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 “地球の健康” を見守る衛星「しずく」 
 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が地球の水蒸気を測り、気候変動をとらえる水循環変動観測衛星 「GCOM-W1 (しずく) 」 を今夏をめどに打ち上げる。

 また雲やちり、雪氷を観測する気候変動観測衛星「同C1」や、日米協力による全球降水観測衛星 「GPM」 も順次打ち上げ、深刻化する地球の環境変化の観測に、宇宙から “科学の目” で挑む。

 「しずく」 は宇宙から地球の水蒸気や土壌水分などを監視する衛星。 5 年程度の間隔で後継機 2 基を軌道に上げる予定。機体の大きさは 5.1×17.5×3.4 メートルで、重さ約 2 トン。設計寿命 5 年。

 開発費は約 180 億円。高度 700キロメートルの地球周回軌道に上げる。機体の頭頂部にある中華鍋のようなアンテナ(センサー)を使い、海や地表から自然に放射される微弱なマイクロ波を観測する。

 この 「しずく」 と連携する衛星として 14 年度以降、高度 800 キロメートルの軌道に気候変動観測衛星 「GCOM-C1」 を皮切りに、同 C2、同 C3 と計 3 基を打ち上げる。先陣を切る C1 はちりや雲の様子、植物やプランクトンなどの分布を長期間にわたって観測する。

 今回の GCOM プロジェクトは 3 世代、計 6 基の衛星を飛行させる長期ミッション。 10 年から 15 年程度かけて観測システムを築く。(日刊工業新聞 2012年1月13日)  

 地球の健康診断「GCOM」とは?
 GCOM(Global Change Observation Mission)は、地球の水循環と気候変動を観測する、いわば宇宙から地球を健康診断する役割を持つ。大気、海洋、陸、雪氷といった地球全体を長期間(10~15年)観測することによって、水循環や気候変動の監視とそのメカニズムを解明すつことが期待されている。

 昨今、誰もが地球の気候が変化してきたように感じている。暖冬で雪が降らない年があったり、豪雪で生活に支障がでる年があったりする。台風が多い年、少ない年、激しい集中豪雨のために洪水の被害が多い年があるかと思えば、少雨のために水道が断水になる年もある。

 最近報告されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の4次レポートでも、確実に地球温暖化が進んでいることが報告されている。

 気候変動の兆候は、短期間で見ても、短周期の変動に埋もれて把握することは困難であり、長期間継続して観察することが大切。GCOMは、電波の周波数領域で観測する水循環変動観測衛星(GCOM-W)と赤外から可視・近紫外の光の波長領域で観測する気候変動観測衛星(GCOM-C)から構成されており、広い周波数領域で地球をモニタする。また、GCOM-WとGCOM-Cという2種類の衛星を3世代継続して打ち上げることで、10年以上にわたる長期継続観測を実施する計画である。

 GCOMには水循環変動観測衛星(GCOM-W)と気候変動観測衛星(GCOM-C)という2つのシリーズがある。マイクロ波放射計を搭載するGCOM-Wは降水量、水蒸気量、海洋上の風速や水温、陸域の水分量、積雪深度などを観測する。今回のGCOM-W1は、GCOM-Wシリーズの第1期の人工衛星である。(JAXA)

 宇宙で回る世界最大の回転アンテナ「AMSR2」
 GCOM-W1に搭載される高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)は、地表や海面、大気などから自然に放射されるマイクロ波とよばれる電磁波を、7GHzから89GHzまでの6つの周波数帯で観測するセンサ。自然に放射されるマイクロ波の強度は、物の性質や含まれる水分量、表面の状態や温度などで決まり、周波数ごとに異なるのだが、非常に微弱だ。

 AMSR2はこのような微弱なマイクロ波を地上700kmで受信し、そのマイクロ波の強さを非常に高い精度で測定することができる。例えば、AMSR2で海面から放射されるマイクロ波の強度を測定することにより、0.5度の精度で海面水温を知ることができる。

 地上からのマイクロ波を受信するAMSR2のアンテナ部分は、1.5秒間に1回転のペースで地表面を円弧状に走査し、1回の走査で約1,450kmもの幅を観測する。この走査方法によって、AMSR2はわずか2日間で地球上の99%以上の場所を観測することができる。アンテナの直径は衛星搭載用の観測センサとしては世界最大の約2m、回転部分は高さが約2.7mで、重さは約250kgもある。AMSR2は、このような大きくて重いアンテナ部分を、1.5秒間に1回転という速さで、1日24時間、5年以上も休まずに回転し続ける。

 これまで打ち上げられた「地球観測衛星」
 地球観測衛星(earth observation satellite)とは電波、赤外線、可視光を用いて地球を観測する人工衛星。リモートセンシング衛星ともいう。 特に気象観測を目的とする場合は気象衛星という。

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT): 「いぶき」は、環境省、国立環境研究所(NIES)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した温室効果ガス観測技術衛星。地球温暖化の原因とされている二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測する。

 地球観測衛星「Aqua」: 「Aqua (EOS PM-1)」とは、アメリカ (NASA)、日本 (宇宙開発事業団 NASDA)、ブラジル (ブラジル国立宇宙研究所 INPE) の3か国共同による地球観測衛星である。2002年5月4日にデルタIIロケットにより打ち上げられ、高度705km、傾斜角98度、軌道周期98分の太陽同期軌道に投入された。名はラテン語の「水」の意。設計寿命は6年である。雲水量、可降水量、海上風速、海面水温、雪氷、土壌水分量などが観測される。大気・海洋・雪氷・陸上の諸プロダクトを生成する。上層大気の温度プロファイルを観測する。大気温度/湿度、地表面温度などを測定する。水蒸気球放射エネルギーおよび雲の上端を含む大気上層から地表面までの大気放射エネルギーを観測する。 他の衛星とA-trainという衛星コンステレーションを構成し、隊列の先頭に位置する。

 熱帯降雨観測衛星「TRMM」: 降雨は気候変動のメカニズムを解明するために必要な要素である水循環の中心的な役割を担っている。特に熱帯・亜熱帯域は地球全体の降雨の2/3以上を占め、降水現象に伴う大気加熱の効果 により地球全体の大気循環の動力源となっていると考えられている。TRMMはそれらのメカニズムを解明するために、5つの観測機器を搭載して、観測点の少ない熱帯海洋域を含む地球規模での降雨観測を目指している。TRMMの観測により、気候変動研究にとって非常に貴重なデータが蓄積され、気候システムの理解やエルニーニョに関わる異常気象の解明、さらに災害防止のための洪水予報などに貢献すると期待されている。

 小型高機能科学衛星「れいめい」(INDEX): 「れいめい」は、宇宙航空研究開発機構によって打ち上げられた、オーロラ観測と最新衛星技術の実証実験を行う日本の小型技術実証衛星1号機である。2005年(平成17)8月24日午前6時10分(日本時間)にカザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地から、光通信実験衛星きらりとともに、ピギーバック衛星として、ドニエプルロケットにより打ち上げられた。

 オーロラ観測衛星「あけぼの」(EXOS-D): 観測の目的は、オーロラ粒子の加速と関係する磁気圏の現象の研究。オーロラは地球の磁気圏に捉えられた太陽風の中の粒子が、大気中の粒子とぶつかって輝く現象だが、遠いところにある太陽の活動や、地球磁気圏の反応を知る手がかりとなる。「あけぼの」はこうした現象を観測しながら、磁気圏の構造などを理解し、また地球周辺空間を通過してくる太陽からのエネルギーや運動量の流れなどを調査している。

 磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL」: 地球の周辺を取り巻く磁気圏は、太陽からやってくる太陽風に押されてゆがみ、反対側(夜側)に伸びて長大な尻尾の形となる。この「磁気圏の尾部」には太陽から得られたエネルギーが蓄えられ、オーロラや放射線帯のエネルギーのもととなる。尾部の探査は天文物理学や宇宙科学の一環として意義深く、この「地球磁気圏の尾部を探る衛星」は、ジオテイル(GEOTAIL)=地球(GEO)の尻尾(TAIL)、と名付けられた。 

参考 JAXA 人工衛星プロジェクト水環境変動観測衛星しずく

Javaによる地球観測衛星画像処理法
クリエーター情報なし
森北出版
宇宙から見た日本―地球観測衛星の魅力
クリエーター情報なし
東海大学出版会

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