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 絶滅のミズナギドリ、小笠原に生息 
 北太平洋のミッドウェー諸島で1990年代初頭に観察されたのを最後に絶滅したとみられていた海鳥ミズナギドリの仲間、英名「ブライアンズ・シアウォーター」(Bryan's shearwater、学名:Puffinus bryani)が、世界自然遺産の小笠原諸島(東京都)に生息していることが分かった。森林総合研究所や山階鳥類研究所などの研究グループが7日明らかにした。絶滅とされた鳥類が再発見されたのは約60年前のアホウドリ以来のこと。研究成果はハワイ州オアフ島で開かれている第39回太平洋海鳥会議で8日(日本時間9日)発表される。
 
 ブライアンズ・シアウォーターは、全長25~30センチで、翼を広げた幅は55~60センチ。足が青色で、尾羽が長いのが特徴だ。1963年にミッドウェー諸島で採集され、保管されていた標本のDNA分析から新種と分かり、昨年この英名で発表された。しかし野生のものは、1990年代初頭に同じミッドウェー諸島で観察されて以降、20年間も姿が確認されておらず、すでに絶滅したとみられていた。
 
 研究グループは、小笠原諸島で1997年から昨年5月までに死体で発見され、あるいは一時保護された後に死んだ小型ミズナギドリの標本6体を調べた。ミトコンドリアDNAの分析の結果、6体全てがブライアンズ・シアウォーターのDNAと一致し、現在も小笠原諸島に生息していることが分かった。

Bryan's shearwater

 この鳥が小笠原諸島で発見されたのは12月から5月までの期間なので、冬に繁殖すると考えられる。冬場は小笠原諸島の海も荒れるので、研究者が無人島に渡るのも難しいことなどから、これまで発見が遅れたのではないかという。研究グループは、ブライアンズ・シアウォーターの和名を「オガサワラヒメミズナギドリ」とすることを提案している。
 
 今回の世界的な希少鳥類の再発見は、生物多様性の保全上からも有意義なことと考えられ、世界自然遺産に登録された小笠原諸島の生態系の価値をさらに高めることにもなりそうだ。(サイエンスポータル February 8, 2012)
 
 ミトコンドリアDNAの分析
 問題の小型ミズナギドリは、1997年以後に有人島の父島、母島で各1個体、2つの無人島で4個体、合計6個体が見つかっていた。このうち5個体は死体で発見されたが、1個体は衰弱して保護された(写真1)後に死亡しており、全て標本として保管されていた。この6個体の標本について、ミトコンドリアDNAの分析を行ったところ、全個体がブライアンズ・シアウォーターのDNAと一致した。

また形態的にも、近縁の種に比べて体が小さく尾羽が長いという特徴を持っており、ブライアンズ・シアウォーターと一致していた。

 小笠原ではミッドウェイに比べて多くの個体が見つかっていることから、この鳥の主な生息域は小笠原諸島だと考えられる。無人島でこの鳥が見つかった場所は、低木林や丈の高い草の下で多数の海鳥が繁殖している場所。営巣はまだ確認されていないが、同様の環境で繁殖している可能性がある。

最も新しく見つかった個体は、2011年5月のものだったことから、この鳥は現在まで小笠原諸島に生き残っているということがわかった。

 この鳥がこれまでに見つかっているのは12月から5月までの期間なので、冬に繁殖すると考えられている。小笠原諸島では冬は海が荒れるため研究者が無人島に渡るのが難しく、このことがこの鳥の発見が遅れた理由と考えられる。

 クマネズミから保護せよ!
 小笠原で見つかったとはいえ、この鳥の個体数は極めて少なく、現在もなお世界的な希少種であることは間違いない。過去に無人島で見つかった個体のうち3個体は、外来種であるクマネズミに捕食されて死んだものと考える。小笠原諸島では、クマネズミによる海鳥の捕食が問題になっており、森林総研ではクマネズミの根絶手法を開発した。

 小型ミズナギドリの死体が見つかった無人島でも、他の海鳥が多数捕食されていたため、環境省によりネズミ類の駆除が行われた。このため、この島ではネズミによる脅威の心配はなくなっている。しかし、この鳥が繁殖することができる環境を増やすためには、ネズミが侵入している他の無人島においても駆除を推進していく必要がある。

 また小笠原諸島では、海鳥の繁殖地の環境を悪化させるモクマオウなどの外来植物の繁茂が問題になっていることから、林野庁などで実施している外来植物の駆除を推進することにより、海鳥の繁殖地となっている固有の森林生態系の修復や管理を行うことが必要である。

 この鳥は、ヒメミズナギドリと形態的に似ていることから、関係者の間ではオガサワラヒメミズナギドリと呼んでいた。小笠原に生息する小型のミズナギドリという意味で、この名称を本種の和名とすることを提案する。(森林総合研究所 2012年2月7日)

 ブライアンズ・シアウォーター
 ブライアンズ・シアウォーター(Bryan's shearwater)とは、ミズナギドリ目ミズナギドリ科に属する鳥類である。ブライアンズ・シアウォーターという名はハワイのホノルルにあるバーニス・P・ビショップ博物館の元管理責任者で、1920年代から1950年代にかけてハワイの生物の調査研究を行ったエドウィン・ホレス・ブライアン・ジュニアの名前に因んでいる。

 ミッドウェー環礁に続き小笠原諸島でも発見されたことから、現在和名をオガサワラヒメミズナギドリとすることが提案されている。1963年、ハワイ諸島北西にあるミッドウェー環礁のサンド島にあったシロハラミズナギドリの巣の中で、ミズナギドリ科とおぼしきオスの小さな鳥が発見された。発見当初、この個体は主に亜南極の海域に生息するヒメミズナギドリ(英語版)と考えられていた。

 しかし鳥類学者のピーター・パイルがワシントンD.C.にあるアメリカ国立自然史博物館(USNM)に保管されていた標本を再度調査したところ、ヒメミズナギドリにしては尾が黒くて長い上、体が小さすぎることが判明、スミソニアン保全生物学協会(英語版)(SCBI)のアンドリーナ・ウェルチとロブ・フライシャーがDNA型鑑定を行った結果、この種はおよそ200万年前に他のミズナギドリ科の鳥類から種分化した種で、ケアプベルデヒメミズナギドリに近い新種の鳥類であったことがわかり、2011年に新種として認定された。

 鳥類の新種が発見される場合、多くは南米や東南アジアの熱帯雨林で発見されることが多く、このようにアメリカ合衆国で鳥類の新種が発見されることは稀である。確認されているミズナギドリ属の中では最も体が小さい。尾は近縁種より長く全体的に黒味が強い。背の部分がより黒く、羽の方に行くにしたがって茶色がかっている。くちばしは青がかった灰色をしていて、足は青色で、腹部は白色である。頭部は目の部分を境に上部が黒く、下部は白い。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia ブライアンズ・シアウォーター 森林総合研究所 世界自然遺産に生き残っていた希少鳥類

南の島の自然誌―沖縄と小笠原の海洋生物研究のフィールドから
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東海大学出版会
F O Morris の手によって着色される鳥のすすけたミズナギドリ亜科 H/c の骨董品の鳥の印刷物
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