アカトンボが赤い理由
 アカトンボが赤いのは、もっている色素が酸化型から還元型に変わったためであることが、産業技術総合研究所・生物共生進化機構研究グループの二橋亮研究員と深津武馬・研究グループ長らの研究で分かった。

 鮮やかな赤色をしたアカトンボは成熟したオスだけで、メスや羽化したての未成熟のオスは黄色い体色をしている。そこで、アキアカネとナツアカネ、ショウジョウトンボの3種類のアカトンボの皮膚から色素を抽出し調べたところ、「オモクローム系色素」が共通して含まれる色素で、この色素は酸化剤によって黄色に変化し、還元剤によって赤色に変化した。

 成熟・未成熟のオス・メスのそれぞれの色素の酸化型、還元型の割合をみると、成熟したオスだけ還元型色素の割合が顕著に高かった。生きているアカトンボに、還元剤であるアスコルビン酸(ビタミンC)を注入したところ、未成熟のオスだけでなく、成熟メスも赤色に変化した。

 これまでは、多くのアカトンボ類のオスだけが赤くなるのは、婚姻色として性的に成熟したオスの識別やアピールのためと考えられてきた。今回の研究の結果、アカトンボの細胞は還元型色素により抗酸化状態になっていることから、アカトンボのオスが日なたで「縄張り」をつくる際に、紫外線による酸化ストレスを軽減しようとしている可能性も考えられるという。

Sympetrum frequens

 なお、この研究成果は、日本学術振興会の科学研究費助成事業・若手研究B「トンボの体色変化・体色多型の分子基盤の解明」と、文部科学省の科学研究費助成事業・新学術領域研究「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」によって得られた。(サイエンスポータル 2012.7.12)

 オモクローク系色素
 アキアカネ、ナツアカネ、ショウジョウトンボの3種類のアカトンボに含まれる色素の抽出と同定を行った。これらのアカトンボに共通して、黄色~赤色の色素である2種類のオモクローム系色素(キサントマチンと脱炭酸型キサントマチン)が含まれることがわかった。

 オモクローム系色素については、先行研究により試験管内で酸化還元反応により色が可逆的に変化することが報告されていた。今回、アカトンボから抽出した色素は酸化剤や還元剤を添加すると、酸化剤によって黄色へ、還元剤によって赤色へと可逆的に変化した。

 さらに、生きているアカトンボに還元剤であるアスコルビン酸(ビタミンC)を注入したところ、未成熟オスだけでなく成熟メスも、成熟オスのような赤い体色に変化した。未成熟と成熟のオスとメスのそれぞれから抽出した色素について酸化還元電流を測定して、色素の酸化型と還元型の割合を定量したところ、成熟オスだけ還元型オモクローム系色素の割合が顕著に高かった。

 これらの結果から、アカトンボの黄色から赤色への体色変化は、オモクローム系色素が還元型に変化することが主要な原因であることがわかった。

 植物などでは、アスコルビン酸など水溶性の抗酸化物質(還元剤)の蓄積がよくみられるが、アカトンボでも成熟オスでは抗酸化物質の合成や蓄積が行われ、オモクローム系色素の還元に関与している可能性が考えられた。

 オスに多い抗酸化物質
 そこで、トンボの皮膚を水で抽出して抗酸化物質の存在を調べたところ、成熟オスには抗酸化物質が多く含まれることが示された。また、この抗酸化物質を同定したところ、還元型オモクローム系色素そのものが、オスに含まれる抗酸化物質の主要成分であることが判明した。

 従来、多くのアカトンボ類でオスだけが赤くなるのは、婚姻色として性的に成熟したオスの識別やアピールに機能をもつと考えられてきた。しかし、今回の研究により、オスのアカトンボが日向に留まって縄張りをつくる際に、紫外線による酸化ストレスを軽減するという別の機能も果たしているという新たな可能性が考えられる。

 今回、アカトンボ類が体内色素の酸化還元状態を変えることで成熟に伴う体色変化をおこすという、動物ではこれまで知られていなかった体色変化機構が明らかになった。

 赤くなったトンボは細胞内が抗酸化状態となっており、標本にしたアカトンボでもかなりの期間にわたって赤色が保たれることから、色素の還元型の状態を維持する何らかの機構をもっているものと思われる。その機構を解明することにより、抗酸化作用に関する新たな理解が得られる可能性も考えられる。

 今後は、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、アカトンボの体色変化に関わる分子機構を解明することで、抗酸化反応を効率的に行い、その状態を維持する機構を明らかにしていく予定である。将来的には、天然の抗酸化物質を応用した製剤の開発などにつながる可能性もある。(産総研)

 アキアカネとは何か?
 アキアカネ(Sympetrum frequens)は、トンボ科アカネ属に分類されるトンボの一種。日本では普通に見られる。俗に赤とんぼと呼ばれ、狭義にはこの種だけを赤とんぼと呼ぶことがある。季節的な長距離移動がよく知られている。

 腹長23-31mm、後翅長23-30mm、体長は約40mm程度。日本特産種で、大陸部では極東アジアからヨーロッパにかけて広く分布する近縁種・タイリクアキアカネ S. depressiusculum (Selys, 1841)と置換する。タイリクアキアカネは、秋の後半に北西の季節風が吹き出す頃に、日本列島に吹き寄せられたものが各地で記録されるが、繁殖はしていないようで幼虫の発見例はない。

 同様に人里でよく知られた赤とんぼにはナツアカネ S. darwinianum (Selys, 1883)がある。アキアカネは夏に一旦低地から姿を消し、秋に成熟成虫が大挙して出現するのに対して、ナツアカネは生活史を通じて低地から姿を消さない。そのために夏にも低地で見られる方にナツアカネの和名が与えられたのであり、活動時期自体は両種にほとんど差はない。

 高山で夏を過ごすアキアカネの群れ
 繁殖するのは通常平地または丘陵地、低山地の水田、池沼、溝などであるが、まれに標高2000m代の高所からの羽化記録もある。5月末から6月下旬にかけて夜間に羽化した成虫は朝になると飛び立って水辺を離れ、1-2日間草に止まったまま体が十分固まるのを待つ。その後近辺の樹林、植栽木などに集合して群れとなり、4-5日間を摂餌に費やして様々な小昆虫を空中で捕食し、長距離飛翔に必要なエネルギーの蓄積を行う。

 十分に体力がついた個体は単独で、あるいは群れを成して日中の気温が20-25℃程度の3000mぐらいまでの高標高の高原や山岳地帯へ移動して、7月-8月の盛夏を過ごす。未成熟成虫が水辺を離れて生活するのは他のアカネ属の赤とんぼのみならず、非常に多くのトンボに共通した習性ではあるが、アキアカネの場合この移動が極端に長距離となる。

 低温時におけるアキアカネの生理的な熱保持能力は高く、活動中の体温は外気温より10-15℃も上昇するが、高温時の排熱能力は低い。そのため暑さに弱く、気温が30℃を超えると生存が難しくなり、このことが季節的な長距離移動の原因と考えられている。

 酷暑の年には移動先はより高い標高の地域となり、冷夏の年にはそれほど高いところまでは移動しないことが示唆されている。なお夏の昼間、日差しが強いときにアキアカネが逆立ちをするのは日光が当たる面積を減らし、体温の上昇を抑えるためである。

 繁殖の秋、鮮やかな赤に変化
 夏の間、高地で摂食を続けている間に生殖腺などの内部組織が発達、充実し、最終的に体重が2-3倍にまで増加する。昆虫などの節足動物は脱皮後に体の大きさは増大するが、それは消化管内にのみこんだ水や空気の圧力で外側の外骨格だけを膨張させているため、しばしば内部はすかすかの状態である。そのため、脱皮後は成長しないように思われがちだが、実は外骨格の膨張に伴っていなかった内部組織の成長が起こるのである。

 十分成熟した成虫、特に雄は体色が橙色から鮮やかな赤に変化し、通常秋雨前線の通過を契機に大群を成して山を降り、平地や丘陵地、低山地へと移動する。成虫の群れは低地に到着すると雌雄が結合したまま飛びまわり、稲刈りの終わった水田の水溜りのような産卵適所を探索する。

 このような浅い水溜りを発見すると、近くの草むらや地面で約10分ほど交尾を行い、交尾が終了するとやはり雌雄がつながったまま水面の上に移動する。産卵は水面の上で上下に飛翔しながら雌が水面や水際の泥を腹部先端で繰り返し叩き、その度に数個ずつ産み落とす。産卵が終わると雌雄は連結を解き飛び去り、夕方は単独行動を行うが朝になると再び雌雄が連結して生殖活動に移る。成虫は11月まで見られ、中には12月上旬まで生き延びるものもいる。

 卵は水中や湿った泥の中で越冬し、春に水田に水をはる頃になると孵化し、幼虫(ヤゴ)となる。アキアカネのヤゴは、体は短めで、肢は比較的細長い。頭部は横長で複眼は前側方に突出している。終齢幼虫に達した段階のヤゴの体長は17-20mm、頭幅は6.5-8mm。ヤゴは田植え直後の水田に大発生するミジンコなどを活発に捕食して急速に大きくなり、初夏の夜にイネなどによじ登って羽化する。

参考HP Wikipedia:アキアカネ 産業技術総合研究所:アカトンボがどうして赤くなるかを解明 

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