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 ヒト卵子の生殖幹細胞発見
 これまで教科書に載っていたことが変わる。従来、卵巣にある卵子の数は有限で、加齢とともに減少する一方と考えられてきた。ところが、ヒトの卵巣の中から、成長すると卵子になるとみられる細胞「生殖幹細胞」が、発見された。発見したのは、米ハーバード大マサチューセッツ総合病院と埼玉医大のチーム。

 今回、発見した細胞は卵子の元になっている「生殖幹細胞」であり、ヒトで確認されたのは初めて。「幹細胞」は様々な組織の細胞をつくる元になる細胞。造血幹細胞、肝幹細胞、神経管細胞、皮膚幹細胞など、様々なものがあるが、成人女性に卵子の幹細胞があると考えられていなかった。

 今回の成果は、抗がん剤治療などで生殖能力を失った人などの不妊治療に役立つ可能性があるという。米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に2月27日、論文が掲載された。

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 埼玉医大のチームは、性同一性障害の治療のため同大で卵巣を摘出した20~30代の女性6人から、研究目的で用いる同意を得た。提供された卵巣を米国へ持って行き、ハーバード大チームが生殖幹細胞とみられる細胞を採取。目印を付け、卵巣組織に注入してマウスの卵巣へ移植した。約1週間後には、卵巣内で目印を付けた細胞が卵子のように成長していた。

 高井泰・埼玉医大准教授(産婦人科)は「やむを得ない理由で不妊になる人から事前にこの細胞を採取しておけば、治療後に出産が可能になるかもしれない」と話す。一方で「不妊治療に使うには、倫理的な問題を議論する必要がある」と指摘している。(毎日新聞 2012年2月27日)

 生殖幹細胞に特有のタンパク質発見
 研究を率いたジョナサン・ティリー(Jonathan Tilly)氏によると、2004年に「Nature」誌に発表された以前の研究は、「若い女性は生まれながらにして、新たな預金ができない、ただ引き出すだけの卵子の口座を与えられているのだという長年の教えが、もはや真実ではないとする結論に初めて到達した」。

 以前、マウスについては、卵子の生殖幹細胞が確認されていた。ヒトについても同じであろうと、予想はされていた。今回の結果は、マウスの実験からの「大きな前進」だとティリー氏は強調する。同氏はボストンにあるマサチューセッツ総合病院生殖生物学ビンセントセンター(Vincent Center for Reproductive Biology)の所長を務めている。

 またティリー氏は、男性の精子は継続的に補充されているのだから、出産年齢の女性が継続的に新たな卵子を生み出しているという考え方は、純粋に生物学的に見ても理にかなっていると述べる。

 ティリー氏は最初、研究用にヒトの健康な卵巣組織を見つけようとして壁にぶつかった。米国で実験のための卵巣組織を入手するには、今のところ手術で摘出されたものしかない。その場合、組織が健康でないことに加え、小さな塊でしか取り出されず、卵巣のどの部分なのかを正確に知ることができないという問題がある。

 ティリー氏は日本人の同僚とのふとした会話から健康な卵巣組織の提供者にたどり着いた。性別適合手術を受けた日本人女性が生殖器官の一部を検体提供していたのだ。健康な卵巣組織を手にしたティリー氏らは、マウスの実験の時と同じ手法を使ってヒトの卵巣の幹細胞を単離した。

 初めに、生殖細胞(卵子、精子、およびその前駆細胞)に特有の、遺伝子的にコード化されたタンパク質を特定した。このタンパク質は卵子の前駆細胞の表面に小さな「ロープ」を残す。

 そして、「そのロープをつかむ」抗体と呼ばれる別のタンパク質を使い、「蛍光マーカー」で標識をつけた。

 蛍光標識を見つけ出す特別な装置に、卵巣細胞のプールを1列にして送り込むと、卵子の幹細胞はほかのタイプの細胞からあっけなく分離され、ヒトの卵巣の幹細胞が「魔法のように」出現した。

 ただ、卵子の幹細胞はとても珍しく、細胞の数は卵巣全体の1%未満であることも分かった。卵巣でずっと幹細胞が見つからなかったのはこのためかもしれない。「大勢の中に埋もれていたのだ」とティリー氏は述べている。

 生殖能力の低下は「育成室」の老朽化か?
 研究チームが次に必要としたのは、人体内における卵巣の幹細胞の成長をテストするモデルだった。生身のヒトによる実験は当然ながら法的にもできないため、蛍光標識のついた幹細胞をヒトの卵巣組織の小片に注入し、その組織をメスのマウスに移植した。遺伝子操作によって免疫システムがないマウスであり拒絶反応はない。

 蛍光標識のついたヒトの幹細胞が1~2週間で若い卵細胞に成長し、蛍光標識がなければ組織内に元からあった卵細胞と区別できないようになった。

 この実験は、生きた人間の組織の中で幹細胞から若い卵細胞が誕生することを示し、「女性の中で新しく発見された細胞の正体を決定づけた」とティリー氏は述べている。

 またティリー氏は、「出産年齢の女性の卵巣にこうした卵子の前駆細胞があることと、年齢を重ねると生殖能力と卵巣の機能が低下するという事実とはまったく矛盾しない」と言う。

 例えば、精巣が衰えた年老いたマウスは、精子の幹細胞はあるが機能しなくなっていることを他の研究者らが発見している。しかし、年老いた幹細胞は若いマウスの精巣に移植されると「目を覚まし精子をもう一度作り始める」のだという。「つまりオスの場合、生殖腺の年齢による衰えは、貴重な幹細胞の減少ではなく、幹細胞がある“育成室”の劣化が原因なのだ」。

 女性が年齢を重ね新しい卵細胞が生み出されなくなるのも、卵巣内で似た現象が起きているのではないかとティリー氏は推測している。

 今回の研究結果は「Nature Medicine」誌オンライン版で2月26日に公開された。 (Christine Dell'Amore for National Geographic News March 1, 2012)

 ヒトの精子生産のメカニズム解明          
 一方、男性の精子はこれまで、体内で1秒間に1500個以上の精子細胞が作られる…とされてきたが、これはハイペース。新しい研究では、生産ペースを調整するメカニズムが明らかになった。

 40年もの間、生殖幹細胞とも呼ばれる睾丸内の幹細胞が精子になるには単純な2段階の過程しかないと考えられてきたが、実はそれは正しくなかった。マウスを使った最新の実験から、生殖幹細胞が精子になるには複数の異なる過程があるらしいことがわかった。

 研究の共著者で、アメリカのメーン州バーハーバーにあるジャクソン研究所副所長でロバート・ブラウン氏は、「幹細胞は常に一直線に精子細胞になるのではない。幹細胞は複数回の細胞分裂を経て精子細胞になることもあれば、そうでないこともある」と説明する。

 さらに、精子細胞になる途上の細胞が生殖幹細胞へ逆戻りすることもあることがわかった。これまでは、このようなことはあり得ないとされていた。

 今回の研究では、マウスを遺伝子操作して生殖幹細胞を蛍光発色させ、細胞の成長を観察できるようにした。さらに、マウスの生殖幹細胞内の特定の細胞に色で印を付け、数日間これを観察した。

 また今回の研究では、精子の形成に特化した睾丸内の生殖幹細胞のうち、これまでの予想よりも小さい部分から精子が作られることもわかった。

 精子は短命なため常に補充する必要があるとブラウン氏は指摘する。そのため、1秒間に1500個というハイペースで精子は作られるという。「しかも、受精は驚くほど効率が悪い。ごくわずかな数の精子が最終目的地である女性の卵子にたどり着くためには、最初に膨大な数の精子が必要だ」。

 しかし、思春期から老年まで精子細胞を送り出し続けるには、男性の体が生殖細胞を非常に微妙な均衡状態に保つ必要がある。例えば、生殖幹細胞が長期間に渡って幹細胞のままで精子細胞にならずにいると精巣ガンの危険が生じる可能性がある。逆に生殖幹細胞が頻繁に精子になりすぎれば男性不妊症になる恐れがある。

 ブラウン氏によると、精子の発達についてのこうした謎が解明されれば、いずれは不妊治療や、懸案である男性用の避妊ピルの開発に繋がるかもしれないという。例えば、生殖幹細胞が精子にならないようにする方法が見つかるかもしれない。「細胞の通常の振舞いの理解が進めば、それを操作する方法もわかるようになる」。

 この研究は2010年3月19日発行の「Science」誌に掲載された。(Christine Dell'Amore for National Geographic News March 19, 2010) 

 卵子の数はいくつ?これまでの定説
 女児は生まれたときすでに卵巣内に、卵子のもとになる細胞(卵母細胞)をもっている。妊娠16〜20週の時点では、胎児の卵巣には600万〜700万個の卵母細胞がある。その多くは徐々に消失して、出生時には100万〜200万個にまで減少する。

 出生後に卵母細胞が新たにつくられることはない。卵母細胞はその後も減り続け、思春期を迎えるころには30万個程度まで減ってしまうが、それでも女性の生涯の生殖機能を支えるには十分すぎるほどの数がある。生殖可能期間の間に成熟して卵子となるのは、30万個のうちごくわずか。何万個もの卵母細胞は成熟することなく退化していく。退化は閉経前の10〜15年間に急速に進行し、閉経期にはすべての卵母細胞がなくなる。

 生殖可能期間にある女性の体内では、1回の月経周期につき通常は1個の卵子が排卵され、全期間を通して排卵される卵子はわずか400個程度である。排卵前の卵子は、細胞分裂を途中で休止した状態で卵胞内に維持されている。つまり卵子は体内でも特に寿命の長い細胞であるといえる。細胞分裂を休止している間は通常の細胞内で起こっている修復プロセスが行われないため、女性が年をとるにつれて卵子に損傷が生じる可能性が高くなる。高齢出産では染色体や遺伝子の異常が生じやすくなるのはこのためである。(メルクマニュアル家庭版)

参考HP National Geographic news 卵子次々につくられる、幹細胞の新研究 ヒトの精子生産メカニズム解明

危機にある生殖医療への提言―ジェンダーバラエティー・着床前診断・精子卵子提供・代理出産
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