接近中の小惑星、衛星に衝突の可能性も
 最近は観測技術の向上からか、地球に接近する小惑星が多く発見されている。最近、NASAは5月16日、地球に衝突して被害をもたらす危険のある小惑星は約4700個もあることを発表した。

 発見されたばかりの小惑星「2012 DA14」という惑星も、2013年2月に地球の近傍を通過する。その際に通信衛星と衝突する可能性が指摘されている。カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)で惑星天文学の研究を行っているポール・チョーダス(Paul Chodas)氏は、「衝突の確率は極めて低いが、完全には排除できない」と語る。
 
 2012 DA14は2012年2月に、スペイン南部のラサグラ天文台(Observatorio Astronómico de La Sagra)で発見された。JPLのスティーブ・チェスリー(Steve Chesley)氏によると、望遠鏡では「ぼんやりとした小さな塊」にしか見えないという。
 
 推定の直径はわずか45メートル。だが、「今のところ軌道が地球と非常に近いため、定期的に異常接近することになる」とチョーダス氏は話す。

Asteroid

 最新の予測によると、2013年2月15日に地球へ大接近し、人工衛星がいくつか破壊される可能性があるという。ただしチョーダス氏によると、高度約2000キロ以下の低軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)に危険が及ばない。
 
 しかし2012 DA14の軌道は現在も微妙に変化している。チェスリー氏は、「正確な位置は特定されておらず、軌道の予測には常に不確定性が伴う」と言う。

 2012 DA14はいずれ地球に衝突?
 NASAでは、今後数十年の間に地球へ衝突する確率を0.031%としている。2013年2月の大接近時に得られるデータによって、数値は若干修正されることになるだろう。
 
 来年の可能性は低くても、次回の最接近(2020年)以降はどうなるか誰にも分からない。

 その危険性を評価するための手掛かりとなるのが、来年2月の接近距離である。近くに寄れば地球の引力によって軌道が変わる度合いが大きくなり、今後の予測の不確定性も増すからだ。
 
 もちろん2012 DA14は非常に小型なので、2020年以降に地球に衝突したとしても人類の文明が崩壊する事態には至らないだろう。しかも接近方向から予想すると、地点は南極周辺の可能性がかなり高い。
 
 ただしチョーダス氏らNASAの専門家が計算したところ、14万トンの質量が陸地に衝突すれば2.4メガトン(TNT火薬240万トン)に匹敵するエネルギーが放出されるという。
 
 一方、海に落ちた場合には津波が発生するおそれもあるが、「それほど大きくはないだろう」とチョーダス氏は推測する。

 「存在を知ること」が危険回避の要
 小惑星の専門家であるセントラルフロリダ大学のウンベルト・カンピンス(Humberto Campins)氏は、2013年の大接近を期待している。「不明な点が多かった小惑星を詳細に研究できる絶好の機会だ。将来は衝突を回避するために軌道を変える必要があるかもしれない。学術的な成果だけでなく、今後に役立つ情報も期待している」。
 
 カンピンス氏と同意見だというJPLのチェスリー氏は、2012 DA14の発見は朗報だと語る。「地球近傍小惑星(地球に接近する軌道の小惑星)の存在が明らかになれば、監視下に置くことができる。真に危険なのは、まだ知られていない天体だろう」。(Richard A. Lovett for National Geographic News May 18, 2012)
 
 地球衝突し被害及ぼす危険ある小惑星は4700個
 米航空宇宙局(NASA)は5月16日、地球に衝突して被害をもたらす危険のある小惑星は約4700個とする推計を発表した。

NASAは広域赤外線探査衛星「WISE」から送られた画像を解析し、直径100メートルを超す大きさで、地球から800万キロ以内を通過する可能性のある小惑星の数を調べた。その結果、プラスマイナ1500個の誤差で、4700個がこの条件に当てはまることが分かった。800万キロは地球から月までの距離の約20倍にあたる。

これについてNASAの専門家は「パニックに陥る必要はない。しかし注意は払っている」と話す。

NASAでは大気圏突入で燃え尽きず地球に落下して、周辺地域に被害をもたらし得る大きさの小惑星を、潜在的に危険な小惑星に分類している。今回の推計は、これまでの大まかな推計よりも全体の数は減ったが、地球の軌道と交差する可能性がある小惑星の数は増えた。

もし直径40メートルの小惑星が地球に衝突した場合、3メガトンの核爆弾に匹敵する威力を伴うとNASAは予想。直径2キロの場合は世界的規模の甚大な環境被害が見込まれる。ただしそれほどの規模の小惑星衝突が起きるのは100万年に2回程度だという。

 WISEは2009年12月に打ち上げられ、搭載している直径約40センチの赤外線望遠鏡で小惑星が放出する熱をとらえることで、非常に暗い小惑星も見つけられるようになった。潜在的危険があるとされた4700個の小惑星のうち、これまでに発見されていたのは20~30%にすぎないという。(2012.05.17 CNN) 

 地球近傍小惑星とは?
 地球近傍小惑星とは、地球に接近する軌道を持つ天体(地球近傍天体、NEO (Near Earth Object))のうち小惑星のみを指す。英語でNEAs (Near Earth Asteroid) と呼ばれることもある。NASAによると地球に接近するために監視が必要とされるものは約8500個とされる。軌道計算では、これらの小天体は今後少なくとも100年間は地球に衝突する恐れはないとしている。

 地球近傍小惑星の起源は3つあると考えられている。1つ目は、揮発成分を失った短周期彗星であり、いくつかの小惑星にはかすかな尾が観測されている。2つ目は、エッジワース・カイパーベルトである。そして、3つ目は木星との重力の相互作用により小惑星帯から弾き飛ばされた、というものである。

 地球に接近する小惑星はその軌道要素からアポロ群、アモール群、アテン群の3つに大別される。 そのため、地球近傍小惑星はアポロ・アモール・アテン型小惑星、AAA天体と呼ばれることもある。

 なお、これらは地球や水星、金星、火星などを通過するときに摂動を受けるので軌道が変わりやすく、長期の追跡調査が必要である。実際に発見後、数十年間に渡って行方不明となっていた小惑星が存在する((719) アルベルト、(29075) 1950 DA、(69230) ヘルメスなど)。

 白亜紀の終わりの地層に発見されたK-T境界(白亜紀 - 第三紀境界層)は、巨大な彗星か隕石の衝突によってもたらされたことがわかって来たが、その元として地球近傍小惑星の存在が浮上してきた。

 天体の地球への衝突の脅威は、1994年7月16日のシューメーカー・レヴィ第9彗星の木星への衝突により広く知られるようになった。木星へは、地球以上に多くの天体が衝突していると考えられている。

 直径1kmほどの小惑星の地球への衝突は100万年に数回、5kmほどの小惑星の衝突は1000万年毎、小天体の衝突は毎月2、3回起こっていると考えられている。

 地球近傍小惑星最近の記録
 これまでに数回間違った警報が出ているが、多くの小惑星が地球に衝突する危険性があることが知られている。2002年4月、NASAはアポロ群の小惑星 (29075) 1950 DA(直径1.1km)が2880年3月16日に0.3%の確率で地球に衝突すると発表した。この確率は他の小惑星の危険性の1,000倍に当たる。

 2004年には、それまでの地球接近記録を更新する2個の小惑星が発見された。3月18日にアテン群の小惑星 2004 FH(直径30m)が地球の表面からの距離4万2740kmまで接近し、3月31日には同じくアテン群の 2004 FU162(直径6m)が同6,350kmまで接近した。

 2006年7月3日には、2004 XP14が地球から約42万kmの位置を通過した。

 2008年10月7日には、2008 TC3が発見からわずか20時間で大気圏に突入し、スーダン上空での爆発が人工衛星から確認された。その後、多数の破片が落下現場から隕石として回収された。

 2010年9月8日には、共にアテン群の 2010 RX30(直径12m)、2010 RF12(直径7m)が発見から3日後に地球からそれぞれ24万8000kmおよび7万9000kmの位置を通過した。そのうち 2010 RX30は日本上空を通過している。

 2011年2月4日には、2011 CQ1(直径1.3m)が、地球表面からわずか5,480kmの位置を通過し、衝突しなかった小惑星の接近最短距離を更新した。あまりにも近くを通過したため、地球の重力によって 2011 CQ1の軌道は60度も折れ曲がった。

 2011年6月28日、スクールバスほどの大きさの小惑星が地球をのすぐそばを通過していった。 2011 MDと命名されたこの浮遊天体は、地表から約1万2000キロ上空を通過した。月までの距離の約30分の1の近さだった。この小惑星は、6月22日にマサチューセッツ工科大学(MIT)のリンカーン地球近傍小惑星探査(LINEAR)計画の研究者により発見された。大きさは幅約6~14メートルと見積もられた。計測によると、最高速度は時速約10万1000キロだった。

 2011年11月8日から9日にかけて、「2005YU55」が、地球から32万5000kmのところを通過した。2005 YU55は直径400mもあり、これほどのサイズの小惑星が接近するのは観測史上初めてである。

 このように、地球近傍小惑星はその軌道によっては地球に衝突する可能性も考えられる。小さな小惑星の衝突でも甚大な被害が、予測されることから、これらの小惑星を発見し監視するためのプロジェクトが世界各地で行われている。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia:地球近傍小惑星 National Geographic news:接近中の小惑星、衛星に衝突する可能性も 小惑星再接近、月の内側を通過

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