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 死海の堆積物コアでわかったこと
 死海の堆積物コアを調査したところ、死海はかつて完全に干上がっていた可能性のあることが明らかになったという。この発見は、死海が再び消滅するのではないかとの懸念を呼んでいる。

 死海は、アラビア半島北西部に位置する塩湖。西側にイスラエル、東側をヨルダンに接する。湖面の海抜はマイナス418mと、地表で最も低い場所である。

 死海の水源は唯一ヨルダン川である。年間降水量は50mmから100mmと極端に少なく、気温は夏が32°Cから39°C、冬でも20°Cから23°Cと非常に高いため、湖水の蒸発が水分供給を上回る状態で、高い塩分濃度が生まれた。

Dead-sea

 海水の塩分濃度が約3%であるのに対し、死海の湖水は約30%の濃度を有する。1リットルあたりの塩分量は230gから270gで、湖底では428gである。この濃い塩分濃度のため、湖水の比重が大きくなり、結果、浮力も大きいので、人が死海に入って沈むことは極めて困難である。

 今回調査された堆積物コアからは、聖書の記述を裏付けるとも解釈できる干ばつと地震の記録も見つかった。「過去の気候をこれほど見事に記録しているところはない」とイスラエル、テルアビブ大学のミネルヴァ死海研究センターを率いる地球物理学者のズビ・ベン・アブラハム(Zvi Ben-Avraham)氏は話す。

 コロンビア大学ラモント・ドハティー地球研究所に所属する地質学者のスティーブン・ゴールドスタイン(Steven Goldstein)氏によると、2010年に採取した堆積物コアは、年輪のように1年の経過をはっきりと示す層をなしていたという。

 コアの白い層は夏の乾期にあたり、この時期には湖の水が徐々に蒸発して炭酸カルシウムが湖底に沈殿したことを示している。黒っぽい層は冬の荒天がもたらした泥とシルトだ。「これらの層から、季節ごとに気候を再構築できる」とゴールドスタイン氏は話す。

 聖書の地震活動を発見!
 研究チームはまた、死海の堆積層に“乱れた”箇所を発見した。ゴールドスタイン氏によると、通常は規則正しく並んでいる層が大きな地震によってかき混ぜられたものだという。

 「現時点でわかっているのは、地震の発生を示す堆積物がコア全体に多数存在するということだ」とゴールドスタイン氏は述べている。コアの年代は約20万年前にまでさかのぼる。

 テルアビブ大学のベン・アブラハム氏によると、これは重要な発見だという。地震に関しては、中東はここ100年ほど常になく穏やかな状態を保っていたからだ。

 遠い過去には、地震活動の活発な時期があったことがコアの試料から明らかになっており、約4000年前がそうした時期の1つにあたると推定されるという。

 「聖書の年代学が正しいと仮定すると、これは大体ソドムとゴモラ(の時代)に該当する」とベン・アブラハム氏は述べている。すなわち、神が「天から火と硫黄を降らせてすべてを滅ぼした」と聖書の創世記に記されている時期だ。

 聖書の内容を反映して1世紀に書かれた歴史書『ユダヤ古代誌』にも、死海に接するユダヤの地で地震が発生したとの記述がある。

 そのほか、堆積物コアからは塩の層も見つかっている。コロンビア大学のゴールドスタイン氏によると、これらの層は、気候が乾いて死海の水が蒸発し、面積が小さくなった時期を示すという。

 聖書の時代にもこのようなことが何度か起こっており、降水量の少ない時期と多い時期が繰り返されたとゴールドスタイン氏は指摘する。

 過去に干上がった死海
 それよりはるか以前には、さらにひどい干ばつが起こっており、塩の堆積が最大45メートルの厚さに達するところもあると研究チームは述べている。

 ゴールドスタイン氏によると、約12万年前に起こった最もひどい干ばつの時期には、現在の死海の岸に堆積しているのと似た小石の層さえ見つかっているという。これは当時、湖底全体が乾いていたことを示唆するもので、さらには今後、同じことが再び起こる可能性も考えられる。

 現在、灌漑や飲料水への利用のために死海への水の流入が妨げられていることは、死海の将来に懸念材料をもたらしていると、今回の研究チームの一員でミネソタ大学の湖沼研究者である伊藤エミ氏は話す。

 伊藤氏によると、従来の研究モデルでは、死海が劇的に縮小することはあっても、完全に消えることはないとの予測が示されていたという。

 しかし今回、人間の水利用がなくとも一度は完全に干上がったことを示す証拠が見つかったことから、「従来のモデルはすべて再考する必要があるかもしれない」と伊藤氏は述べている。

 テルアビブ大学のベン・アブラハム氏も「今回の掘削調査で得られた結果は、現在の中東の状態が(地質記録が示す)厳しい乾期に似ていることを示している」と述べている。

 今回の研究成果は、サンフランシスコで開催中のアメリカ地球物理学連合の会議で発表された。(Richard A. Lovett in San Francisco for National Geographic NewsDecember 9, 2011) 

参考HP Wikipedia 死海 National Geographic news 死海が消える?12万年前の証拠

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