毛嚢に免疫機能を発見
 毛嚢は“もうのう”と読む。毛穴より下にある髪の毛を取り囲む組織のことだ。髪の毛がつくり育てられていく過程で非常に大切な部分である。毛嚢が、皮膚と粘膜に存在する免疫細胞であるランゲルハンス細胞を表皮へと動員するきっかけを作ることが明らかになった。

 毛嚢は毛の成長、皮脂の分泌にかかわるとともに、表皮のさまざまな幹細胞の待機所の役割を担う。ランゲルハンス細胞は表皮に高密度に分布し、正常な状態では自己再生するが、ストレスのかかった状況の下では骨髄中の細胞によって補充される。

 Nagaoたちは、ストレスや炎症刺激が加わると、毛嚢の異なった領域からケモカインと呼ばれる可溶性メディエーターが分泌され、これがランゲルハンス細胞前駆細胞の表皮への移動を誘導することを明らかにした。

 ランゲルハンス細胞の役割 皮膚の異常をキャッチするセンサーの役目をしている樹状細胞。  発見者にちなんでドイツの医学者パウル・ランゲルハンスより名づけられている。膵臓に存在するランゲルハンス島と混同してはならない。

Langerhans cell

 骨髄で造られ、表皮(表皮有キョク層)まで来て存在する樹状細胞で、表皮全体の細胞数の2~5%を占めている。樹枝状の突起が有り、皮膚免疫を司る沢山のレセプター(受容体)を持ち、外部から侵入する細菌やウイルス、化学物質、かび、放射線、紫外線、温熱、寒冷等の刺激や、皮膚内部の状況を常に脳へ伝達し、皮膚の均衡を保つセンサーの役目を担っている。 (Wikipedia)

 遊走性で、細胞内の抗原輸送を担うバーベック顆粒(Birbeck granule)が有り、抗原を樹枝状の突起で取り込むとリンパ管を通って特定のリンパ節に移動し抗原をT細胞に提示しこれを感作する。感作されたT細胞が皮膚に移行して抗原に出会うとサイトカインを放出し、異物を殺傷したり炎症などを引き起こす。 ランゲルハンス細胞は老化した皮膚では、その数の低下が確認されており情報伝達が滞れば、微生物や化学物質などの異物は排除されず侵入を許し、皮膚や体の健康的な営みが損なわれることになる。

 毛はただの物理的バリアではない
 慶應義塾大学(慶応大)は6月25日、国内外での共同研究により、毛は外的刺激に反応して「樹状細胞」を皮膚に呼び寄せ、「毛嚢(もうのう)」の部位による異なる「ケモカイン」を発現し、樹状細胞の表皮内への進入を巧妙に制御していることを発見したと発表した。

 成果は、慶応大 医学部皮膚科学教室の永尾圭介専任講師、同天谷雅行教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間6月24日付けで英科学誌「Nature Immunology」電子版に掲載された。

 毛・毛嚢はすべての哺乳動物が持っている基本的な構造であり、外的刺激から体を守る重要なバリアを提供している。円形脱毛症、膠原病、ニキビなど毛嚢が傷害される炎症性皮膚疾患がよく知られているが、今まで毛嚢に能動的な免疫機能があるとは考えられていなかった。

 一方、2011年のノーベル生理学・医学賞の受賞対象(故・ラルフ・スタインマン博士)となった樹状細胞は白血球の一種で、免疫の起点となる重要な細胞だ。生体の最表面にある表皮には「ランゲルハンス細胞」という樹状細胞が全身を覆うネットワークを形成し、微生物などから生体を守っている。

 研究グループはランゲルハンス細胞がどのような機序で表皮に動員されるのかに興味を持ち、観察を行ったところ、樹状細胞と毛嚢との重要な関係が発見されたというわけだ。

 ランゲルハンス細胞は骨髄から発生することが知られているが、正確な起源は明らかではなかった。マウスを用いて解析したところ、骨髄の単球という白血球がランゲルハンス細胞前駆細胞となり、その後表皮の中でランゲルハンス細胞に分化することが確認されたのである。

 ランゲルハンス細胞前駆細胞が表皮へ入っていく際、常に毛嚢を経由していることがわかった。皮膚での外的刺激や炎症がこのプロセスを促す仕組みだ。

 ケモカインが、免疫細胞を呼び寄せる。 
 「2光子顕微鏡」という生体内を観察できる顕微鏡を用いて、物理的刺激を加えたマウスの皮膚を観察すると、白血球は刺激負荷後1.5時間後より毛嚢に集積することが判明また、ランゲルハンス細胞前駆細胞が表皮内に入るためには、特定のケモカインレセプター(受容体)を持っていなければならないこともわかった。

 これらの事実から、研究グループは、毛嚢にはケモカインを産生し、樹状細胞を呼び寄せる機構が存在するのではないかと考察。毛嚢の細胞を5つに分離し、遺伝子発現解析を行ったところ、毛嚢のある特定の部位にランゲルハンス細胞前駆細胞を呼び寄せるケモカインが産生されることが確認された。対応するケモカインの受容体がないと表皮への進入が阻害されることも示されたのである。

さらに、毛嚢の重要性を示すために、毛嚢を維持することができないマウスの皮膚に炎症を起こし、ランゲルハンス細胞前駆細胞の動員を誘導したところ、毛のある皮膚にはランゲルハンス細胞前駆細胞が表皮内に入ったのに対し、毛のない皮膚では入ることができないことが確認された。よって、ランゲルハンス細胞前駆細胞が表皮に入っていく際には毛嚢がゲートウェイとして重要な働きを担っていることが明らかになったのである。

また、毛の再生に重要な幹細胞を有する毛嚢隆起部では、ランゲルハンス細胞前駆細胞の進入を防ぐ別のケモカインが産生されており、毛嚢の部位により樹状細胞の進入を制御されていることがわかった。

 また、ヒトの疾患においても、毛嚢が残っている脱毛症(円形脱毛症)では、表皮内のランゲルハンス細胞が正常に認められたが、毛嚢が残っていない脱毛症(瘢痕性脱毛症)では、表皮内のランゲルハンス細胞がほぼ消失していた。

 ヒトの毛嚢においても、ランゲルハンス細胞を呼び寄せるケモカインはもちろん、円形脱毛症で関与が疑われるケモカインも毛嚢の特定の部位で産生されていることが判明。マウスだけでなく、ヒトでも毛嚢が免疫機能を有していることが強く示唆されたのである。 

 今回の成果により、毛嚢には今まで気づかれていなかった免疫機能が備わっていることがわかった形だ。単なる物理的バリアであると考えられていた毛嚢は、積極的に皮膚の白血球の交通を整理していたというわけだ。毛嚢に新たな存在意義が加わったといえるだろう。

 皮膚は全身を包む最大の臓器であり、微生物などの外来物質に対して活発な免疫応答が行われている。今回の研究により、毛嚢がこれらの調節に重要な役割を持っていることが明らかになった。今後皮膚での炎症、免疫を理解するための重要な基盤となることが考えられるという。

 目標は皮膚の免疫機能解明
 今回の研究では樹状細胞に着目して解析したが、毛嚢が呼び寄せるのは樹状細胞だけとは限らない。円形脱毛症や瘢痕(はんこん)性脱毛症ではリンパ球が毛嚢を破壊する。ニキビでは好中球という細胞が毛嚢で炎症を起こす。毛嚢が白血球を動員するメカニズムをコントロールできれば炎症を抑えることが可能となるはずだ。

 アトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)という皮膚疾患でもリンパ球を主体とした炎症が起きるが、毛嚢が炎症を起こす細胞を呼び寄せている可能性が考えられる。

 今回の研究にて明らかになった毛嚢による白血球の交通整理はアトピー性皮膚炎などの皮膚炎症の病態解明に役立ち、将来それを応用した新しい治療法開発の基盤となることが期待されると、研究グループはコメント。

 また、さまざまな感染症を予防するワクチンを接種する場所として、皮膚が最も効果的であることがわかっている。単に感染症といってもさまざまなものがあり、予防にはそれぞれの感染症に応じた特有の免疫応答が必要だ。望ましい免疫応答を促すために必要な細胞を呼ぶ。今回の研究の白血球動員制御機構は、より制御された新規ワクチンの開発戦略に寄与することが期待されるとも述べている。(マイナビニュース 2012/06/25)

参考HP Wikipedia:ランゲルハンス細胞 マイナビニュース:毛はただの物理的バリアではない

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