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 北極上空にオゾンホール 
 気象庁は今年の南極上空のオゾンホールの最大面積が、9月12日の2550万平方キロメートルだったと発表した。これは過去10年間の平均値程度。オゾン層を破壊するフロンなどの物質は少しずつ減っているものの、30年前の8倍程度の水準だ。オゾンホールは毎年8~9月ごろに発達し、11~12月ごろに縮小する。(asahi.com 2011年11月2日)

 北極の上空で今春、南極のオゾンホールに匹敵する深刻なオゾン層の破壊が起きたことが、日米など9カ国の国際研究チームの調査でわかった。観測史上で初めて。北半球は緯度が高い地域にも人口が多く、本来はオゾン層で遮られる生物に有害な紫外線の増加が懸念される。英科学誌ネイチャー(電子版)に10月2日付で論文が掲載される。

 研究チームは、測定機器を積んだ気球や人工衛星を使って観測した。その結果、北極圏の成層圏で4月上旬、もともとあったオゾンのうち最大で80%が失われた。南極ほど濃度は薄くなっていないが、北極はもとの濃度が高いため、破壊された量は南極のオゾンホールに匹敵した。

OzoneHole

 気象条件の違いから、北極は南極のような大規模なオゾンホールはできないと考えられていたが、研究に加わった国立環境研究所の中島英彰室長は「南極で観測されていたオゾンホールが、北極にも出現したといえる」と話す。

 影響で3~4月にスカンディナビア半島やロシア北部で成層圏中のオゾンの濃度が低くなった領域が広がり、人の居住する地域でも有害な紫外線が増加したとみられる。オゾンが薄い領域は4月下旬、「かけら」のようにちぎれて日本の本州付近上空も通過した。(asahi.com 2011年10月3日)

 原因は北極上空の気温低下
 1984~85年にかけて、日英の科学者により南極上空の成層圏にオゾンホールが発見されて以降、モントリオール議定書に始まる国際的な取り組みにより、フロン等の生産・排出が規制されてきました。そのため、オゾンを破壊する元となる大気中の活性塩素の総量は、2000年前後をピークに減少に転じたことが報告されている。ただし、南極オゾンホールに関しては、まだ統計的に明らかなレベルで回復に転じたという報告はない。

 一方北極域の成層圏に関しては、海陸分布の違いから南極に比べて冬季でも10度くらい気温が高いおかげで、南極ほど顕著なオゾン破壊がこれまで起きてきませんでした。それでも、1996年、1997年、2000年、2005年など北極上空の成層圏が低温で推移した年には、南極オゾンホールと比べると小規模ながら、北極上空でもオゾンホール的な状況が現れていました。それが今冬、南極オゾンホールと匹敵する規模のオゾン破壊が北極上空で起こっていたことが、観測史上初めて明らかとなりました。

 2011年3月~4月に観測史上初めて起こった北極オゾンホールにより、低オゾン領域がスカンジナビア半島やロシアの北部など、南極に比べて人口密度の高い領域に差しかかり、生物に有害な紫外線量が通常より増加したことが分かっている。また4月後半に極渦が崩壊した際には、低オゾン領域のかけらが日本上空にまで到達し、4月30日にはつくばで通常の年よりも高い紫外線量も観測されている。

 皮膚ガンや白内障の可能性
 最近の傾向を見ると、北極上空の成層圏の気温は暖かい年と寒い年が入れ替わりにやってきており、さらにその振幅が1970年代に比べ増大してきているという報告がある。

 また、その寒い年の冬季の気温が、近年になるにつれてより低くなってきているような傾向も見られる。モントリオール議定書による規制によっても、成層圏の塩素量がオゾンホールを引き起こさないレベルまで減少するにはあと数十年かかると予測されていて、今後2011年と同等、あるいはそれより激しい北極オゾンホールが起こる危険性を、現時点では排除することができない。

 もしそのようなオゾンホールが起こった場合には、有害紫外線による皮膚がんや白内障といった健康への影響が懸念される。冬季成層圏の気温と極渦の強さは、大気の放射過程と波動活動に依存しており、これらは最近の温室効果ガスの増加による影響を受けている。

 ところが、最新の化学気候モデルをもってしても、将来の北極上空成層圏の気温や極渦の強さの年々変動や傾向を予測するのは困難である。少なくとも、成層圏塩素量が高いレベルにあるあと数十年間は、我々は南極オゾンホールに加えて今後は北極オゾンホールの状況の監視を続け、オゾン破壊の将来予測の不確実性を改善する努力を続けるべきである。

参考HP Wikipedia オゾンホール 気象庁 オゾンホール年間推移
国立環境研究所 北極上空のオゾンホール・南極オゾンホールに匹敵する規模に

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