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 太陽電池のしくみ
 太陽電池はどうして光を電流に変えることができるのだろう? 

 太陽電池(Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器である。一般的な電池のように電力を蓄える化学電池ではなく、光を即時に電力に変換して出力する発電機である。タイプとしては、シリコン太陽電池の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。

 光起電力効果は光で電気を起こす仕組みであり、半導体のpn接合など、整流作用を持つ半導体の界面で発生するものがよく利用される。 1954年、ベル研究所のダリル・シャピン(Daryl Chapin)、カルビン・フラー(Calvin Fuller)、ゲラルド・ピアーソン(Gerald Pearson)によって世界で初めて、pn接合を用いた太陽電池が発表された。変換効率は6%であった。これが現在の太陽電池の原型となった。

Sharp_Solar_cell

 pn接合(pn junction)とは、半導体中でp型の領域とn型の領域が接している部分を言う。整流性、エレクトロルミネセンス、光起電力効果などの現象を示すほか、接合部には電子や正孔の不足する空乏層が発生する。これらの性質がダイオードやトランジスタを始めとする各種の半導体素子で様々な形で応用されている。またショットキー接合の示す整流性も、pn接合と原理的に良く似る。

 太陽電池の重要な性能の一つに、光のエネルギーを電気エネルギーに変換する「変換効率」がある。現在、導入されている太陽電池の約86%を占めるシリコン結晶の太陽電池では、最高25%程度の変換効率を有している。

 世界最高の変換効率36.9%達成
 今回、シャープ株式会社と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、36.9%という世界最高の変換効率を持つ太陽電池を開発した。

 この太陽電池は、光を吸収する層を3層積み重ねることで高いエネルギー変換効率を可能にするタイプ。「化合物3接合型太陽電池」と呼ばれ、シャープが2000年から開発を進めている。

 シリコンの支持基板上にインジウム・ガリウム・ヒ素層、ガリウム・ヒ素層、インジウム・ガリウム・リン層を重ねた構造をしており、2009年に35.8%という変換効率を実現している。今回、各太陽電池層を直列につなぐ接合部の抵抗を低減させることで、さらに効率を向上させることに成功した。

 今回の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「革新的太陽光発電技術研究開発」の一環として得られた。このプロジェクトは、変換効率40%以上で、発電コストが1キロワット時当たり7円という汎用電力料金並みの太陽電池を、2050年までに実用化することを目指している。

 プロジェクト目標である40%超の変換効率達成のため、今後、更なる効率向上を進めるとともに、実用化へ向けたコスト低減などの技術開発を進めていく。集光型太陽電池を始め、狭い面積でも十分な発電量が得られる太陽電池としての実用化へ向け開発を進めていく予定だ。(サイエンスポータル 2011年11月7日)

 伸びしろが少ないSi結晶
 しかし、これまで出荷した太陽電池の86%を占める、Si結晶太陽電池では、すでにセル変換効率が最大25%に達しており、この値は限界に近づいている。2025年でも30%に到達できるかどうかは分からない。

 また、これ以外のSi薄膜太陽電池では、変換効率の向上よりも材料コスト、製造コストの低減を目指した研究が続いている。バンドギャップが異なる複数のSi層を成膜することで、1層の場合より数ポイント変換効率を高められるが、それでも20%以上の実現は難しい。

 色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池はSi結晶太陽電池とは異なり、バンドギャップの値を変えやすい。低温での製造が可能であることから、製造コストを引き下げやすい。軽量な太陽電池を製造できることから、ビル壁面などSi結晶太陽電池では敷設が難しい空きスペースを有効に活用できるなどの特長がある。だが、変換効率では、Si薄膜太陽電池にも及ばない。

 現在量産中の太陽電池では変換効率40%を狙えない。比較的量産が近い他方式の太陽電池でも難しい。それではどのような太陽電池であれば、40%を狙えるのだろうか。

 40%を実現する手法とは
 そのような太陽電池技術の候補は、5種類ある。モノリシック構造多接合、メカニカルスタック、量子ナノ構造膜多接合、量子ドット増感型タンデム、中間バンド構造である。いずれも1cm角程度の小規模なセルを用いた研究段階にあり、最も量産が早いと考えられているモノリシック構造多接合でも2020年ごろまで待たなくてはならない。

 モノリシック構造多接合は、III-V族半導体を用いたバンドギャップが異なる複数の層を垂直方向に接合することで変換効率を高める技術だ。

 シャープは2010年5月に42.1%という高い変換効率をモノリシック構造多接合セルの一種である「化合物3接合型太陽電池」で達成した。変換効率の値は自社測定であるものの、これまで発表された値の中で最も高い変換効率であると主張する。

 42.1%という変換効率は、レンズを用いて太陽光を230倍に集光した際の測定値である。集光しない場合は35.8%(産業技術総合研究所が測定)だったという。2014年度の目標は集光時に45%を達成することだ。

 シャープの太陽電池セルは、光が入射する方向の順にまず、バンドギャップが1.88eVであるInGaP(インジウムガリウムリン)、次に1.42eVであるGaAs(ガリウムヒ素)、そして0.88eVであるInGaAs(インジウムガリウムヒ素)を垂直方向に並べた。入射方向から順に波長が短い光を効率的に吸収できる。

 シャープの手法ではSiと格子定数が近いInGaPとGaAsを順にエピタキシャル成長し、格子定数の大きなInGaAsとの間にバッファー層を設けている。従って大面積のセルを製造することは難しい。試作したセルの面積は0.88cm2である。

 なお3接合の場合、非集光時の変換効率の理論上限は39%である。このため、集光装置を使わずに40%以上の変換効率を実現するには4接合以上の太陽電池セルを開発する必要がある。

 中間バンド構造なら60%を超える可能性
 多接合を究極まで押し進めたのが、中間バンド構造太陽電池だ。量子ドットや超格子構造などを用いて中間バンド構造を実現すれば、太陽光に含まれる全波長の光を有効利用できる。

 例えば半導体からなる量子ドットを3次元状に規則的に多数並べることができれば、量子ドット間の結合によって材料が備える本来のバンドとは異なるエネルギー準位に中間バンドを形成できる。

 産業技術総合研究所は2010年8月に開催された第6回「産業技術総合研究所 太陽光研究センター 成果報告会」において、InGaAs/GaAs量子ドットを100層以上積層したと発表した。「今回の成果は歪み補償技術を用いずに100層以上積層した他、中間バンドの形成を確認したこと、太陽電池として機能することを確認したことである」(産業技術総合研究所光技術研究部門光電子制御デバイスグループで主任研究員を務める菅谷武芳氏)。

 同様の手法を採る東京大学の研究では格子定数の小さなGaNAs(窒化ガリウムヒ素)をバリア層中で歪み補償層として用いている。今回の成果では、As2分子線や成長中断法を用いることで、性能を低下させる異種材料を使わずに積層できたという。量子ドット間の距離が3.5nmのとき、中間バンドを確認できた。太陽電池として動作させた場合の変換効率は9.2%(10層)、8%(20層)、7%(30層)だった。量子ドット間の距離が35nmの場合に最も変換効率が高くなったという。(EE Times Japan 2010年10月17日)

参考HP Wikipedia 太陽電池 SHARP 太陽電池セルで世界最高変換効率36.9%達成
EE Times Japan 太陽電池の未来、変換効率はどこまで高まるか 

入門ビジュアル・テクノロジー よくわかる太陽電池 (入門ビジュアル・テクノロジー)
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日本実業出版社
量子ドット太陽電池―「変換効率50%以上」を目指す、革新的太陽電池技術
クリエーター情報なし
工業調査会

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