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 クローンで増える植物とは?
 米国、ハワイ諸島に分布しているコケの一種が、約5万年にもわたり自身をコピーしてきたクローンだと明らかになった。地球上で最も古い多細胞生物の1つの可能性があるという。

 クローンとは、同一の起源を持ち、なおかつ均一な遺伝情報(DNA)を持つ核酸、細胞、個体の集団をいう。もとはギリシア語で植物の小枝の集まりを意味する言葉(κλών)から。1903年、ハーバート・ウェッバーが、栄養生殖によって増殖した個体集団を指す生物学用語として定義した。本来の意味は「挿し木」である。

 「挿し木」といえば、ソメイヨシノは大変美しい桜で、挿し木によって全国に同じDNAの桜を移植して増やしてきた。今では、ソメイヨシノのクローンは、日本の桜の80%を占めるまでになった。

 これには、問題もあり、近年成長したソメイヨシノの幹が空洞化する病気が流行しているという。全国のソメイヨシノが同じDNAなので同じ問題が起きている。このため、現在のソメイヨシノの寿命は70年程度ではないかといわれている。

 全国には名木といわれる桜の木が多く存在する。これら名木はなぜ名木となったのか。それは何百年におよぶ樹齢に対する敬意も多分にあると思う。そして、その桜の木が美しかったから人々に大切にされ、名木となったのだと思う。つまり、古来日本人は桜の木それぞれの個性を尊重してきた。

 たしかに、多くの桜が咲き誇る光景は美しいが、桜の木一本一本の個性にも愛情を注いでいた古来日本人の花見に比べて、現在の花見は雑だと思う。自然に対する敬意が失われてきているような気もする。

 クローンで5万年も繁殖するコケを発見          
 さて、ハワイ諸島に分布している、コケの一種が、同じDNA(遺伝子)を持ち、約5万年にもわたり自身をコピーしてきたクローンだと明らかになった。どんなコケなんだろう?

 このコケ、、北半球各地で見つかるオオミズゴケ(学名:Sphagnum palustre)だが、ハワイでは有性生殖(胞子の形成)を必要とせず、クローン作製のみで繁殖しているという。

 採取したオオミズゴケのサンプルはいずれも珍しい遺伝子マーカーを共有しており、何万年も前に風に運ばれてハワイへとやって来た単一の祖先の子孫と見られる。

 「オオミズゴケは雌雄異株だが今回は一つの性しかなかったため、有性生殖は不可能だろう」と、ニュージャージー州ラマポ大学の植物生態学者で研究論文の共著者エリック・カーリン(Eric Karlin)氏は述べる。

 「単一の祖先にこの珍しい特徴が備わっていたと推測される。多くの祖先が存在した場合、同じ特徴をそれぞれが持っていたとは考えにくい」。

 最古のコケの驚くべき多様性
 化石化したオオミズゴケが、ハワイ島(ビッグ・アイランド)の北部、コハラ山の山頂付近にある2万3900年前の泥炭から発見されている。カーリン氏らはこの化石を根拠に、オオミズゴケが2万3900年以上にわたりハワイで生育していると考えた。

 期間を算出するため、チームはまず島に現存するコケの遺伝的多様性を分析して、突然変異率を特定。この数値を基に、現在の遺伝的多様性にたどり着くまでにかかる時間を計算した結果、約5万年という解答が導かれた。

 遺伝子解析からは驚くべき多様性も明らかになっている。「クローンはDNAを交換する有性生殖を行わないため、遺伝的に単調」という一般的な見方とは大きく異なる。

 「突然変異は常に発生しているので、全く同じコケではない」とカーリン氏は説明する。「長期的に見ると、クローンの子孫がお互い遺伝的には異なる可能性がある。おそらく島には、まだ調査されていない同じ過程を経た種が他にもあるだろう」。

 オオミズゴケが在来種を圧迫
 有性生殖がないため、オオミズゴケはコハラ山の山頂から外に出られなかったと同氏は語る。別の地に拡散するには、有性生殖で形成される胞子を空中に飛ばす必要があるからだ。

 しかし、島民が無意識にオオミズゴケの分布拡大に協力したこともある。20世紀に梱包材として使用されていたため、ハワイ島の各地やオアフ島にまで運ばれたのだ。「オオミズゴケが持ち込まれた地域、特にオアフ島では爆発的に成長した」とカーリン氏は述べる。

 その裏では現地の他の植物が犠牲になっており、同氏も問題視している。「オオミズゴケは、地表の生態系を一変させる。在来植物の多くは土壌が必要であり、コケの固い層ができてしまうと種が落ちても成長できない」。

 この研究は、「New Phytologist」誌オンライン版で2011年12月21日に発表されている。(Ker Than for National Geographic News January 4, 2012)

 それにしても、5万年もDNAが変わらずに生き残る生命力はすばらしい。5万年の間には様々な天変地異や気候変動もあったと思う。それとも、ハワイの気候が5万年間もの間、安定していたのだろうか?

参考HP Wikipeia クローン National Geographic news クローンで5万年も増殖するコケを発見

図解 クローン・テクノロジー
金子 隆一
日文書院
人クローン技術は許されるか
御輿 久美子,西村 浩一,鈴木 良子,福本 英子,北川 れん子,粥川 準二
緑風出版

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