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軌道上のISSから見たラブジョイ彗星
「あれが太陽の影に隠れた時には、天文学者たちも、二度と姿は現すまい、たぶん燃え尽きてしまうだろう…と観念したと思いますよ。でもあんな姿が見れるなんてね。想像していませんでした。」ISS(国際宇宙ステーション)のダン・バーバンク司令官が地球の約240マイル(386km)上空でラブジョイ彗星(Comet Lovejoy)を映像で捉えた。
「あんな素晴らしいものは、そうそう見れないと思いますよ。宇宙から見るのは地球から見るのと違って、視界を遮る大気がない、という利点があります。夕べは100枚ぐらい撮ったので、そのうち映像にしたいと考えていますが、とりあえず興味のあるみなさんのために何枚かお届けします。」
バーバンク氏は、ISSがタスマニア島上空を通過しているときに、明るい孤を描くこの彗星の尾を初めて目にした。最初はそれが何なのかわからなかったという。バーバンク船長は後に、「これまで宇宙で見てきた中で最も驚くべきもの」かもしれないと語った。
ラブジョイ彗星とは?
ラブジョイは英語で「Lovejoy」と書く。文字通り、「愛と楽しみ」をもたらしてくれる大彗星になった。これほど大きな彗星は2007年のマックノート彗星以来4年ぶりのことである。この時も、残念ながら南半球でしか観察できなかった。
ラブジョイ彗星(正式名称C/2011 W3)は、オーストラリア、ブリスベン在住のアマチュア天文家、テリー・ラブジョイ氏が11月下旬に発見した。彗星本体は氷と塵の塊で、数百年前に分裂した大型彗星の破片と考えられる「クロイツ群」に属する。
ラブジョイ彗星は米東部標準時で12月15日に太陽に最接近した。天文学者はこのとき彗星は燃え尽きると予想していたが、ラブジョイは最接近を生き延びて数時間後に再び姿を現し、ラブジョイ氏をはじめ、多くの者を驚かせた。
ラブジョイ彗星は太陽表面をかすめた際に尾を失ったが、「点のような姿で再び現れ、太陽から遠ざかるにつれ、また尾を伸ばしはじめた。実に驚くべきことだと思う」と、ラブジョイ氏は「Sydney Morning Herald」紙でコメントしている。
その後、ラブジョイ彗星は南半球から肉眼で姿を捉えられるようになり、クリスマスの週末の間、夜明け前の空に筋を描き続けた。
クロイツ群とは?
多くの彗星の中で軌道要素がよく似たものは「群」としてまとめられ、そのうち太陽をかすめるようにして近日点を通過するグループのひとつを「クロイツ群」と呼ぶ。明るく、しかも長い尾を伸ばす大彗星が多いのが特徴で、1965年の池谷・関彗星(C/1965 S1)などが有名な例だ。
ラヴジョイ彗星(C/2011 W3)は小ぶりであるため、太陽接近時に消滅してしまうと思われていた。しかし予想は嬉しいほうに外れ、近日点を通過しても消滅することはなく、肉眼でも見えるほどの長い尾を引いた大彗星となった。日本で直接見るのは難しいが、南半球では夜明け頃に肉眼でも観察することができる。
チリのパラナル天文台で三日月や天の川と共演するラヴジョイ彗星(画像1枚目)を撮影したGabriel Brammer氏はそのときの様子をこう語っている。「ラヴジョイ彗星は肉眼で簡単に見ることができた。まるで長時間露出した写真を見ているように、肉眼で見ることができたのは本当に驚きだったよ。」
ラヴジョイ彗星はこのまま楕円軌道で太陽系の遠方まで飛んで行き、何もなければ次に地球に戻ってくるのは314年後になると予想されている。(2012年12月26日 NASA/ヨーロッパ南天天文台)
大彗星の3つの条件
ほとんど全ての彗星は、肉眼で見えるほど明るくはならない。そのような彗星は太陽系の内側を通過している間もずっと、天文学者やアマチュア天文家以外の人に見られることはない。しかし時折、肉眼で見えるほど明るくなる彗星があり、さらに稀に、最も明るい恒星と同じかそれ以上に明るくなる彗星がある。彗星がどれだけ明るくなるかは主に3つの要素による。
核の大きさと活動状態: 彗星の核の直径は直径数百mから数km(稀に数十km)まで様々である。太陽に近づいた時には、太陽の熱により彗星の核から多量のガスと塵が放出される。彗星がどこまで明るくなるかに関する非常に重大な要素として、どれぐらい彗星の核が大きく活発かという点がある。何回も太陽系内部に戻ってくると、彗星の核の揮発成分は失われ、その結果、彗星は最初に太陽系内部にやってきた時に比べて非常に暗くなってしまう。
太陽への接近距離: 単純な反射体の明るさは、太陽までの距離の2乗に反比例する。つまり、ある天体の太陽からの距離が2倍になると、明るさは4分の1になる。しかし、彗星は多量の揮発性ガスを放出し、それもまた蛍光を放つため、異なる振る舞いをする。彗星の明るさはおおまかに言って太陽までの距離の3乗に反比例する。これはすなわち、彗星の太陽までの距離が半分になると、明るさは8倍になることを意味する。
これは、彗星の明るさのピークが、太陽までの距離に非常に依存することを意味する。大部分の彗星は、軌道の近日点が地球軌道の外側に位置している。太陽に0.5AU以内まで接近する彗星にはどれでも、大彗星になる可能性があるかもしれない。
地球への接近距離: 彗星が壮大なものになるためには、地球の近くを通過する必要がある。例えばハレー彗星は、76年ごとに太陽系の内側に戻ってくる時には普通は非常に明るくなるが、1986年の回帰の際には、地球に最接近した時の距離が、あり得る中で最も遠かった。彗星は肉眼で見えるようにはなったが、明らかに平凡な彗星として終わった。
大彗星になるかどうかは時の運?
この3つの条件を満たしている彗星は壮大な彗星になる可能性が高いが、時には3つのうち1つの条件を満たしていない彗星が、それにも拘らず極めて印象的な彗星になることがある。例えば、ヘール・ボップ彗星は極めて大きく活動的な核をもっていたが、結局太陽にはあまり接近しなかった。それにも関わらず、非常に有名でよく観測された彗星となった。同様に、百武彗星はやや小さな彗星であったが、地球に非常に接近したために非常に明るい彗星になった。
逆に、この3つの要素を全て満たしていても、大彗星にならないこともある。例えば1974年のコホーテク彗星は、上記の3要素を全て満たしており、発見時にはマイナス等級になるかもしれないと大いに期待されたにも関わらず、最大でも3等級止まりで天文ファンを大いに失望させた。太陽に接近しても核の活動があまり活発化せず思ったほど明るくならない彗星もあれば、太陽に接近した際に核が分裂して急激に明るくなり、思いがけず大彗星になる彗星もある。中には核がバラバラに崩壊してそのまま消滅してしまうものすらある。彗星の光度変化を正確に予想するのはかなり難しく、大彗星になるかどうかはその時になってみないと本当には分からないというのが実情である。
最近地球を訪れた大彗星には、次のようなものがあるが、数は少ない。池谷・関彗星 - (C/1965 S1) - 1965年、 この彗星はクロイツ群の彗星。最大等級は-17等級にまで達した。 ベネット彗星 (C/1969 Y1) - 1970年、3月から4月にかけて明るくなり、明るさは最大で-3等級にも達し、尾の長さも20°ほどになった。ウェスト彗星 - (C/1975 V1) - 1976年、明るさは-1等級になり、幅広く明るい尾の長さが30°に達した。百武彗星 - (C/1996 B2) - 1996年、見かけの明るさは約0等級に達し、尾の長さは75°にもなった。 ヘール・ボップ彗星 - (C/1995 O1) - 1997年、他のどの彗星よりも長い18ヶ月間に渡って肉眼で見えたことで有名。見かけの明るさが-1等級にも達し、尾の長さも 30 - 40°になった。 マックノート彗星- (C/2006 P1) - 2007年、-6等級近くに達した。南半球の夕方の空で見ることができ、数十度に達する大きく曲がった尾が見られた。 (Wikipedia)
参考HP Wikipedia 大彗星 ・ National Geographic news 軌道上のISSより、ラブジョイ彗星
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コメント一覧 (2)
美しい星空と、素晴らしい観測機器をお持ちのようで羨ましい限りです。また、南半球の天体を観測しましたら、教えてください。
みなさんもぜひ、Tanuki様のサイトをごらんになってください。