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 ブラジル政府アマゾンの巨大ダムを承認
 2011年6月1日、ブラジル当局は、北部パラ(Para)州のアマゾン(Amazon)熱帯雨林に建設する世界3位の規模の巨大水力発電ダムの着工を承認した。

 アマゾン川支流のシングー(Xingu)川に建設が予定されているベロモンテ(Belo Monte)水力発電ダムは、総工費110億ドル(約8900億円)、発電量はブラジルの現在の電力供給量の11%に相当する1万1200メガワットとされる。

 しかし、ダムが完成すれば熱帯雨林516平方キロが水没し、1万6000人が立ち退きを余儀なくされることから、地元先住民や環境団体、同国のカトリック教会は建設に強く反対している。

Rio Xingu

 一方、建設を受注した企業連合ノルテ・エネルギア(Norte Energia)は、ベロモンテダムによって1万8000人分の直接雇用が生まれ、間接雇用や被雇用者の家族も含めれば9万6000人の生活を支えると強調した。(2011年6月2日 AFP)

 アマゾン巨大ダム計画、連邦裁が中止命令
 2011年9月29日、ブラジルの連邦裁判所は、アマゾン川流域に計画されている総工費110億ドル(約8400億円)規模の巨大ダムの建設計画の中止を命じた。

 パラ(Para)州に計画されているベロモンテ(Belo Monte)水力発電ダムは、流域に暮らす先住民たちが生業としている漁業を破壊するとして、同州のカルロス・エドゥアルド・カストロ・マルティンス(Carlos Eduardo Castro Martins)連邦判事は建設を受注した企業連合ノルテ・エネルギア(Norte Energia)に対し、「港の建設、爆発物の使用、堤防や水路の設置、その他、アマゾン川支流のシングー川(Xingu River)の自然な流れを妨げ、それによって地域の魚類に悪影響を及ぼすインフラ設備をいっさい」禁じた。

 ブラジルは、急速な成長を遂げている経済が必要としているエネルギーの国内生産量を増やそうとしている。完成すれば世界第3位の大きさとなるベロモンテ・ダムは、エネルギー増産計画の主要な一端とみなされている。(2011年09月29日 AFP)

 二転三転、ダム建設再開
 2011年9月、ブラジルの連邦裁判所はベロモンテダムの建設中止を命令したが、11月には撤回。先住民との協議を実施しなくても、建設再開が可能になった。しかし報道によれば、工事は労働争議により遅れ気味だという。

 ブラジル政府は、アマゾン川の主要な支流シングー川に世界3位の水力発電ダムを建設する計画だ。最大出力1万1000メガワットの電力は、サンパウロを中心とする大都市圏の生活レベル向上と、成長著しい産業の巨大な電力需要を賄う目的で利用される。

 ブラジル政府は、今後20年間でアマゾン川流域に60基以上の大規模ダムを建設する計画だ。非営利の環境・人権保護団体「インターナショナル・リバーズ」によれば、ベロモンテをきっかけに一帯でダム建設が進み、深刻な環境破壊につながる可能性が指摘されているという。

 総工費170億ドル(約1兆3000億円)のベロモンテ(Belo Monte)ダムにより、住民2万人以上が立ち退きを強いられ、カヤポ族をはじめとする先住民が独自に育んできた文化が脅かされるとの批判も出ている。食料、水、移動手段をシングー川とその支流に依存する先住民にとって、生存権に直結する大工事だ。

 一方、官民の電力会社、建設会社が構成する企業連合ノルテ・エネルギアは、「間接的な影響は生じるが、住民に立ち退きを迫る予定はない」と断言する。

 「水没する範囲を減らすため、貯水池を設けない構造にした」と説明する(初期の調査では、水没面積は推定16万ヘクタール)。「アマゾン川流域での水力発電所の利用に関し、30年以上にわたって調査を続けてきた。ベロモンテは現地の生物群を保存し、尊重できるよう、きめ細かく設計されている」。

 先住民への影響、アマゾンのダム計画           
 写真家のクリスティーナ・ミッターマイヤー氏は、1990年代からアマゾン川流域に通い続けている。カヤポ族の村を小型機で年に2度ほど訪れ、文化やシングー川との結び付きを記録するという。カヤポ族にとって川との触れ合いが日常の一部である。

 「赤ん坊が生まれるとすぐ川に連れて行く」とミッターマイヤー氏は話す。「一日中、川で遊ぶ子どもの姿が見られる。彼らは小さいころから泳ぎがとても得意だ」。

 カヤポ族にとって、ダムの脅威は今に始まったことではない。シングー川のダム建設計画は以前にもあったが、1990年代には国内外からの抗議を受けて断念。カヤポ族が主導した反対行動もあった。しかし今回のベロモンテは、期待するほどの発電量は見込めないという批判もむなしく、計画が実行されるだろう。ブラジル政府が態度を変える様子はなく、反対されても工事は進めると関係者は話している。旺盛な発展を遂げるブラジルの電力需要を賄うにはダムが不可欠というのが政府の言い分だ。

 外部からの影響をほぼ免れてきたカヤポ族だが、これまでも土地に侵入する牧畜業者や伐木業者、金鉱採掘者に怯える日々を過ごしてきた。加えてダム建設が進めば、彼らの生命線であるシングー川の流れが変わってしまう可能性がある。既に道路整備が進む周辺には大勢の作業員が入り込んでおり、カヤポ族の特徴的な文化を脅かす要因になるとベロモンテの建設反対派は批判している。

 ダム建設に反対するカヤポ族には、歌手のスティング氏や、映画監督でナショナル ジオグラフィック協会付き探検家のジェームズ・キャメロン氏など、国際的な著名人も支援を表明している。異星生物と人間の衝突を描く映画『アバター』などで知られるキャメロン氏は、熱心な環境保護論者だ。ダム建設で影響を受ける一帯を視察し、先住民たちの苦闘から映画の続編制作に貴重な示唆を見いだしたと語った。 (National Geographic News December 14, 2011)

参考HP National Geographic news 先住民への影響、アマゾンのダム計画

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竹緒

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