) で推定しようとする数理的な方法。 今回の研究では系統樹のかたちを最尤法で,分岐年代をベイズ法で推定した。

 貧酸素だった古生代末期の海洋
 その時期は、海洋で貧酸素層が拡大して大絶滅が起こった古生代と中生代の境界 (ペルム紀・三畳紀境界:P-T境界) に相当することから、祖先種は新たな生息域を求めて海水から淡水に侵入することによって大絶滅を逃れられたのだと考えられる。

 当時、地球には巨大大陸パンゲアしかなかったので、淡水域は沿岸のごく一部に限られていましたが、中生代 (2億5000万年~6500万年前) に入り大陸の分裂が始まりました。この時期に骨鰾類の4大グループのすべての祖先種が系統樹上に登場しているため、三畳紀 (2億5000万年~2億年前) における大陸分裂 (ローラシア大陸とゴンドワナ大陸) が、これら祖先種の分化の引き金になったと推定されました。

 その後、ジュラ紀から白亜紀前期 (2億年~1億年前) にかけて、4大グループ内での著しい多様化 (現生の科に相当する) が進みました。この時期には、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸がさらに分裂を繰り返し、現在見られる大陸が形成されました。大陸の分裂が進むと湿潤な沿岸部が拡大すること、さらには気候の温暖化が始まったことから、4大グループ内の多様化はこのような外的要因によりさらに促進されたものと推測されました。

 これまで、骨鰾類のような世界中の大陸に分布し、しかも全淡水魚の三分の二を占める巨大グループの進化の歴史を包括的に推定した研究はなかった。彼らが単一の祖先種から進化してきたにもかかわらず全世界の淡水域に分布するのは、かつて地球上の大陸が一つ (巨大大陸パンゲア) であった頃の名残だった。

 化石による証拠はまだ得られていないが、私たちにもなじみ深いコイやナマズの祖先は、恐竜の闊歩する水辺にすでに出現しており、当時淡水域で繁栄していたシーラカンスのなかまと一緒に泳いでいるという情景もあったに違いない。

参考HP Wikipedia 魚類無顎類・東京大学大気海洋研究所 恐竜時代まで遡るコイやナマズの起源

ダーウィンの箱庭ヴィクトリア湖
クリエーター情報なし
草思社
今を生きる古代型魚類―その不思議なサカナの世界 (進化生研ライブラリー)
クリエーター情報なし
東京農業大学出版会

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