がん攻撃のT細胞をiPS細胞から作製 
 あらゆる細胞に変わる能力を持つ、人間のiPS細胞(新型万能細胞)から、がんやウイルス感染細胞を攻撃する、免疫系のT細胞を作り出すことに、東京大学医科学研究所が成功した。
 
 T細胞は最初は攻撃能力がなく、様々な異物と遭遇しながら能力を獲得する。今回、エイズ患者のT細胞からiPS細胞を作製、そこから再びT細胞を作ったが、細胞の状態が激しく変化する過程を経ても、T細胞は攻撃能力獲得前に戻ることはなかった。T細胞を効率的に作製し、がんやエイズの免疫治療に道を開く成果で、横浜市で開かれる日本再生医療学会で6月14日に発表する。
 
 医科研の金子新助教らは、細胞を変化させる独自の培養法を開発。できたT細胞の遺伝子を調べ、攻撃能力を保持していることを確認した。今後、動物実験で、作製したT細胞を使った治療効果を確かめるという。(読売新聞 6月10日)

 T細胞とは何か?
 T細胞(T cell、T lymphocyte)とは、リンパ球の一種で、骨髄で産生された前駆細胞が胸腺での選択を経て分化成熟したもので、細胞表面に特徴的なT細胞受容体(T cell receptor;TCR)を有している。末梢血中のリンパ球の70〜80%を占める。名前の『T』は胸腺を意味するThymusに由来する。

 1968年にG. F. MitchelおよびJ. F. A. P. Millerにより、初めてマウスの胸管リンパ中に19S溶血素(抗ヒツジ赤血球抗原IgM抗体)産生細胞前駆細胞(すなわちB細胞)及び、その前駆細胞を抗原依存性に19S溶血素産生細胞へと分化させる細胞(すなわちT細胞)における、二つのリンパ球亜集団が存在することが見出された。

 細胞表面のマーカー分子としてCD4やCD8などを発現している。CD4を発現したT細胞は他のT細胞の機能発現を誘導したりB細胞の分化成熟、抗体産生を誘導したりするヘルパーT細胞として機能する。このCD4陽性T細胞は、後天性免疫不全症候群 (AIDS) の病原ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス (HIV) や、成人T細胞白血病 (ATL) の病原ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) が感染する細胞である。

 CD8陽性T細胞はウイルス感染細胞などを破壊するCTL(キラーT細胞)として機能する。 また、NK細胞とT細胞の性質を併せ持つNKT細胞や、CD25分子を発現して他のT細胞の活性を抑制する働きのあるレギュラトリーT細胞などもある。最近では胸腺を介さずに分化成熟する末梢性T細胞が存在することも知られるようになった。(Wikipedia)

 iPS細胞で人の肝臓作製 再生医療に応用期待 横浜市立大など成功
 さまざまな細胞になる能力がある人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、マウスの体内で人間の小さな肝臓を作り出すことに横浜市立大などのチームが成功したことが、6月8日までに分かった。肝不全の患者に作った臓器を移植する治療や、医薬品の開発に応用できる可能性がある。

 これまでも、人のiPS細胞から肝細胞を作る研究はあったが、複雑な立体構造を持つ臓器を作るのは難しかった。チームは今回、人のiPS細胞が肝細胞に変わる手前の「前駆細胞」という細胞に、血管を作る細胞と、細胞同士をつなぐ役割をする細胞とを加えて数日間、培養。直径約5ミリに成長した肝臓のもとを、マウスの頭部に移植した。

 すると、数日間で血管網ができた。2カ月後には人に特有のタンパク質を作り、薬物を分解するなど、肝臓と似た働きをすることを確認した。成果は、横浜市で開かれる日本再生医療学会で、14日に発表する。

 iPS細胞から“ヒトの肝臓”
 体のあらゆる組織や臓器になるとされるiPS細胞からヒトの肝臓を作り出すことに、横浜市立大学の研究グループが成功した。研究グループによるとと、立体構造を持ち血液の流れのある臓器ができたのは初めて。

 この研究を行ったのは、横浜市立大学大学院の谷口英樹教授らのグループ。研究グループでは、ヒトのiPS細胞を「肝前駆細胞」と呼ばれる肝臓の元になる細胞に変化させたあと、血管を作り出す細胞と細胞どうしをつなぎ合わせる働きを持つ細胞を加えて、数日間、一緒に培養した。

 そして、大きさが5ミリほどに成長した細胞の塊をマウスの体内に移植したところ、血管がつながって血液が流れ始め、ヒトの肝臓と同じようにタンパク質を作ったり薬を分解したりする働きのあることが確認できたということ。

 立体構造を持ち、血液の流れのある臓器ができたのは世界で初めてだということで、谷口教授は「立体構造で本物と同じように働く臓器を作ることは、これまでとても難しいとされてきた。今回の方法は細胞が本来持っている臓器になろうとする働きを引き出すやり方だ。臓器作りが進むきっかけになるのではないかと思う」と話している。(NHK news 6月8日)

 iPS細胞:90%以上を肝細胞に
 あらゆる組織や臓器の細胞になる胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を効率よく培養し、90%以上を肝細胞にする新技術を、赤池敏宏・東京工業大教授(生体材料工学)のチームがマウスで開発した。2011年1月14日、発表した。従来の効率は10%程度だった。今後、他の組織や臓器への応用が期待される。

 ES細胞やiPS細胞は塊になる性質がある。ほぐす過程で細胞が傷ついたり、他の細胞になる「分化」を促す物質が均等に行き渡りにくかった。

 チームは、細胞同士をくっつけるたんぱく質「カドヘリン」に着目。加工したカドヘリンを培養皿に敷き詰めた。その上で培養すると、ES細胞やiPS細胞が培養皿の上で塊にならず、均一に広がったまま増殖できた。さらに、分化を促す物質を与えると、90%以上の効率で肝細胞になった。がん化するとされる未分化の細胞はほとんど残らなかった。

 この道具は、細胞を料理するまな板のようだとして「細胞用まな板」と命名した。赤池教授は「医療として実用化するには大量で効率よく作ることが重要で、再生医療の実現に有用だ」と話す。(毎日新聞 2011年1月14日)

 iPS細胞とは何か?
 iPS細胞とは、 人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells)のことで、細胞を初期の状態に戻し、受精卵のようにさまざまな細胞や組織に成長する能力を持たせた細胞。京都大学の山中伸弥教授らのグループによって、マウスの線維芽細胞から2006年に世界で初めて作られた。

 山中教授は四つの遺伝子を、ウイルスを使って皮膚細胞に導入した。その後、遺伝子の数を減らすなどさまざまな作成法が発表された。再生医療に用いる場合はがんを作らない作成法が必要。病気の仕組みを解明したり、新薬の安全性確認への応用も期待されている。しかし、真の実用化までには、まだ課題がある。

 マウスの実験において表面化した最大の懸念は、iPS細胞の癌化であった。iPS細胞の分化能力を調べるためにiPS細胞をマウス胚盤胞へ導入した胚を偽妊娠マウスに着床させ、キメラマウスを作製した所、およそ20%の個体において癌の形成が認められた。これはES細胞を用いた同様の実験よりも有意に高い数値であった。

 この原因は、iPS細胞を樹立するのに発癌関連遺伝子であるc-Mycを使用している点と、遺伝子導入の際に使用しているレトロウイルスは染色体内のランダムな位置に遺伝子を導入するため、変異が起こり、内在性発癌遺伝子の活性化を引き起こしやすい点が考えられた。その後、山中教授らは発癌遺伝子を使用しないiPS細胞の作出に成功したが、作出効率が極めて低下(1/100といわれる)するとの問題があり、効率を改善する手法の開発が進められている。また、レトロウイルスを用いないでiPS細胞を作出する手法の開発も多くのグループにより進められている。 



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