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 房総半島沖で「スロースリップ」 
 防災科学技術研究所と国土地理院は10月31日、房総半島の東方沖で、地震を伴わずプレート(岩板)境界が動く「ゆっくり滑り」が起きていると発表した。

 ゆっくり滑りは、フィリピン海プレートが日本列島の下へ沈み込んでいる場所で起きている。防災科研は傾斜計、国土地理院は全地球測位システム(GPS)を使った地殻変動のデータを解析。いずれも、10月26日から5日間で6センチほど滑ったと見積もった。

 房総半島沖では、平均約6年間隔で同様の現象が観測されている。前回の発生は4年前の2007年8月。今回の発生は過去30年の観測で発生間隔が最も短かった。(asahi.com 2011年11月1日)

Slow slip

 この場所のスロースリップは約30年間観測が続いており、前回までの5回は平均6年間隔で起こっていた。今回は2007年8月以来4年2カ月ぶりで、間隔は過去最小。東日本大震災の影響で早まった可能性もあるという。2007年には、スロースリップに誘発されたとみられる群発地震が房総半島周辺で発生した。

 防災科研が全国に整備した、高感度地震観測網のうち、房総半島6地点のデータを分析。最大の動きは、10月26~30日の5日間に深さ約20キロで約6センチ滑ったと推定した。(毎日新聞 2011年11月1日)

 スロースリップとは何か?
 スロースリップ(slow slip)とは、地震学の用語で、普通の地震によるプレートのすべり(スリップ)よりもはるかに遅い速度で発生する滑り現象のことである。「スローイベント」「ゆっくりすべり」「ゆっくり地震」などとも呼ばれるが、厳密には「スロースリップ」か「ゆっくりすべり」が最も的確に意味を表している。海溝などの沈み込み帯ではよく見られる現象。また、1つのプレートの中に存在する断層の面でも発生する。

 「普通の地震よりもはるかに遅い速度」というのは、地震を起こす地殻変動の速度のことである。地震としては、地震動の継続時間が非常に長く、地震動の周期が比較的長め(約0.5秒~数十秒)であるという特徴を持つ。

 海洋プレートが大陸プレートの下に沈みこむ構造(沈み込み帯)では、海溝ができ、プレート同士の境界面の一部が強い圧力によって密着して固定され(固着)、固着域(アスペリティ)ができるのが一般的である。固着域は、数十年~数百年の間圧力を溜め込んで動かず、地震の時に一気にずれ動く部分である。

 通常、この固着域は帯状に分布するものもあれば、まだらに分布したりするものもあり、大きさも分布も場所によってさまざまである。大まかに見れば、海溝に対してほぼ平行に分布する。ちなみに、この固着域の分布はプレート同士の境界面の温度に関係があるとされているが、温度だけでは説明できず、そのほかにも多数の要因があると考えられている。固着域の周り(すぐ内側と外側)には、スロースリップを起こしながら沈み込む部分(スロースリップ域、遷移領域)が細長く分布し、そのさらに内側には地震を起こさずに安定して沈み込む部分(安定すべり域)が広く分布している。

 力学的には、固着域は動的な不安定破壊を起こす特性、遷移領域は静的に不安定破壊を起こす特性、安定すべり域は安定したすべりを起こす特性を持っている。つまり、固着域は大きな振動を伴った地震、遷移領域は振動をほとんど伴わない地震や「すべり」、安定すべり域は振動を全く伴わない滑らかな「すべり」を起こす。

 基本的には、沈みこむ海洋プレートは移動方向と同じ向きに、乗り上げている大陸プレートはその向きとは逆方向に、スロースリップを起こす。(Wikipedia)

 スロースリップ構造の例
 東海地方: 東海地方では、南海トラフ(海溝の1種)でユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる。浜名湖付近では、2000年から2004年まで、年間1cm程度の速度でスロースリップが発生していることが、GPSの観測により判明した。当初は、東海地震に関連のある異常、特に東海地震発生の引き金なのではないかとの見方があり、多くの研究がなされた。

 結果、東海地方のプレート同士の境界面は通常とは異なることが判明した。東海地方の南東には、伊豆諸島と平行して銭洲海嶺という細長い海底山脈がある。この銭洲海嶺は古くから何度も活動しており、東海地方の地下には沈み込んだ古い銭洲海嶺が何列も存在している。プレート同士が強い圧力によって滑っている境界面では、銭洲海嶺のような隆起した地形があると、海水などの水が堆積物と一緒に地下に沈み込み、そのままプレート同士の境界面を作ってしまう。

 地下では深く沈み込むに従って圧力が高まるため、堆積物に含まれる水は鉱物内から外に染み出し、鉱物同士の隙間に入り込んで高圧の水となる。これを「高間隙水圧帯」という。水は粘度が低いため、高間隙水圧帯は潤滑油の働きをして、鉱物同士が押し合うプレート境界よりもすべりやすくなる。

 東海地方の地下では、銭洲海嶺の影響で高間隙水圧帯ができ、そのため、スロースリップを起こす部分の幅が通常よりも広くなり、スロースリップの規模が大きくなっていることが分かった。

 房総半島沖: 房総半島東部から東方沖にかけての地域では、地表にある北アメリカプレートの下で、太平洋プレートがさらにフィリピン海プレートの下に沈みこんでいる。太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界面では、1983年、1990年、1996年、2002年、2007年、2011年の計6回、スロースリップが発生した(観測によるものと、事後解析によるものがある)。2011年のスロースリップは観測開始以来最短の間隔で発生したが、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響を受けた可能性が指摘されている。(Wikipedia)

 大地震の前兆か?
 スロースリップはゆっくりとした地震のこと。通常の地震は急激に地殻変動を起こすのに対し、地殻変動がゆっくりで、ほとんんどゆれを感じることがない。今回のようにGPSを使ってわかる程度である。さてこのスロースリップが、実際の大地震の引き金になるかがどうかが気になるところだが、これには2つの見解がある。

 1つは、スロースリップにより震源域にかかる歪みが大きくなるので、大地震のきっかけとなる考え。防災科研のプレス発表資料発表資料には、「発生が固着域(アスペリティに)歪みをさらに蓄積すると予想されるため」と、まるで、スロースリップが巨大地震を誘発するかの様な説明になっている。

 また、日本地震情報研究会の地震情報日誌(2004/4/20)では、東海地震予知を担う、政府の地震防災対策強化地域判定会会長が、” ひずみという地震のエネルギーが解放されるのだからいいのでは、と考える人がいますが、実は全く逆なのです。浜名湖周辺で解放された分、その東の想定震源域にかかるひずみが大きくなってしまう。”

 ”スロースリップが止まってくれれば、まだここまで心配しない。だが、スロースリップが止まらないのです。2000年後半に始まってから、もう4年目に入りました。ーーーそろそろ止まってもいいのでは、と研究者は考えているのですが、止まらない。東海は明らかに異常な状況です。スロースリップで解放されたひずみも相当な量となっているはずなのに、どんどん突き進んでいる。”と書いている。

 大地震の解消か?
 もう1つの見解は、プレートにかかっているエネルギーが分散されるので、大地震を防ぐという考え。ただしこの場合は、近くの固着域(アスペリティ)にたまったエネルギーが、小地震や群発地震で分散される必要がある。

 プレートは、常時、マントルにより動かされている。スロースリップが起きないと言うことは、その分のストレスが、プレート間に蓄積されるということ。それが解放される時、巨大なエネルギーが放出されるしくみだ。

 「固着域の歪みが増える」は正しいですが、それにより、プレート間の歪みの総エネルギーは増えない。東南海の3連動、4連動地震を警戒するのは正しく、警戒すべきは、プレート間に蓄積された「総」歪みエネルギーである。

 スロースリップは、総歪みエネルギーを減らすことに大きく貢献している。スロースリップが、微小な固着域の滑りを誘発し、微小な群発地震が誘発される。群発地震に依り、さらに、総歪みエネルギーが減ると考える。スロースリップが起きることは、とても喜ばしいこと。(toshi_tomieのブログより) 

参考HP toshi_tomieのブログ 房総沖のスロースリップ地殻の歪みをを解消するので喜ぶべき現象
Wikipedia スロースリップ・ゆっくり滑り・ゆっくり地震 

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