宇宙で目に見える物質はたった4%
 宇宙が何でできているかを調べてみると、われわれが知っている、陽子や中性子など”目に見える”(観測されている)物質は全体の約4パーセントにすぎない。その5~6倍は未知の物質(ダークマター)が占めていると考えられている。残りはダークエネルギーと呼ばれている正体不明のもの。これまで観測に利用されてきたのは、光やX線、赤外線などの電磁波だが、”暗黒”物質というのは、電磁波での観測では見ることができないため、”暗黒(ダーク)”という呼び名がついている。

 1986年に発見された宇宙の大規模構造が作られるまでの時間をシミュレートした結果、ビッグバン宇宙論から導き出されている137億年といった宇宙の年齢とはかけ離れた長い歳月を必要とすることが明らかになった。そのため、ビッグバン宇宙論が間違っていて修正が必要ではないかという見解が生まれたが、まもなく暗黒物質の存在を仮定すると、ビッグバン宇宙論と矛盾しない時間の範囲内でも、現在のような銀河集団の泡構造が出来上がることが明らかにされた。

 そこで、宇宙全体にどの程度の暗黒物質や暗黒エネルギーが必要なのか、繰り返しシミュレーションが行なわれている。その結果、ダークマターを含めた物質を約30%、ダークエネルギーを約70%にした場合にうまくいくことが確認されている。 2003年から、宇宙背景放射を観測するWMAP衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきた。この観測結果は、宇宙の大規模構造のシミュレーションから予測されているダークマターの値と、ほぼ一致している。このように2つの方法から推測したダークマターの量がほぼ合うということから、この考えの妥当性が図られている。 

Gravitational lens

 暗黒物質は太陽系の近くにはないかもしれない
 天の川銀河の星の動きを詳しく観測し、太陽系の近くにあるとみられる大量の暗黒物質(ダークマター)を検出しようという研究がチリのグループによって行われた。だが、暗黒物質の痕跡は見つからなかった。理論と観測的事実の違いはなぜなのか、新たな謎が生まれた。

 「暗黒物質」(ダークマター)は光では観測できず、周囲の物質との重力的な相互作用でしか存在が確認できない不思議な物質である。宇宙を構成するこの謎の物質は、もともとは銀河外縁部の高速回転を説明するために提唱されたものだった。高速回転にも関わらず物質が銀河から飛んでいくことなくつなぎとめられたまま存在できるのはなぜか。その理由が、見えない暗黒物質による重力作用によるものとされたのである。暗黒物質はいまや、銀河の形成進化理論の要ともなっている。暗黒物質は宇宙の全質量の約80%を占めていると考えられているが、実際それがどんな物質なのかは未だよくわかっていない。

 暗黒物質の存在を調べるため、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のラ・シーヤ観測所で、太陽から1万3000光年以内にある400個以上の星の動きが測定された。この新しいデータから研究チームは、従来よりはるかに大きな規模で太陽近傍空間に存在する質量を計算した。

 銀河面から離れた多数の星の動きを注意深く測ることで、そこにある物質の質量を求めることができる。それらの動きは星や暗黒物質を含む全ての物質の重力相互作用の結果であるからだ。

 「計算から得られた質量は、星や塵、ガスなど目に見える物質の量とぴったり一致します。意外なことに、暗黒物質に当たる質量は残りませんでした。暗黒物質が存在するのなら確実に結果に現れているはずですが、それがなかったのです」(スペイン・コンセプシオン大学のChristian Moni Bidin氏)。

 従来の銀河形成モデルによれば、大量の暗黒物質が天の川銀河を球状(ハロー構造)に取り囲んでいる。その構造の詳しい形状は不明だが、太陽近傍で非常に多い量が見つかると予測されていた。だが、暗黒物質に当たる質量が見つからなかったという今回の結果からは、このハロー構造は、たとえば極端な楕円形といった予想外の形状をしているということになる。少なくとも、私たちの近くには存在しないかもしれない。

 今回の研究成果により、暗黒物質と普通の物質との相互作用をとらえることで地上から暗黒物質を検出しようとする試みがうまくいかないという見通しも示された。

 「しかし、この結果があっても、天の川銀河が目に見える物質だけを考慮した場合より高速回転しているということには変わりありません。期待していた場所で見つからなかったら、新しい解決案を考えなければなりません。我々が出した結果は、現在受けいれられているモデルをきっぱりと否定してしまいました。暗黒物質の謎は、これでさらに深まったのです」(Christian Moni Bidin氏)。(2012年4月23日 ヨーロッパ南天天文台)

 宇宙を満たすダークマター
 宇宙の構造形成をひきおこす重力の源となる物質のほとんどは、我々がよく知っている物質を構成する水素や酸素、炭素といった通常の元素ではなく、正体不明の物質であると分かっている. 「暗黒物質」や「ダークマター」あるいは「ミッシングマス」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。「正体不明のものが存在するとわかっている」とは何だかとても奇妙な言い方であるが、暗黒物質の存在は、特殊な観測や理論から導かれたのではなく、様々な観測結果から共通に示唆されており、ほぼ事実といってよい。以下にその根拠となる代表的な観測事実を挙げる。

・銀河の回転速度が、星の存在しない外側領域でも大きく減少しないこと
・銀河団内の構成銀河の速度分散が非常に大きいこと
・多くの銀河団に見られる重力レンズ現象
・宇宙の大規模構造の形成

 これら全ての観測結果を説明するためには、大量の「目には見えないが重力相互作用をするもの」を持ち出さなくてはならない。(東京大学 吉田直紀

 暗黒物質の発見
 暗黒物質の存在は、1934年にフリッツ・ツビッキーによって銀河団中の銀河の軌道速度における"欠損質量" (missing mass) を説明するために仮定された。彼は、ビリアル定理をかみのけ座銀河団に適用し未観測の質量の証拠を得た。
 ツビッキーは、銀河団の全質量をその周縁の銀河の運動に基づいて推定し、その結果を銀河の数および銀河団の全輝度に基づいて推定されたものと比較した。そして、彼は光学的に観測できるよりも400倍もの推定される質量が存在することを発見した。
 銀河団中の可視的な銀河の重力はそのように高速な軌道に対して小さすぎるので、何らかの外部要因が必要であった。これは"質量欠損問題" (missing mass problem) として知られている。これらの結論に基づき、ツビッキーは銀河団を互いに引き寄せる十分な質量や重力を及ぼす目に見えない物質が存在するはずであると推測した。
 その後、宇宙の暗黒物質の存在を示唆する観測が報告されている。銀河の回転速度、弾丸銀河団のような銀河団による背景物体の重力レンズ効果、そして銀河および銀河団を取り巻く熱い気体の温度分布などの観測結果である。
 暗黒物質の存在の間接的な発見は、1970年代にヴェラ・ルービンによる銀河の回転速度の観測から指摘された。水素原子の出す21cm輝線で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができた。この結果と遠心力・重力の釣り合いの式を用いて質量を計算できる。すると、光学的に観測できる物質の約10倍もの物質が存在するという結果が出た。

 この銀河の輝度分布と力学的質量分布の不一致は銀河の回転曲線問題と呼ばれている。この問題を通じて存在が明らかになった、光を出さずに質量のみを持つ未知の物質が暗黒物質と名付けられることとなった。なお、暗黒物質を仮定せずにこれらの問題を解決する方法も提唱されている。(Wikipedia)

 本当は存在しない?暗黒物質
 宇宙には現在の観測技術には引っかからない暗黒物質が満ちている。その質量は宇宙の全物質の96%にも及ぶ。もしこうした暗黒物質を想定せず、目に見える星や電波などで観測できる天体だけしか存在しないとすると、銀河や銀河団は自らの重力が足りず、バラバラになってしまう。これが暗黒物質論だ。

 この結論は現在の物理法則が宇宙ですべて成り立っていることを前提にしたものだが、数多くの研究が続けられたにもかかわらず、暗黒物質の正体は一向に見えてこない。それならいっそのこと,現在の物理法則がある条件下では成り立っていないとしたらどうか。著者のミルグロムはこんな発想の大転換を試みた。

 「力は加速度に比例する」という有名なニュートンの第2法則を,極めて小さな加速度の下では「加速度の2乗に比例する」とした修正ニュートン力学を提唱したのだ。不思議なことにこのように修正を施すと,暗黒物質の存在を想定しなくても驚くほど矛盾なくさまざまな観測結果を説明できる。そのうえ修正ニュートン力学が予想したいくつもの現象も,その後の観測で確認された。(M.ミルグロム 日経サイエンス 2002年11月号)

 参考HP アストロアーツ 暗黒物質は太陽系の近くにないかもしれない National Geographic news 暗黒物質1分に1個が人体に衝突?

宇宙を支配する暗黒物質(ダークマター)とは何か!?―人類起源から量子論まで、解かれざる謎に最新科学が挑む (PHPビジネスライブラリー)
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4%の宇宙 宇宙の96%を支配する“見えない物質”と“見えないエネルギー”の正体に迫る
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