科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学の疑問を、やさしく解説!毎日5分読むだけで、みるみる科学がわかる!


 セシウム137を排出するエラの機能
 福島原発事故で問題となっている、セシウム137は、678℃で気体になるため、事故で広範囲に放出された。セシウム137は、半減期が30年と長い。またセシウムは土壌粒子と結合しやすいため長い間地表から流されない。このため、短寿命の放射性核種やヨウ素131が消滅したあとにも残る。

 医療用の放射線源に使われるが、体内に入ると血液の流れに乗って腸や肝臓にガンマ線を放射し、カリウムと置き換わって筋肉に蓄積したのち、腎臓を経て体外に排出される。セシウム137は、体内に取り込まれてから  体外に排出されるまでの100日から200日にわたってガンマ線を放射し、体内被曝の原因となる。

 今回、東京大学の金子豊二教授(魚類生理学)らが、魚が海水から取り込んだ放射性セシウムを体外に出す仕組みがあることを突き止めた。エラの細胞に出口があり、出口をつくる遺伝子もわかった。魚からセシウムを早く取り除くのに応用できるという。

Cesium

 体に取り込まれた放射性セシウムは徐々に排出され、海の魚の場合は約50日で半減することが知られている。それがどのように排出されているのかは、わかっていなかった。

 金子教授らは、セシウムはカリウムと性質がよく似ているため、同じ経路をたどると考えられることに着目し、モザンビークティラピアという魚で調べた。その結果、体内の余分な塩分を排出するエラの「塩類細胞」からカリウムが出ていることを確かめた。(asahi.com 2012年3月21日)

 放射性セシウム除染方法
 セシウム137は半減期が30年もあるということで、内部被爆が心配されている物質だが、チェリノブイリ事故と違い環境汚染濃度は低く、人が通常に生活するのに支障はない。

ただ、地面に吸収された放射生物質は、農作物にも取り込まれることが心配されている。そこで様々な方法で、土壌の除染が行われている。

 愛媛大学大学院の榊原正幸教授らは、用水路や池などに生えている水草「マツバイ」が、土壌中の放射性セシウムを効率よく吸収することを明らかにした。マツバイは簡単に入手でき、薬品などを使わないため安全。福島第一原発事故の放射能で汚染された水田の除染などの有力な手段の一つになるという。

 マツバイはカヤツリグサ科の多年草で、カドミウムや亜鉛など重金属類をよく吸収する性質がある。福島県郡山市の県農業総合センターの協力で、マツバイが放射性セシウムをどの程度吸収するのかを確かめた。今回の研究は、日本地質学会の東日本大震災復興支援プロジェクトの一つ。(asahi.com 2011年11月23日)

 また、土壌中の放射性セシウムを吸収すると期待されたヒマワリは、作付け時の土壌中に含まれる放射性セシウムの2000分の1しか除去できなかった。放射性セシウム除去には使用できる段階にない。いずれにしても生物の力を借りるのには、時間がかかりそうだ。

 そこで行われているのが、農業機械などで表土を4センチ削り取る方法。これで、土壌中の放射性セシウムのうち75%が除去できることが分かった。マグネシウム系固化剤で表面土壌を固化した後では、表面から3センチ削るだけで82%の放射性セシウムを除去できる。これらの方法の問題は、10アール(1000平方メートル)当たりそれぞれ40立方メートル、30立方メートルもの廃棄土壌が出ること。表層土壌をかくはんし、濁水を排水した後に水と土壌を分離して土壌だけを取り除く試験も行われた。この方法によると廃棄土壌は10アール当たり1.2~1.5立方メートルで済み、放射性セシウムも30~70%除去できることが分かった。

 いずれの方法をとるにしても大きな問題になるのが必至なのは、除去した土壌の処理。技術研究、試験の結果、運搬可能なコンクリート製容器に土壌を入れて仮置きする方法が、放射線遮蔽(しゃへい)効果があるとされた。(サイエンスポータル 2011年9月15日)

 コメのセシウム、カリウム肥料増やせば大幅減
 一方、放射線セシウムを農作物に吸収されにくくする方法として、カリウム肥料をまく方法に効果があることを、農林水産省、独立行政法人の中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)が発表した。

それによると、放射性セシウムで汚染された水田でも、肥料のカリウムの投入量を増やせばコメ(玄米)へのセシウム移行を大幅に減らせるケースがあるとの実験結果を発表した。

 研究チームは東京電力福島第一原発の事故を受け、福島、茨城、栃木、群馬の各県でイネの作付け試験を実施。肥料などの条件を変え、セシウムの移行しやすさへの影響を調べた。

 その結果、カリウムのうち、作物に吸収されやすい形の「交換性カリ」が土壌100グラムあたり25ミリグラム程度になるように肥料で調整すると十分な効果が得られることがわかった。またこれ以上カリウムを増やしても、それ以上の効果は期待できないという。(asahi.com 2012年2月24日)

 化学的にみて、セシウムは、ナトリウム(Na)やカリウム(K)と同じアルカリ金属に分類され、これらの元素と同じようにふるまうことがわかっている。そこで、カリウムを多くすることで、作物が放射性セシウムを吸収するのを防ぐ考えだ。

参考HP Wikipedia セシウム

知っておきたい放射能の基礎知識 原子炉の種類や構造、α・β・γ線の違い、ヨウ素・セシウム・ストロンチウムまで (サイエンス・アイ新書)
クリエーター情報なし
ソフトバンククリエイティブ
放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ
クリエーター情報なし
合同出版

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ ←One Click please

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。