日本も民間技術で宇宙へ

 NASAでは、昨年引退したスペースシャトルに代わり、国際宇宙ステーション(ISS)への人員や補給物資の輸送を、民間のロケットで運ぶという計画がある。2月には、宇宙ベンチャー「スペースX」社の無人機ドラゴンが、民間として初めてステーションに到着予定。米航空宇宙局(NASA)は「ことしは、宇宙輸送の商業化という新時代の幕開けになる」と期待している。

 日本では、まだ国が中心となって宇宙開発に取り組んでいるが、民間企業の一般の人達が、宇宙にかかわる仕事に取り組める「夢」があってもいい。第145回直木賞を受賞した、池井戸潤氏の「下町ロケット」では、東京の下町にある町工場が取得した最先端特許が、ロケットを飛ばすための技術であった。 

 実際に民間の中小企業が、最先端の宇宙技術に取り組んでいる例がある。それが、東大阪宇宙開発協同組合(SOHLA)のつくった人工衛星「まいど1号」や、北海道宇宙科学技術創成センター (HASTIC)が中心となって開発が進められている「カムイロケット」である。日本でも民間のロケットで、人工衛星を打ち上げる時代が来る。

CAMUI

 2009年1月23日午後0時54分、「まいど1号」を搭載したH-IIAロケット15号機が、種子島宇宙センターから打上げに成功。2010年4月には、「まいど1号」に続く宇宙機として、2015年頃、二足歩行ロボットを月に送る計画を発表している。このロボットには「まいど君」という仮称が与えられ、2015年ごろにJAXAの月探査機との相乗りで打ち上げることが構想されている。

 「カムイロケット」はハイブリッド化により、現在の実用固体ロケットに比べ燃料費を200分の1以下とし、またエンジン部分を含め機体のほぼすべてをプラスチック化することにより軽量化をはかり、トータルで現用の実用固体ロケットに比べ、打ち上げ費用を10分の1以下とすることを目標としている。2015年までに実用化にこぎつけるのが目標だ。

 「まいど1号」のほとんどはJAXA製?

 東大阪宇宙開発協同組合(SOHLA)は、中小企業が多く、長引く不況で活力を失いつつある東大阪工業地帯の経済振興策として、航空宇宙産業を地場産業に育てるための共同研究開発を行うために設立された。現在の理事長は杦本日出夫。

 当初の構想は「ワンオフ製品が多い人工衛星なら、融通の効く中小企業が有利であり、衛星打ち上げを通じて東大阪の中小メーカー群を宇宙開発メーカーの集合体に再編し、最終的に組合で衛星開発や製作を受注する」と言うものであったが、この構想は活かされず、現在では単なる宣伝目的の組織となっている。

 まいど1号は日本のマスメディアでは「東大阪宇宙開発協同組合が中心となった中小企業が作り上げた」と報道されるが、実際にはまいど1号は「マイクロラブサット (μ-LabSat)」というJAXAが過去に開発した小型衛星をベースとしており、開発自体もJAXAとそのサポート企業が主体であった。そのため、実際には「JAXAのまいど1号の製作を、東大阪宇宙開発協同組合が手伝った」という捉え方もある。

 設計面の全てと制作の大部分はJAXAが行っており、東大阪宇宙開発協同組合が行ったのは部品の納入と一部分の組み立てである。

 この事について、当初、東大阪宇宙開発協同組合のリーダーであった青木豊彦は「概念設計のアイデアをすぐモノにするのは、私ら強いから。うちの工場は思いついたらすぐ形になる」と発言していた。

 しかし、実際の衛星部品はワンオフものであっても、町工場にあるような「手書きのポンチ絵を職人のセンスで組み立てる」訳では無い。衛星部品は事前の厳密な設計と製作後の入念な環境試験が必要であり町工場で受注から納入まで一貫して行う事は不可能である。結果的に宇宙開発についての初期認識の甘さが指摘される結果となった。

 変わらぬ「あきらめない」姿勢

 「3、2、1、発射!」粉雪が舞う空に、高さ40センチほどの紙製ロケットが「ボシュッ」という音とともに次々と打ち上がった。和歌山県からやってきた40人の高校生たちから歓声と拍手が起こる。

 北海道赤平市の「植松電機」は2004年から、民間によるロケット開発プロジェクトに参画してきた。工場には毎年約4000人もの子どもたちが訪れ、紙ロケット作製から打ち上げまでを体験する。「失敗したらやり直せばいい。あきらめることを覚えてしまった日本を変えるのはあの子たち。何にでも挑戦してほしい」。植松努専務(45)が笑顔で言った。

 植松さんは子どものころ、クラフト紙で作る模型飛行機に熱中した。「将来は飛行機やロケットの設計を」と夢見た中学3年の時、担任の教師から「東大に行かないと無理。お前に未来は選べない」と言われた。

 北見工業大を卒業し、名古屋市の大手航空宇宙関連企業に就職。ここでも「あきらめること」が日常だった。「新しい仕事を『やったことがないからできない』と平気で言う先輩を信じられず」5年半で退社し、郷里の北海道で植松電機を創業した。

 産業廃棄物処理場などで金属の仕分け作業に使う磁石の開発、製造が本業。2004年、独自の「CAMUI(カムイ)ロケット」開発に取り組む北海道大の永田晴紀教授(宇宙工学)と出会い、夢がよみがえった。「田舎の小さな会社がロケットを造れば、誰も『宇宙を目指すなんて無理』と言えなくなる。あきらめを覚えてしまった人に、夢は必ずかなうと伝えたい」。NPO法人「北海道宇宙科学技術創成センター」(HASTIC)に参加し、ロケット開発に乗り出した。

 カムイロケットの燃料は固形燃料。安価で爆発の危険がなく、1機あたりの製作費を約30万円まで下げられる。これまでに長さ約3メートル(90キロ級)と同約4メートル(200キロ級)を造り、2007年8月の性能試験では高度3500メートルまで到達させた。昨年12月には21回目の打ち上げ実験に成功。JAXA(宇宙航空研究開発機構)や大手宇宙関連企業の技術者と、ロケット技術の共同研究も始まった。

 未来は自分で変えられる。そんな実感を子どもたちに味わってもらいたい。そう考える植松さんと子どもたちをつなぐのがロケットだ。日本には民間ロケットを飛ばすための法律がなく、「道路があっても走るための免許がない現状」だが、法整備への働きかけと並行して、宇宙空間に漂うごみをカムイロケットで回収する夢を描く。「あきらめないでやり続ければ、この夢もきっとかないますよ」(毎日新聞 2012年1月1日)

 カムイロケットの動作原理

 CAMUIロケット(カムイロケット)とは、特定非営利活動法人「北海道宇宙科学技術創成センター (HASTIC)」が中心となり、北海道大学、北海道工業大学等の北海道内の大学・植松電機をはじめとする北海道内の民間企業によって開発が進められているハイブリッドロケットである。

 ハイブリッドロケット (hybrid rocket) とは、相の異なる2種類の推進剤(例:固形燃料と液体酸素)からなるロケットエンジンシステムである。最も一般的なものは、固体燃料がおかれた燃焼室へ液体か気体の酸化剤を供給する事によって燃焼を起こし、生成したガスを噴射してその反動で進むというものである。

 ハイブリッド化により、現在の実用固体ロケットに比べ燃料費を200分の1以下とし、またエンジン部分を含め機体のほぼすべてをプラスチック化することにより軽量化をはかり、トータルで現用の実用固体ロケットに比べ、打ち上げ費用を10分の1以下とすることを目標としている。

 HASTICでは現在も開発とエンジン燃焼実験の実績の積み重ねを続けており、2015年内の実用化を目標としている。 なお、上空60kmでの大気採取を目的としている気象観測用400S型の開発のほか、2006年2月に提携した米国ロケットプレーン社のロケットプレーンからの空中発射により、小型人工衛星を打ち上げる構想もあるという。 2006年8月27日放送のTBS『夢の扉 〜NEXT DOOR〜』で開発の様子が放映された。

 2006年12月には、宇宙関連機器の研究開発および製作販売、実験の請負などを目的に、北海道大学教授永田晴紀と植松電機取締役植松努の出資により株式会社カムイスペースワークスが設立された。同社は初の商業打上げ業務として、公立はこだて未来大学のカンサットの打上げを請け負った。

参考HP Wikipedia ハイブリッドロケット JAXAオープンラボ公募 カムイロケットで北海道から宇宙産業の小型化を目指す

下町ロケット
クリエーター情報なし
小学館
こんなにすごかった! 宇宙ロケットのしくみ (PHP文庫)
クリエーター情報なし
PHP研究所

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