最も遠い“銀河団”発見
 国立天文台などの研究チームは4月24日、すばる望遠鏡(米ハワイ島)を使った観測で、これまでで最も遠い127.2億光年先に、銀河が集まる銀河団を見つけたと発表した。約137億年前の宇宙誕生から10億年に満たない時期の「原始銀河団」の発見は、宇宙の構造が形成される過程を解明する手掛かりになるという。論文は近く、米天文学誌アストロフィジカル・ジャーナルに掲載される。

 宇宙には、銀河団のように銀河が集中する場所が点在し、相互につながった網目状の「大規模構造」があるとされる。宇宙誕生直後の物質分布のわずかなむらがこうした構造をもたらしたとされるが、形成過程の解明には、遠方の銀河団の観測が必要になる。

 総合研究大学院大博士課程1年の利川潤さんと国立天文台の柏川伸成准教授らは、すばる望遠鏡の広視野と高い集光能力を生かし、かみのけ座の方角に約30個の銀河が集まっている領域があるのを発見。このうち15個の距離を詳しく測ったところ、8個が127.2億光年先に集中していた。原始銀河団としては、これまで2005年に同望遠鏡が発見した126.5億光年が最も遠いとされていたが、今回の観測はそれを7000万光年上回った。


Galaxy


 すばる望遠鏡では、今年末以降、さらに7倍視野の広い新カメラが稼働する予定。利川さんは「原始銀河団をより多く発見し、一般的な性質を知ることで、銀河の進化や宇宙の構造形成の様子が分かる」と話している。研究チームには、京都大の研究者も参加している。(jiji.com 2012/04/24)

 さらに、発見された原始銀河団の内部構造を詳しく調べてみると、いくつかの銀河のグループを形成しているような傾向が見られた。より大きな銀河団を作るために小さな銀河集団が集まり始めた様子を、私たちは目撃しているのかもしれない。本研究の成果は、宇宙の構造形成や銀河進化の解明に重要な手がかりを与えるものと考えられる。

 図は今回発見された原始銀河団の中心領域を拡大した画像(すばる望遠鏡で撮影)。◯で囲んだ赤い天体が127億光年先にある銀河である。(国立天文台)


 宇宙の始まりと宇宙の構造
 観測によれば、宇宙はおよそ137億年前に誕生した。それ以来宇宙は3つの段階を経過してきている。未だに解明の進んでいない最初期宇宙は今日地上にある加速器で生じさせられるよりも高エネルギーの素粒子からなる高温の状態であり、またほんの一瞬であったとされている。そのためこの段階の基礎的特徴はインフレーション理論などにおいて分析されているが、大部分は推測からなりたっている。

 次の段階は初期宇宙と呼ばれ、高エネルギー物理学により解明されてきている。これによれば、はじめに陽子、電子、中性子そして原子核、原子が生成された。中性水素の生成にともない、宇宙マイクロ波背景が放射された。そのような段階を経て、最初の恒星とクエーサー、銀河、銀河団、超銀河団は形成された。(Wikipedia)

 今回発見されたのは、これまでで最も遠い、127.2億光年という距離の銀河団である。銀河団というと、銀河の集まりである。数千万~数兆個という恒星が集まって銀河は成り立っており、これらの銀河が数十~数千個集まって銀河団が形成されている。

 銀河団がいくつか集まって超銀河団が形成され、超銀河団が連なりさらに大きな構造(銀河フィラメント)を形作る。その間にはほとんど銀河の見られない超空洞(ボイド)があることもわかってきた。観測可能な銀河は、少なくとも1700億個存在する。

 最も遠い銀河については、地球から130億光年以上も離れた「最も遠い銀河」が発見されている。


 最も遠い銀河を“重力レンズ”で発見
 2007年7月、欧米の観測チームが発表した。従来の「記録」は、日本の国立天文台などがすばる望遠鏡で見つけた約128億8000万光年先の銀河。宇宙誕生は約137億年前と考えられ、今回の発見が事実なら、誕生直後の宇宙を知る重要な手がかりとなる。

 発表したのは、米カリフォルニア工科大と英仏などのチーム。ハワイの米ケック望遠鏡で、星の形成が続いている「先例のない遠さ」の六つの銀河を観測し、地球からの距離を割り出した。リーダーのリチャード・エリス同工科大教授は「宇宙誕生からわずか約5億年後の銀河」という。

 光が銀河団などのそばを通る際、巨大な重力で進路が曲がる「重力レンズ」効果を利用。6個の銀河の光は、地球との間にある銀河団による重力レンズ効果で約20倍に増幅されるといい、これを3年間かけて解析した。ただ、エリス氏は「疑い深い人たちは、さらなる証拠を求めるかもしれない」と、発見に異論が出る可能性を認めている。

宇宙は誕生からしばらく星のない「暗黒時代」が続き、その後、星や銀河の形成が始まる「宇宙の夜明け」を迎えたと考えられている。最初の銀河の形成は宇宙誕生から数億年後とされ、日本も含めて各国が「より古い銀河」の発見にしのぎを削っている。
 
 これまでの「最遠銀河」を観測した国立天文台チームの家正則・教授は「重力レンズという新しい方法で得られた非常に大きな成果。ただ、とても暗いので確認作業が重要になるだろう」と話している。 (asahi.com 2007年07月23日)


 ハッブルが、最も遠い銀河発見
 2011年1月には、地球からろ(炉)座の方向に約132億光年も離れた所にある銀河とみられる天体が、欧米のハッブル宇宙望遠鏡で観測された。これまでに観測された最も遠い銀河より約1億5000万光年遠く、記録を更新した。観測成果は2011年1月27日付の英科学誌ネイチャーで発表された。

 米航空宇宙局(NASA)によると、宇宙は約137億年前にビッグバンで誕生したとみられ、初期の宇宙では星が予想以上に速いペースで増えたことが分かった。この「銀河」のサイズは小さく、地球がある銀河系(天の川銀河)の約100分の1という。

 宇宙で最初の星や銀河を発見することは、天文学の最大テーマの一つ。NASAはハッブルの後継となるジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を開発しているほか、日本の国立天文台を含む国際研究グループは次世代超大型望遠鏡「TMT」をハワイ・マウナケア山に建設する計画を検討している。(2011/01/27 時事通信)


参考HP Wikipedia:銀河 国立天文台:すばる望遠鏡が見つけた宇宙最遠方の銀河団


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