巨大地震はパンドラの箱
 4月1日、NHK放送のMEGAQUAKEII(巨大地震)「第1回、今日本の地下で何が起きているのか」を見た。地震学者の予想をはるかに超えたM9.0の巨大地震。地震学者達も「予想できなかった」自身の無力さにうちひしがれていた。しかし、現代科学の粋を集めた、観測機器と分析機器はおぼろげながら地震の全体像を捉え始めていた。
 人類は巨大地震という“パンドラの箱”を開けてしまった。あらゆる悲劇が日本を席巻した。だが、番組を見終わった後、「将来は予想できるかもしれない…」と、わずかな希望を見いだせた。

 今までの地震とは何かが違う。確かにM9.0という巨大地震、最高で40mを超した大津波、多くの被災者。震災による死者・行方不明者は約1万9000人、建築物の全壊・半壊は合わせて38万戸以上、ピーク時の避難者は40万人以上、停電世帯は800万戸以上、断水世帯は180万戸以上に上った。政府は震災による被害額を16兆から25兆円と試算している。

 だがそれだけではない、地震後も各地で異変が起きている。茨城県では今も毎日80回前後の地震を記録。福島県のある場所では、地盤沈下が続き、温泉が湧き出した。吾妻山では夜間、発光現象が観察される。明らかにマグマが上昇しているのだ。

MEGAQUAKE

 2011年10月、大震災後最初の日本地震学会が開催された。多種多様の観測機器で、これほどの巨大地震を捉えたのは世界でも初めてのことである。様々なデータの分析により、少しづつではあるが、巨大地震の全体像が見えてきた。


 アスペリティが1300個

 東北大学の松澤暢教授は30年以上にわたって東北の地震を観測してきた。太平洋プレートが大陸プレートの下に潜り込む、東北沖に地震の発生ポイント“アスペリティ”が1300個もあることを発見した。アスペリティは、プレートとプレートが密着している場所のこと。ここが急に動くことで地震が発生することが知られている。

 今回の東日本大震災まで、松澤教授が出した東北沖の地震の発生予想は、「30年以内にマグニチュード(M)7.4程度のものが99%の確立で起きる」であった。ところが、起きたのはマギニチュード(M)9.0。しかも、6つの震源域が立て続けに地震を起こした。それまで、地震は1つ1つ、別々の震源域で起きると信じられてきた。こんなことは誰も予想できなかった。

 東京大学の纐纈(こうけつ)一起教授は、「今回の巨大地震は、多数の最新測定機器で捉えた、世界初の地震だ」と語った。人類史上希に見る巨大地震の貴重データを、大量に得ることに成功したのだ。その分析から新たなことがわかった。今回、未知の空白域に、新たにアスペリティが発見された。その大きさは、南北に200kmもの広大な大きさがあった。また、巨大地震後に起きているM5以上の地震は740回。これは、前年の4倍以上の多さだ。

 なぜ、こんなに地震が多発しているのだろう?京都大学の遠田晋次準教授は、巨大地震後に起きている、内陸部の地震を調べている。遠田教授は、これまで地盤に働いていた力と、まったく逆の力が地盤に働いていると指摘。だから、これほど巨大地震の後にも、地震が多発するのだ。確かにGPSで地盤の動きを調べてみると、巨大地震前は西側に動いていたプレートが、地震後は今も東側に動いている。この真逆の力が各地で新たな地震を起こしている。


 GPSが地震発生場所を特定

 全国には1200のGPSがある。国土地理院の西村卓也主任研究官は、20年以上もGPSを使って、日本全国の地盤の動きを調査している。今から15年前、今回の震源地となった、東北沖は地盤が大きく移動している地域だった。西村氏は2000年の論文で、地震の危険があると指摘していた。ところが、2007年には、この地域の地盤の動きが減少。西村氏は「あれ?地震の危険は去ったのかな」と安心してしまった。今思えば、これが嵐の前の静けさだった。地震の前兆だったのだ。

 だとすれば、これは発見である。今までGPSで、地盤が大きく移動していたところに地盤のひずみがあり、その動きが止まったときに巨大地震が起きる理屈だ。

 西村氏は全国で、地震のエネルギーの溜まっている場所を3ヶ所指摘した。1つは東海~南海トラフ。1946年の巨大地震では、プレートが3.5m南東に動いた。その後北西に2.3m押し戻しており、M9.0程度のひずみが溜まってきている。2つ目は北海道東方沖。ここにも、M9.0の危険性がある。

 3つ目が90年前に関東大震災を引き起こした、相模トラフ。ここにはM8.0の危険性がある。これらの地域の地盤の動きが止まったとき、巨大地震が数年以内に起きるはずだ。地盤が動かなくなるのは、ひずみが支えきれなくなっていることを暗示しているのだ。これらの地域は、新聞やテレビでも繰り返し、地震の起きやすい場所として紹介されてきた。今回この番組を見て、納得できた。巨大地震は必ず起きる。ひずみが観測される場所で何度でも起きる…。

 人類は今回の東日本大震災によって、GPSを使えば巨大地震の発生場所を特定できるようになった。素晴らしい成果だと思う。多くの犠牲者を無駄にしないためにも、あとはせめて一週間ぐらい前に、予知できるようにならないか?それは可能だと思う。それは、地震の発生前に陸上に打ち上げられる、グジラやイルカが教えてくれている。水中の音を聞けば、特定の周波数の異常音が発生しているはずだ。それで予知できるのではないだろうか?

参考HP NHK MEGAQUAKE 巨大地震II 今日本の地下で何が起きているか?

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