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 死海の底に命の湧水
 死海は、アラビア半島北西部に位置する塩湖。西側にイスラエル、東側をヨルダンに接する。湖面の海抜はマイナス418mと、地表で最も低い場所にある湖だ。東アフリカを分断する大地溝帯が紅海からアカバ湾を通ってトルコに延びる断層のほぼ北端に位置している。

 海水の塩分濃度が約3%であるのに対し、死海の湖水は約30%の濃度を有する。1リットルあたりの塩分量は230gから270gで、湖底では428gである。この濃い塩分濃度のため、生物の生息には不向きな環境であり、魚類の生息は確認されていない。死海という名称の由来もここにある。

 しかし今回、死海で新たに行われた調査から、生物がほとんど生存できないこの塩湖の湖底に淡水が湧き出る数十カ所の巨大なクレーターが存在し、そこに細菌が豊富に生息していることがわかった。

Dead_Sea

 調査チームを率いたドイツ、マックス・プランク研究所の海洋微生物学者ダニー・イオネスク(Danny Ionescu)氏は、2010年にはじめて実施された湧水の潜水探査で、イスラエルとヨルダンの間に広がるこの湖に「命を育む夢のようなホットスポット」が存在することが明らかになったと話す。

 調査チームは、水深30メートルの湖底で直径約10メートル、深さ約13メートルのクレーターを約30カ所発見した。クレーターの表面は新種の細菌で薄く覆われ、場所によっては細菌が驚くほど分厚い層になっていたという。

 湖底の湧出口の存在は、死海の湖面に奇妙なさざ波が立つことから、ずっと以前から推定されていた。

 ダイバーたちは湧出口を特定するため、非常に視界が悪い中を苦労しながら、湖底が突然落ち込む場所を探していった。

 クレーターの「中に頭を突っ込むと、ほとんど何も見えなくなる。調査をするという信念と意思を持って当たる必要がある」。しかし、クレーターの底近くで水が澄んでくると、地下から噴出する水流の眺めに「魅了される」とイオネスク氏は話す。

 死海は本当にほぼ「死の海」
 かつて死海には、最も大きなヨルダン川をはじめ、大小の川から淡水が常に流れ込んでいた。

 死海がある盆地には出口がないため、水は蒸発して減るだけだった。淡水は蒸発するが、水に溶け込んでいる塩分を含むミネラルは水中に残る。長年にわたるこのプロセスの結果、死海の塩分濃度は海水よりもはるかに高くなった。

 塩分濃度が高すぎるため、死海では魚やカエルなど大型の生物は生存できない。そればかりか、マグネシウム濃度の高さから、この湖では微生物が見つかることも稀だ。

 1950年代にヨルダンが飲料水を得るためヨルダン川の水を利用するようになり、死海に流れ込む水量が減った。その結果、もともと世界で最も低い場所にあるこの湖の湖面は、過去40年間で25メートル以上も低下した。

 近年、死海の水域で生物学者による調査が行われたのは、1980年と1992年に湖面の色が変わるほど藻が大発生したときだけだった。

 イオネスク氏によると、このとき湖面を変色させたのは、今回湖底で発見されたものとは別の生物だったという。

 ニュージャージー州にあるライダー大学の環境微生物学者ケリー・ビドル(Kelly Bidle)氏は、「生物学的に言って、今回の調査は死海に対する私たちの見方を(全体に)大きく変えるものだ」と話す。

 それは、「これまで存在しないと考えてきた場所にこのように多様な生物が存在することを知る」のがとても刺激的だからだとビドル氏は言う。ビドル氏は、塩分濃度の高い環境に生息する細菌を研究している。

 死海の苛酷な環境に生きる細菌
 イオネスク氏は、クレーターから採取したサンプルの予備的な分析から、湧水口の細菌コロニーは非常に多様であると思われ、普通の海中の岩で見られるものに似ていると話す。

 湧出口の岩の表面は緑のバイオフィルム(菌膜)に覆われている。バイオフィルムは、太陽の光と、湧水から自然に発生する化学物質である硫化物の両方を利用して自らの生命活動を維持している。硫化物だけを食べる細菌は、岩の裏側を覆う白いバイオフィルムとなっている。

 これらの細菌はこうした苛酷な環境で進化してきただけでなく、塩分濃度の突然の変動にも何らかの方法で対応できるのではないかと、イオネスク氏は推測する。噴出口付近の水の流れが変われば、塩分濃度は自然に変化してしまう。

 ビドル氏は、「身体の仕組みが高濃度の塩分に対応するようできている(とすれば)、極端に高い塩分濃度からほとんど淡水に近い水への変化に生物学的に対応できるということは非常に想像しにくい」と疑問を呈する。

 しかしそれでも、その発想を全面的に否定はしない。「極端な環境に生息する微生物については、何があっても驚くことはない」。(Christine Dell'Amore for National Geographic News September 29, 2011)

 極限環境微生物
 今回、死海で発見された細菌のような生物を極限環境微生物という。極限環境条件で増殖できる微生物のことで、こんな環境で生物は住めないだろうという場所でも、生育できる生物がいる。

 例えば、高温(122℃)、高pH(pH12.5)、低pH(pH-0.06)、高NaCl濃度、有機溶媒、高圧力(1100気圧)、高放射線(16000Gyのガンマ線照射)などの条件で生きる微生物が発見されている。

 最近、深海にある熱水噴出孔で、深海の高圧、高温に耐える微生物が発見されている。噴出する熱水は、豊かな鉱物資源を溶解しており、有機物合成をするバクテリア(細菌)の大量増殖が可能である。これらのバクテリアは各種硫化物から有機物を合成するという。

 また、熱水噴出孔周辺のバクテリアの大部分に金属耐性があり、嫌気的に金属を還元する「嫌気性金属呼吸(テルル酸呼吸)」ができるという。この例としては、鉄細菌が知られている。
 
 2010年12月、米航空宇宙局(NASA)などの研究チームは、猛毒「ヒ素」を食べる細菌を発見した。生物が生命を維持して増えるために、炭素や水素、窒素、酸素、リン、硫黄の「6元素」が欠かせないが、この細菌はリンの代わりにヒ素をDNAの中に取り込んでいた。これまでの「生物学の常識」を覆す発見であった。

参考HP Wikipedia 死海 National Geographic news 死海の底で新種の微生物を発見

極限環境微生物とその利用
クリエーター情報なし
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エステ業務用、浴用化粧品(入浴剤)「死海の塩」大容量2kg『ラグゼ デッドシーバスソルト』
クリエーター情報なし
レシエル

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