トラック横転、竜巻、ひょう、暴風
 4月3日~4日にかけて、低気圧が急速に発達し、日本列島を暴風が吹き荒れ、トラックが横転するなど、ふだんでは考えられないような被害を各地にもたらした。

 4月3日、岡山県と香川県を結ぶ瀬戸大橋の上でJRの列車が緊急停止し、乗客約170人が7時間以上、車内に閉じ込められた。(テレビ朝日)滋賀県近江八幡市では3日午後、市道沿いの電柱17本が、根元から倒れたり、くの字に折れ曲がったりした。この影響で市内の約1200戸が一時停電した。

 同県内では、午後2時過ぎから5時20分まで竜巻注意情報が発令されたが、彦根気象台は「竜巻かどうかは、現時点では不明」としたうえで、被害が一直線上に連なっていれば竜巻、扇状に広がっていれば、積乱雲からの気流が急激に下降する「ダウンバースト」の可能性があるという。(読売新聞)

Meteorological bomb

 最大瞬間風速は京丹後市間人で34.7メートルと観測史上最大を記録。京都市24.3メートル、東近江市25.9メートルといずれも4月の観測記録を更新した。雨脚も一時強まり、1時間で長岡京市37ミリ、京都市27ミリ、大津市35ミリを記録するなど各地で4月の観測記録を更新した。京都市では“ひょう”を観測した。京都地方気象台は府北部に暴風警報を一時発令した。(京都新聞)

 富山県砺波市では午前10時50分ごろ、橋の上を走っていた10トントラックが強風にあおられて横転し、運転手がけがをした。和歌山市では3日午後1時すぎ、最大瞬間風速41.9メートルを観測した。(時事通信社)


 22万戸が停電、4月に吹雪、積雪

 4日になると、東北や、北海道にも被害をもたらした。東北電力は、北日本に進む低気圧の影響で午前6時現在、同社管内の22万6623戸が停電していると発表した。同社によると、暴風による倒木などで配電設備が損傷したり、送電線が断線したりしたことが原因だという。

 4日午後には北海道の稚内市で最大瞬間風速37.4メートル、えりも町で36.5メートルを記録。名寄市は4日夕までの24時間で28センチの雪が降った。3~4日で全国の約90地点でこれまでの最大風速を更新。新潟県佐渡市では4日未明に43.5メートルの最大瞬間風速を観測した。

 北海道上川管内中富良野町の国道では、外国人客ら23人が乗った観光バスが路外で横転し、2人が背中などを打つ軽いけが。JRや飛行機など交通機関も終日、大幅に乱れた。 札幌管区気象台によると、午後8時までの最大瞬間風速は稚内市宗谷岬で37.4メートル、日高管内えりも町襟裳岬で36.5メートルを観測。

 午後8時までの24時間降雪量は宗谷管内枝幸町で36センチ、名寄市で26センチ、夕張市で18センチ、旭川市で15センチ。夕張の積雪量は147センチと4月で史上最多となった。 (北海道新聞)

 全国に暴風雨や猛吹雪をもたらした低気圧は4日午後になり、オホーツク海に抜けた。気象庁によると、低気圧の中心気圧は4日午後3時に最低の950ヘクトパスカルまで発達。北海道や東北、北陸で猛烈な風が吹いた。北海道や新潟県の陸上では5日明け方にかけても暴風だったが、低気圧の勢力は徐々に弱まった。警察庁によると、全国で死者4人、負傷者は356人(うち重傷56人)に上った。(毎日新聞)

 爆弾低気圧 温度差大きく一気に発達
 今回の暴風の原因は、大型台風並みに発達した低気圧ということだが、なぜこの時期にこれだけ発達したのだろう?

 専門家によると、日本付近の偏西風が蛇行している関係で、冬の寒気がしぶとく残っているため、南からの春の暖気との間で温度差が大きくなり、低気圧が猛発達したという。

 気象庁によると、日本海を北東に進んだ低気圧の中心気圧は、3日午後6時で968ヘクトパスカルと、一日で38ヘクトパスカルも下がった。1日に24ヘクトパスカル以上も下がるものは「爆弾低気圧」と呼ばれ、暴風や高波など激しい現象を起こすことで知られる。

 2009年2月に成田空港着陸前のノースウエスト航空機が乱気流に遭い、43人が重軽傷を負った事故や、2004年12月に関東各地で気温25度以上の夏日となり、東京都心で最大瞬間風速40.2メートルを記録した際も、爆弾低気圧の影響だった。

 気象庁は「日本海でこれだけ低気圧が発達するのは珍しい」と説明。過去の似たケースとして、1954年5月に日本海で猛発達した低気圧の影響で漁船が多数遭難し、北日本や近畿を中心に約670人が死亡・行方不明となり、「メイストーム(五月の嵐)」という言葉が生まれた事例を挙げる。

 なぜ今回これほど発達したのか。天気キャスターで気象予報士の森朗さんは「北の寒気がまだ強く残っているところに、南の暖気もこの時期なりに強くなってきたため」と話す。

低気圧は寒気と暖気がせめぎ合い、交じり合うことで発達する。寒気と暖気の温度差が激しいほど、大きなエネルギーとなって低気圧の発達が強まる。

 「四月や五月は寒気も弱まってくるのが普通だが、今年は寒かった冬の寒気をまだ引きずっている。そこに春の暖気が南から入り、急速に発達した。冬から春へと急激に季節が変わっている」

 関東地方で今年、春一番が吹かなかったことにも森さんは着目する。過去に関東で吹かなかった1992、1996、2000年はいずれも三月末から五月にかけて、大規模な雷雨やひょうが降るなど、荒天が目立つためだ。

「春一番が吹かないということは、それだけ北の寒気が強かったということ。今も低気圧を急発達させるエネルギーが日本付近に残っており、今後も注意が必要だ」という。(東京新聞 2012年4月4日)

参考HP Wikipedia 低気圧

日本付近の低気圧のいろいろ (新しい気象技術と気象学)
クリエーター情報なし
東京堂出版
気象予報士試験第1回~第20回テーマ別実技試験 解答と解説〈2〉温帯低気圧2
クリエーター情報なし
東京堂出版

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