太陽の活動、過去20年で低下
 太陽の活動が過去20年間で次第に低下していることが分かったと国立天文台と米航空宇宙局(NASA)の研究チームが31日、発表した。今後10~20年は低下傾向が続くとみられる。地球の寒冷化や温暖化抑制への影響は不明としている。

 太陽は黒点が増えて活動が活発化する極大期と、黒点が減り静穏になる極小期を約11年周期で繰り返す。研究チームは国立天文台の電波望遠鏡(長野県)で観測した平成4~24年のデータを解析。2012年4月の極大期の前後について北極・南極周辺の活動を比較した結果、最近の約10年間はそれ以前と比べて活動の強さが約3割低下したことを突き止めた。

 太陽活動が低下すると、地球を包む太陽の磁場が弱まり、地球に届く宇宙線が増加。大気中の水蒸気と反応して雲ができやすくなり、日射量の減少などで地球が寒冷化するとの説がある。現在の太陽は17~18世紀の寒冷期と同じ磁場の異変が起きているとの研究も先月発表された。

 今回の解析結果について同天文台の柴崎清登(きよと)教授は「気温との因果関係はまだ不明。地球の気象は複雑で、寒冷化の根拠になるとはいえない」としている。(産経news 2012.6.1)

Diagram

 南北半球で周期のずれ
 金環日食や金星の太陽面通過などで観察の機会が増えてきた太陽。その電波と磁場の20年間にわたる観測から、太陽活動が徐々に低下し、また両半球で周期のずれが起こっていることがわかった。

 野辺山電波へリオグラフは太陽電波観測専用の電波干渉計。口径80cmのパラボラアンテナ84基からなり、1992年から20年間、周波数17GHzで太陽の全面像を撮像している。
 
 NASAおよび国立天文台野辺山太陽電波観測所の研究者らは、野辺山電波ヘリオグラフ(画像1枚目)による電波観測と米キットピーク国立天文台などによる磁場観測データを用いて、過去20年間にわたる太陽の活動を、極域を含む全球レベルで追跡した。

 画像2枚目は、太陽磁場(上図)と電波(下図)の強度分布の変化を表したものだ。磁場観測では、よく黒点の数で表されるような低緯度での活発度を、電波観測では、磁場では観測が難しい極域の活発度を、それぞれ見ることができる。

 縦の点線は太陽活動の極小期にあたる時期を示しているが、下図を見ると、極域での活発度は1996年よりも2008年の方が低くなっていることがわかる。

 また2012年3月には、極域での電波減少と磁場のN極S極の逆転から、北半球では太陽活動がピークになっていることがわかる。一方で南では高緯度での電波強度は高いままで、南半球全体としては未だ活動ピークに向けて上昇中のようだ。

 また、北半球では「高緯度の電波が強いときは低緯度で弱く、高緯度が弱いときは低緯度で強い」という逆相関性が見られるが、南半球ではそれも崩れてしまっており、高緯度と低緯度の活動がずれていることもわかった。

 これらの結果は、太陽観測の技術環境が整って以来初めて見られるものだという。今後もこの傾向は継続すると思われるが、17世紀~18世紀の「マウンダー極小期」のような時期が再来するのか、いつ回復するのかといったことは、はっきりとは予測できない。活動の正体である磁場(黒点、極域)の生成機構やその変動の原因は不明であり、現時点で根拠をもって回答することはできないという。

 今回の結果は太陽物理学の問題であるとともに、太陽活動に依存している惑星間空間や地球上層大気への長期間にわたる影響にも関わる。長期間にわたる安定した高品質のデータを得るとともに、太陽、惑星間空間、地球大気を総合した研究が必要であると研究チームでは述べている。(国立天文台)

 太陽観測衛星「ひので」、太陽極域磁場の反転を捉えた
 「ひので」は先代の太陽観測衛星「ようこう」の観測成果をさらに発展させることを目標に開発、2006年9月23日に打上げられた。コロナ加熱問題や、太陽フレアなどコロナ内部における爆発現象の発生過程の解明、特にそれらの太陽磁場の微細構造との関係を詳細に掘り下げて調べることが主な目的である。

 実用的な目的としては、宇宙天気予報の基礎を築くことが挙げられる。フレアによって放出された宇宙プラズマは地球磁気圏との相互作用によって磁気嵐を発生させ、これらが人工衛星の故障や宇宙飛行士の健康被害、無線通信障害、送電線の異常電流などの原因となっている。2004年から2008年にかけて、CAWSESという宇宙天気予報のための国際的な取り組みがなされており、そのなかで当機は特に、フレアの発生を予測できるようになるための基礎研究に役立つと期待されている。

 太陽の極域磁場は、太陽活動の源泉である黒点の源となっていると考えられており、その振る舞いは、今後の太陽活動を予想する上でも大変重要。このため、これまで、地上の太陽望遠鏡により極性の反転が観測されていたが、分解能が足りないため平均的な磁場強度と極性がわかるだけで、太陽極域で何が起きているのかわからなかった。

 2007年9月に行われた、「ひので」衛星可視光・磁場望遠鏡の超高空間分解能と高精度偏光解析能力による観測によって、太陽極域に黒点と同じ磁場強度を持つ斑点状の磁場(大きな斑点状磁場)が存在することが初めて明らかとなった。(参考: 国立天文台プレスリリース『「ひので」衛星、太陽極域に強い磁場を発見!』)

 「ひので」衛星は、その後も極域の観測を、太陽活動の極小期をすぎ太陽活動が上昇しつつある4年間にわたり定期的に行った。その結果、予想される時期より約1年早く、北極磁場がほぼゼロの状態に近づいていることが、2012年1月の観測で発見された。すなわち、北極の磁場を担う斑点状の磁場の数が急速に減少し、低緯度から逆極性の斑点が現れた。この結果、現在太陽の北極域では、逆極性の磁場の大規模な消滅と極性の反転が発生していると考えられる。

 この観測の結果から、太陽の北極磁場がまもなくマイナスからプラスに転じると予想される。一方、驚くべきことに、南極では極性反転の兆候がほとんどみられず、安定してプラス極が維持されていることを、「ひので」は確認している。太陽の磁場は、大局的には双極子構造(例えば、太陽の南極がプラス、北極がマイナスの棒磁石のような構造)をしているが、今回の「ひので」の観測結果から、南北の両方がプラス極になる四重極構造になると想定され、「ひので」の観測データを用いた太陽の磁場構造の把握を数値計算によって行っているところである。(2012年4月19日 国立天文台)

参考HP サイエンスポータル:太陽活動に異変、地球寒冷化の兆候か? Wikipedia:太陽黒点 国立天文台:太陽のグローバルな活動状況

太陽と地球のふしぎな関係―絶対君主と無力なしもべ (ブルーバックス)
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講談社
太陽の科学―磁場から宇宙の謎に迫る (NHKブックス)
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日本放送出版協会

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