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肉食女子、がんリスク1.5倍?
肉類を食べる量が多いと、結腸がんになるリスクが約1.5倍高いことが、国立がん研究センターの研究班の調査でわかった。大阪や岩手、茨城、秋田、新潟、長野、高知、長崎、沖縄など9府県の45~74歳の男女約8万人を10年以上追跡した。欧米より肉を食べる量が少ない日本では、これまで結腸がんと肉食の因果関係が不明だった。
研究班は、調査追跡期間中に結腸・直腸がんになった男性714人、女性431人について肉類を食べる量で5グループにわけ、がんの発生率を比べた。
すると、男性は、ハムやソーセージも含めた肉類全体の摂取量が1日約130グラムのグループは、20グラムのグループの約1.4倍、結腸がんのリスクが高かった。女性は、牛肉や豚肉を1日約90グラム食べるグループは、約10グラムのグループの約1.5倍、結腸がんリスクが高かった。(asahi.com 2011年11月28日)
確かに肉ばかり食べ、野菜を食べないと体によくないことは知っている。だが、肉を多く食べると健康によくないのだろうか?私たちの細胞はたんぱく質でできている。肉は大切なタンパク源。食べないわけにはいかないと思うのだが?
腸内細菌がつくる発ガン性物質
医学博士の森下敬一氏は次のように述べている。発ガンの原因となる食品の代表は肉である。卵・牛乳などの動物性食品も同じである。 これらの食品で発ガンするメカニズムについては、腸内細菌の研究により理論的に解明されているが、ここ4世紀半のわが国の死亡原因の統計資料によっても明白である。
わが国のガンによる死亡原因の中でもっとも多いのは胃ガンで、ついで肺ガン、肝臓ガンであるが、欧米諸国においては大腸ガンや乳ガンなどが多い。ところが、わが国においても、大腸ガンや乳ガン、子宮ガンが急増しており、食生活の洋風化、すなわち肉・卵・牛乳・乳製品の摂取量の増加との相関関係がはっきり認められている。
肉や卵、牛乳、乳製品などの動物性食品を摂るとなぜガンが増えるのか。肉そのものは、もちろん発ガン物質ではない。ただし、汚染されている肉の場合は別だ。肉が原因になるのは、腸内で腐敗するからである。 肉に含まれているタンパク質、脂肪、コレステロールが、腸内細菌によって発ガン物質または発ガンをうながす物質(助発ガン物質)をつくるのである。
私たちが食べた肉はアミノ酸に分解されるが、その一部は腸内細菌によって有害物質のアミンになる。このアミンが、胃や腸で亜硝酸と一緒になると、ニトロソアミンが作られる。ニトロソアミンは、強い発ガン性のある物質である。 亜硝酸は、野菜や飲料水にたくさん含まれている硝酸塩から、消火器内の細菌によって簡単につくられる物質なのだ。
肉や魚の加工食品の発色剤としても使われている。そのうえ、唾液にも含まれているし、腸粘膜からも分泌される。 とにかく、どこにでもあるシロモノなのだ。 しかもニトロアミンができるのに、胃はもっとも具合のよい場所ときているから、胃ガンの発生率が高くなる。 また、動物性たんぱく質に多く含まれているリジンやアルギニン、動物性脂肪に含まれるレシチンやコリンは二級アミンのもとになる。
したがって、肉を食べると、細菌の多い大腸では二級アミンの量が増加し、これに亜硝酸塩が加わって、ニトロソアミンができることがわかった。 つまり、「肉→腸内細菌→ニトロソアミン=ガン」という図式が成り立つのである。
アクリルアミド、農薬、添加物など
一方、食品を調理する過程で、発ガン性物質が発生する場合もある。食品中の遺伝毒性発がん物質として最も注目されているものは、魚肉類の焼き焦げに含まれるヘテロサイクリックアミン類(HCA)と、最近発見され、ジャガイモなどアスパラギンと炭水化物を多く含む食品をフライなど高温で加熱調理した場合に生成されるアクリルアミド(ACR)である。
HCAの場合、発がん性を示すものはPhIP、IQ、MeIQx、Trp-P-1、Glu-P-1など10種類程見いだされており、ラットやマウスの肝臓、乳腺、大腸、前立腺、肺などに発がん標的性がある。ヒトが日常的に食べている量は0.4~16μg/日で微量とはいえ、ヒト発がん要因である可能性が高いと判断されている。ACRはラットの乳腺、甲状腺や子宮などに対し発がん標的性がある。ヒトが日常的に食べている量はノルウェー男性で38μg/日、女性で29μg/日といわれ、この量のACRを70年間毎日摂取した場合、1万人中6人が、ACRに起因するがんにかかるという統計学的データも発表されている。
これらはいずれも加熱調理過程で食品中の成分が反応して生成するため、完全に避けることは困難であるが、必要以上に長時間、高温で加熱しないなど家庭での調理方法の工夫等で軽減させることは可能である。
一方、現在使用が認められている農薬、添加物、動物用医薬品等の中には発がん性を示すものが散見されるが、これらは
いずれも非遺伝毒性発がん物質であり、細胞を傷つけることなどに基づく二次的な発がんであるため、発がんに至るには
高用量かつ長期間の投与が必要であり、閾値の設定が可能である。このような非遺伝毒性発がん物質に関しては、評価に
基づき使用基準・残留基準などが設定され、十分に管理されているため、ヒトに対する安全性は担保されている。
食品添加物や農薬等の安全性に対し関心を向けることはもちろん必要であるが、さらに食品の調理過程において遺伝毒
性発がん物質が発生するという事実にも関心を向け、出来る限り発生を避けるような調理法を自ら行うように心がけ、発がん
のリスクを減らすよう努力すべきではなかろうか。
参考HP 菜食のススメ 内閣府食品安全委員会 食品中に存在する発ガン物質について
知っておきたい有害物質の疑問100 防水加工剤でコレステロール値が悪化? ピーナッツのかびに発ガン作用? (サイエンス・アイ新書) | |
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