グリーンランドに異常に強い高気圧
 7月8日(米国時間)、氷の表面温度を測定している中分解能撮像分光放射計(MODIS)衛星は、氷床表面またはその付近のおよそ40%が溶けていると示していた。これはこの季節の平均融解率50%を少し下回っていた。

 だがそのわずか数日後、その割合は97%へと急上昇し、この巨大な島のほぼ全体で氷床が溶けた。その範囲は、ほとんど氷床に覆われていない島の端の低地から、氷床の厚みが3kmある内陸部にまで及んだ。

 原因は、異常に強い高気圧帯で、米航空宇宙局(NASA)は「熱のドーム」と表現しているものが、グリーンランドを覆っているためだと考えられている。グリーンランドでは、2012年5月末からこうした気候が続いている。

 この高気圧帯は7月16日から消え出したが、すでにその時点で、Summit Station(グリーンランドの中央、最高地点に近い海抜3,000mに位置する)が融解の兆候を示していた。

Antarctic

 こうした現在進行中の、南極氷床及びグリーンランド氷床そして山岳氷河の融解が、2万年前の氷期から引き続き起こっている間氷期の氷床融解現象ではなく、近年に特有の現象、すなわち人為起源の気候変調による極域氷床の変動である可能性を示唆する結果である。

 いわゆる、現在の地球温暖化によることを、東京大学大気海洋研究所(大気海洋研)が発表した。 成果は、大気海洋研の横山祐典准教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、7月13日付けで米地球物理学会誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。

 氷床コアからわかる温暖化
 氷床コアのデータから、この規模の融解は1889年以来であることがわかっている。「Summitの氷床コアから、この種の融解現象は平均して150年周期で起こっていることがわかっている。前回の融解が1889年だったことを考えると、今回の融解はちょうど周期通りだ」と、NASAのゴダード宇宙飛行センターの氷河学者で、衛星データを解析している研究チームのメンバーであるローラ・ケーニグは述べている。今後もこの現象が続けば、懸念される事態だという。

 一方で、今回の研究対象となった南極氷床とグリーンランド氷床は、比較的温暖な時期(間氷期)である現在も、その大部分が氷床に覆われている。同時に、気候変動との関連性がよくわかっていない氷床でもあるのだ。

 近年観測されたデータは、過去50年分程度であるため、はたしてその海水準上昇傾向(または氷床の減少傾向)が、近年の人為起源の環境変化によりもたらされたものなのか、過去2万年間にわたって続いてきているものなのかは、世界的に議論が続いていた。

 直近の氷期には北米大陸や北欧が厚さ3kmもの氷に覆われ、海水準は130mほど下がっていたことが確認されている。南極氷床も現在より拡大していたが、その規模については、いまだに議論が続いている状況だ。

 全球の主な氷床融解はおよそ6000~7000年前に終焉しているが、南極氷床やグリーンランド氷床が、引き続き融解していたかについては、統一見解を得られていない。

 そこで今回、青森県下北半島の過去の海水準の変化が、堆積物中のプランクトン組成(塩分変化の指標)や地形によって求められ、また海水準の変化のタイミングが、放射性炭素年代測定により正確に求められた次第だ。

 海水面の上昇に伴う地盤沈下 
 2万年前以降の海水準の上昇に伴って、海洋全体(つまり地球表層の70%)に均質に分散されたおよそ120~130mの厚みを持つ海水の荷重によって、海水の器である海洋全体が押し下げられている。

 それにより、ゆっくりした地殻変動が起こり、過去の海水準(つまり標高0m)が氷床からの距離や地下構造により、現在の海水準より高いところに現れる仕組みだ。今回の研究では、それらを物理計算によって比較検討することにより、氷床の融解の規模とタイミングについて検討が行われた。

 南極やグリーンランドの氷床からは離れた日本列島から採取された地質データと、固体地球の変形モデルを併用することにより、氷床融解の以下の3つのモデルについて検討した。

 その結果、氷期終焉後の主な氷床融解は、数1000年前、おそらく3000~4000年前までに終了していたことがわかった。従って、現在観測されている氷床融解の加速は近年に特徴的な現象であり、現在の温暖化に伴って引き起こされた可能性が示唆される。

 今回の研究の意義は、地球の現象をとらえる上では極めて短期間の人工衛星や測地学的データに基づく氷床融解のシグナルが、いわゆる自然現象ではない可能性を強く示唆した点だ。

 今後の温暖化で一番危惧されるのは、南極氷床を含む氷床の融解に伴う海水準上昇やそれに伴う海洋環境変化だが、氷床の安定性を検討する上でも重要な知見だ。現在準備中で2013年に出版予定の「第5次IPCC気候変動評価報告書」に対しても、重要な貢献となるという。

 また、今回の研究では、氷床から遠く離れた日本列島の地形地質データを、地球物理モデルと組み合わせることにより、人為起源の環境変化と自然現象とを区別できた点がユニークでもある。(マイナビニュース)

 6000年前の縄文海進
 地球の長い歴史をみると、顕著な海面上昇と海面低下は何度も発生している(海水準変動を参照)。これは260万年前以降の第四紀にもみられ、特に氷期が終わって間氷期に向かい温暖化していく時期に、数十mもの海面上昇が起こったと推定されている。6000年前までの約1万年間にも、間氷期開始に伴う100m近い海面上昇が発生している。

 この時期は太陽活動が活発で、年平均気温は現在より2~4℃高かった。しかしここ数千年では海水面は大きくは変化せず、過去3千年間は平均0.1~0.2mm/年程度の上昇量であった。しかし近年は地球温暖化の影響により、その数十倍のペースの海面上昇が観測され、さらに加速するものと懸念されている。

 現在では、一般的に「海面上昇」といえば19世紀以降の地球温暖化の影響と推定されるものを指す。地球史上の特定の時期に関して「海面上昇」と呼ぶこともあるが、この記事では特に断りがない限り地球温暖化によるものを取り上げる。

 近年は地球温暖化により、IPCC第4次評価報告書に記された値を上回る、3mm/年以上の速度での上昇が観測されている。このため今世紀中にメートル単位の海面上昇が起こる可能性が指摘されている。 海面上昇による影響は特に、ヴェネツィアなどの海抜が低い都市、オセアニアなどの小さな島国などで、深刻な問題となっている。

 仮に海面が1m上昇するとマーシャル諸島は国土の80%が沈没すると予測されている。東京やオランダ、バングラデシュの一部などのように、海岸沿いに海抜以下の地域(いわゆる海抜ゼロメートル地帯)を有する諸国や都市にとっても重要課題となっている。特にバングラデシュでは、1mの海面上昇で国土の18%にあたる2万6,000km2、岩手県と青森県を合わせた面積に相当する低地が沈むといわれている。

 海面上昇の原因
 海面上昇の主たる原因は海水の熱膨張であり、次いで南極氷床並びにグリーンランド氷床の融解とされている(北極海の海氷に代表される海氷・氷山・流氷は、融解しても海面水位には影響しない。)。

1.熱膨張 : 温度によって熱膨張率が異なるが、4°Cから離れれば離れるほど体積は加速度的に増える。
2.蒸発量 : 海からの蒸発量の変化は、海の体積の変化をもたらす。間接的に降水量と関係している。
3.南極やグリーンランドの氷床・氷河、山岳氷帽の融解 : 海水の浮力に依存せずに存在している氷床・氷河ならびに万年雪などは、融解によってそのほとんどの体積が海水の体積増加に寄与する。また、これら由来の氷山の場合は、陸上から海に流れ出た時点で氷河の体積の9割弱程度海の体積が増え、融解後にはさらに塩分濃度差の分だけ僅かに海の体積が増えるという二段階変化をする。
4.地形の変化 : 体積が変化しない場合でも、海底の隆起や沈降、陸上由来の土砂の堆積など、海に接している地形の変化によって海面が上昇する。
5.氷河底湖の流出 : 近年の温暖化により融解した分ではない水塊が、氷河の融解により海に流出し海水の体積を増加させる(温暖化による融解分は氷河の融解と同一視するが、これは区別できない場合も多い)。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia:海面上昇 マイナビニュース:やはり南極などの氷床融解の原因は人為的な地球温暖化のせい?

ツバル―地球温暖化に沈む国
クリエーター情報なし
春秋社
地球温暖化の予測は「正しい」か?―不確かな未来に科学が挑む(DOJIN選書20)
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化学同人

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