H2A打ち上げ成功
 2012年5月18日午前1時39分、韓国航空宇宙研究院の多目的実用衛星「KOMPSAT-3」(愛称・アリラン3号)など、4基の衛星を搭載したH2Aロケット21号機が、鹿児島県のJAXA種子島宇宙センターから打ち上げられた。衛星はいずれも予定軌道に入ったことが確認され、打ち上げは成功した。

 アリラン3号は、三菱重工業が初めて海外から商業打ち上げを受注した衛星で、高解像度の光学カメラで詳細な地上画像を撮影する。同時に打ち上げられた宇宙航空研究開発機構(JAXA)開発の水循環変動観測衛星「GCOM-W1」(愛称・しずく)は、直径2メートルの大型アンテナで、地表の水が放つ電磁波をとらえて、地球全域の降水量や海面水温などを観測する。干ばつや地球温暖化の予測、漁業の効率化などに役立てる。

 ほかの2基は、地上で開発中の各種機器・装置などの試験を行うJAXAの小型実証衛星「SDS -4」、宇宙空間で300ボルト高電圧発電などを目指す九州工業大学の小型衛星「鳳龍(ほうりゅう)弐号」。

Shizuku

 H2Aロケットの打ち上げは、2003年の6号機の失敗後、今回が15回連続の成功で、成功率は95.2%となった。本格的な「世界の打ち上げビジネス」への参入には、1回に70億-100億円かかるといわれる打ち上げ費用の低減、約3.5トンとされる積載能力の増大などが課題とされる。(サイエンスポータル 2012年5月18日)

 H2A初のビジネスロケット
 国産ロケット「H2A」が、初めて海外から受注した韓国の人工衛星を載せて、打ち上げに成功した。コスト高などの課題を乗り越えて、技術の進化と宇宙ビジネスの拡大を目指してほしい。

 H2Aの打ち上げ成功は、今回で十五回連続。過去二十一回のうち失敗は一回だけだ。昨年十二月の打ち上げで、国際的な信頼性の目安とされる95%に達した成功率はさらに上がった。海外の人工衛星を載せた実績ができたことと合わせ、衛星打ち上げの宇宙ビジネスに乗り出す節目の一歩といえる。

 ただ、手放しで喜んではいられない。三菱重工業が、宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)から打ち上げ業務を引き継いだ2007年以降、海外から百件を超す引き合いはあったが、実際の受注は今回の一件のみ。それも、韓国の多目的観測衛星「アリラン3号」単独でなく、水環境を観測する宇宙機構の衛星「しずく」と相乗りさせることで、料金を割安にしたことが受注につながったようだ。

 課題はコストダウン
 通常の打ち上げ費用が高いことが、受注の大きな足かせとなっている。一回分の費用は、H2Aの85億~100億円に対し、先行する欧州やロシアのロケットは80億円程度とされる。さらに米国のベンチャー企業は、H2Aの半額程度で参入してきた。

 赤道上空の静止軌道に衛星を投入するには、赤道周辺からの打ち上げが効率的だが、H2Aの発射場は緯度の高い種子島にあり、その分、余計に燃料が必要。コストが膨らむのに加えて、搭載能力は落ちる。このため打ち上げられるのは四トン程度の衛星までという。世界の人工衛星は大型化が進んで大半が4トンを超えており、H2Aの能力が需要に対応しきれていないのも、克服しなければならない課題だ。

 三菱重工は、コスト削減に向けて、特注で高価な専用部品を、自動車や航空機の汎用(はんよう)性のある部品で代替することなどを検討している。今回の成功をビジネス拡大の弾みとするため、いっそうの企業努力が求められる。

 同時に、政府による支えも重要だ。コスト削減と安定生産に必要とされる年四回の打ち上げや実績づくりのために、通信や観測衛星など、継続した官需による利用は欠かせない。官民の連携はもとより、宇宙利用の新たな需要を掘り起こそう。日本の科学技術の高さを示す航空宇宙産業を大きく育てたい。(東京新聞 2012.5.22)

 「しずく」、地球環境を監視
  「地球環境変動観測ミッション(GCOM: Global Change Observation Mission)」は、地球規模での気候変動、水循環メカニズムを解明するため、全球規模で長期間(10~15年程度)の観測を継続して行えるシステムを構築し、そのデータを気候変動の研究や気象予測、漁業などに利用して有効性を実証することを目的としたミッション。

 GCOMには水循環変動観測衛星(GCOM-W)と気候変動観測衛星(GCOM-C)という2つのシリーズがあります。マイクロ波放射計を搭載するGCOM-Wは降水量、水蒸気量、海洋上の風速や水温、陸域の水分量、積雪深度などを観測する。「しずく(GCOM-W1)」は、GCOM-Wシリーズの第1期の人工衛星。(JAXA)

 宇宙で回る世界最大の回転アンテナAMSR2 
 「しずく(GCOM-W1)」に搭載される高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)は、地表や海面、大気などから自然に放射されるマイクロ波とよばれる電磁波を、7GHzから89GHzまでの6つの周波数帯で観測するセンサー。自然に放射されるマイクロ波の強度は、物の性質や含まれる水分量、表面の状態や温度などで決まり、周波数ごとに異なる、非常に微弱なものだ。AMSR2はこのような微弱なマイクロ波を地上700kmで受信し、そのマイクロ波の強さを非常に高い精度で測定することができる。例えば、AMSR2で海面から放射されるマイクロ波の強度を測定することにより、0.5度の精度で海面水温を知ることができる。

 地上からのマイクロ波を受信するAMSR2のアンテナ部分は、1.5秒間に1回転のペースで地表面を円弧状に走査し、1回の走査で約1,450kmもの幅を観測する。この走査方法によって、AMSR2はわずか2日間で地球上の99%以上の場所を観測することができる。アンテナの直径は衛星搭載用の観測センサとしては世界最大の約2m、回転部分は高さが約2.7mで、重さは約250kgもある。AMSR2は、このような大きくて重いアンテナ部分を、1.5秒間に1回転という速さで、1日24時間、5年以上も休まずに回転し続けることができる。(JAXA)

参考HP JAXA:しずく特設サイト

宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業 Vol.1 (日本の宇宙産業 vol. 1)
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