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 初期生命は熱水環境で?
 地球上に最初に現れた生命はどんなものだろう?最近の研究によると、地球の生命はアルカリ性で比較的温度の低い熱水噴出孔で誕生したという考え方が有力になっている。

 海洋研究開発機構の研究者たちが、約70℃の地下温泉水に生息するバクテリアが、既知のバクテリアの中では最も「共通祖先」に近いことを、ゲノム解析で突き止めた。

 現存する生物の中で誕生したばかりの生命に最も近いのは古細菌とバクテリアと言われており、さらに初期生命に近いこれらの「共通祖先」が存在すると考えられている。この「共通祖先」は有機物に乏しい原始地球環境の中で、水素と二酸化炭素(CO2)から、細胞とエネルギーをつくり出す「アセチルCoA(コエ)パスウェイ」と呼ばれる代謝経路を持っていたと推論されている。

Archaebacteria

 髙見英人・海洋・極限環境生物圏領域上席研究員らは、アセトサーマスと呼ばれるバクテリアが、共通祖先が持っていると考えられるこの代謝経路を持ち、さらに古細菌とバクテリアが共通に持つ4つのタンパクと5つの酵素の系統樹から、これまで知られていたバクテリアの中でもっとも「共通祖先」に近いことを明らかにした。さらに、現存するほとんどの古細菌と、共通祖先に近いと考えられるバクテリアだけが持つ糖質合成酵素(FBP)もアセトサーマスが持つことも突き止めた。

 最近の研究によると、古細菌とバクテリアに分かれる前のより原始生命に近い「共通祖先」は、「アセチルCoA(コエ)パスウェイ」という代謝経路を持っていたと考えられている。これまで「共通祖先」に近い古細菌の中に代謝経路「アセチルCoA(コエ)パスウェイ」を持つものは見つかっていたが、「共通祖先」に近いバクテリアの中には見つかっていなかった。(サイエンスポータル 2012年1月18日) 

 初期の生命とは?
 かつては、「地球上に生命が誕生するまでは地球上には有機物は存在しなかったはずなので、最初に生じたのは無機栄養微生物だったはずだ」と考えられていた時代があった。 だが、最初の生命発生以前に有機物が蓄積していたはずだ、と考える人たちが出てきた。 化学進化説は、「無機物から有機物が蓄積され、有機物の反応によって生命が誕生した」とする仮説であり、現在の自然科学ではもっとも広く受け入れられている。化学進化説を最初に唱えたのはソ連の科学者オパーリンである。

 化学進化説に関する考察や実験は、無機物から生命への進化を論じたものであり、1980年代まではそのような流れが支配的であった。1977年、カール・ウーズらによって第3のドメインとして古細菌が提案されると、古細菌を含めた好熱菌や極限環境微生物の研究が進行した。これらの研究から、生命の起源に近いとされる生物群の傾向が明らかになってきた。これにより生物進化から生命の起源を探るというアプローチが可能となった。

 生命誕生以降の生物進化から生命の起源を探る試みは、化学進化とは異なり非常に多くの生命のサンプルを要する。多くのサンプルを用いながら、真正細菌、古細菌、真核生物の系統樹を描くことから、そうした試みが始まったと言える。進化系統樹を描く試みは従来、低分子のタンパク質アミノ酸配列(フェレドキシン、シトクロムcなど)を元にしたものが多かったが、DNAシークエンシング法やPCR法の確立などにより、より大きなデータを取り扱うことが可能になってきた。16S rRNA系統解析によれば、共通祖先に近い原始的な生物は好熱性を示すものが多く見られることが判った。

 現在、古細菌は全生物の共通の祖先からバクテリアと別れた後、その一部が真核生物に分化したと考えられている。しかし、最初の生物がどのようなものであったかを明らかにするには、なお研究が必要である。

 パンスペルミア仮説
 パンスペルミア仮説とは、「宇宙空間には生命の種が広がっている」「地球上の最初の生命は宇宙からやってきた」とする仮説である。

 一見、判らないものは宇宙に由来させよう、という消極的な考えに見えるが、「地球上で無機物から生命は生まれた」ということを否定しているのみで、また化学進化は否定していない。この説は化学進化と同様現在でも支持されている学説の一つである。このパンスペルミア仮説を支持する点は以下の通りである。

 38億年前の地層から真正細菌らしきものの化石が発見されている。地球誕生から数億年でこのようなあらゆる生理活性、自己複製能力、膜構造らしきものを有する生命体が発生したとは考えにくい。パンスペルミア説では有機物から生命体に至るまでの期間に猶予が持てる。

 宇宙から飛来する隕石の中には多くの有機物が含まれており、アミノ酸など生命を構成するものも見られる。分析技術の発達により、これらの隕石中のアミノ酸がホモキラリティーを持つことも確認された。さらに彗星中のチリにもアミノ酸が存在すること確認されている。

 これは地球上で汚染されたものであるという可能性が捨てきれなかったが、NASAなどの研究チームが南極で採取した隕石を調べたところDNAの基となる物質アデニンとグアニン、生体内の筋肉組織に含まれるヒポキサンチンとキサンチンが見つかったため、この説を裏付けることとなっている。

 2011年、日本の海洋研究開発機構で、大腸菌など、5種類の細菌を超遠心機にかけ、超重力下での生物への影響を調べる実験が行われた。その結果、5種とも数千から数万Gの重力の下でも正常に増殖することが確かめられ、中には40万3627Gもの重力下でも生育した種もあった。地球に落下する隕石の加速度は最大30万Gに達すると予測されており、この実験は、パンスペルミア仮説の証明とはならないが、このような環境を生き延びる可能性を示している。

参考HP 海洋研究開発機構プレスリリース 初期生命に近い高熱菌のゲノムを解読 

生命の起原―生命の生成と初期の発展 (1969年)
クリエーター情報なし
岩波書店
地球と生命の進化学―新・自然史科学〈1〉 (新・自然史科学 1)
クリエーター情報なし
北海道大学図書刊行会

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