日産自動車、新開発“S-HYBRID”
 日産自動車は、新たに開発したハイブリッドシステム「S-HYBRID(スマートシンプルハイブリッド)」を搭載したミニバン「セレナ S-HYBRID」を8月1日発売した。排気量2.0Lの8人乗りで、クラス最大の室内空間とアレンジ可能なシートの特長をそのまま引き継ぎながら、実際の走行に近い新基準のJC08モードで1Lあたり15.2kmと、クラストップの燃費を実現した。

 スマートシンプルハイブリッドは簡易な小型システム。アイドリングストップ機能でエンジンを始動させる役割ととともに、通常の発電と回生時の発電機能を持つモーター「ECOモーター」の回生発電量と出力を高め、補助原動機にする。同時に、蓄電用量を高めるために補助バッテリーを加えた。システム全てがエンジンルームに収まり、広い室内空間が確保できる。

 スマートシンプルハイブリッドはアイドリングストップを補完する機能となり、増えた蓄電電力でアイドリングストップの頻度を高め、停車時間も延長。加速中には、アイドリングストップ後に余った電力でECOモーターを駆動し、エンジンの補助駆動力にする。セレナ S-HYBRIDはLED(発光ダイオード)を各種ランプに使用したほか、転がり抵抗を低減する低燃費タイヤを採用した。

S-HIBRID

 前輪駆動で238万4550円~279万9300円。燃費性能の高さからクラスで唯一、自動車取得税と自動車重量税が免税になる。日産は、セレナ S-HYBRIDの発売イベントを横浜市西区の本社をはじめ、東京都中央区銀座、札幌市中央区、名古屋市中区、福岡市中央区の各日産ギャラリーで8月24日まで開催。展示やデモンストレーションを交えたプレゼンテーションで環境性能をアピールする。(ECO JAPAN 2012年8月3日)

 “スマート&シンプルハイブリッド”
 日産の初めてのハイブリッド。どんなものだろうか?イメージとしては、日産の電気自動車“リーフ”で成功した、強力な電池とモーターをコンパクトにしておさめ、エンジンを補佐するパラレル方式で組み込んだものだ。

 日産リーフの電池は24kWh。家庭用の電力を2日分賄えるほど強力だ。こうした技術力の高さを、人気の8人乗りミニバン”セレナ”に搭載。多くのハイブリッドカーは、インテリアの広さを犠牲にするが、セレナの広さをそのまま、ハイブリッドシステムもエンジンルームにおさめている。

 ハイブリッドとは、エンジンとモーターが連携することで効率がアップするシステム。これまでは仕組みが複雑になり、部品が増えることで、室内が狭くなることがあった。そこで日産は、室内空間を優先するミニバンにふさわしいハイブリッドシステムを開発た。それがS-HYBRID。

S-HYBRIDの“S”は、スマート&シンプル。これは、減速時の運動エネルギーを利用してバッテリーに蓄えた電力を、ECOモーターによって加速時のエンジンの補助駆動力などに再利用するスマートでシンプルなハイブリッドシステム。

 エネルギー回生とトルクアシスト
 減速時、捨てていたエネルギーを再利用するエネルギー回生。これまで、車のスピードを落とすときには、ブレーキを踏んで、車の運動エネルギーを熱に変えて廃棄していた。S-HYBRIDは、スピードを落とす際に、運動エネルギーの一部を電気エネルギーに変換して回収する。このような仕組みを、エネルギー回生と呼ぶ。

 そして、回収した電気エネルギーは、バッテリーに蓄えられる。S-HYBRIDは、日産リーフで使われている、従来より多くの電気を蓄えることができるバッテリーを備えている。

 停止時、無駄なガソリン消費を抑えるアイドリングストップ。バッテリーに蓄えられた電気は、停車時にエンジンが停止するアイドリングストップの状態で使われる。エンジンが動いていなくても、カーナビゲーションなどクルマに必要な電気を供給する。S-HYBRIDは優秀なエネルギー回生システムと容量の大きなバッテリーを備えているため、アイドリングストップしている時間が長くなる。したがって無駄なガソリン消費が抑えられ、燃費が向上するしくみだ。

 そしてアイドリングストップしている状態からエンジンが再始動する際にも、バッテリーに蓄えた電気が使われる。このときも、日産リーフで使われている。強力なモーター技術が使われる。

 エネルギー回生でバッテリーに蓄えた電気は、発進加速時にも使われる。トルクが必要な発進加速時にモーターを回すことで、エンジンを助けるのです。これを、トルクアシストと呼ぶ。エンジンの働きをモーターが補うことで、発進加速を効率的に行うことが可能になった。

 ハイブリッド方式とは?
 ハイブリッドとは、エンジンとモーターが連携することで効率がアップするシステム。これまでのハイブリッドシステムには、どのようなものがあるのだろうか?

 パラレル方式:主役がエンジンで、モーターがサポート役の「パラレル方式」 。エンジンによる走行が主体。発進時に最大の力が出るモーターの特性を活かし、エンジンが燃料を多く消費する発進・加速時に、モーターでサポートする方式。従来のクルマにモーターとバッテリーなどを追加するだけのシンプルな機構。

 Hondaは、機構がシンプルでエンジンを主役とする「パラレル方式」を選択。構造がシンプルなため「パラレル方式」は、より軽量につくることができる。軽量であることは、クルマの運動性能をよくする点でも、燃費をよくする点でも有利。また、エンジンが主役でエンジンパワーとモーターパワーをロスすることなくダイレクトにタイヤへ伝えるので、スポーティな走りの楽しさを味わえる。

 スプリット方式:発進・低速時はモーターだけで走行し、速度が上がるとエンジンとモーターが効率よくパワーを分担。動力分割機構や発電機などがあり構成は複雑。エンジンは発電機も回す。
 トヨタハイブリッドシステムのスプリット方式(分割方式)は、パラレル方式にさらにバッテリー充電専用の発電機を加えたシステム。動力として、エンジンとモーター双方の出力を駆動に利用できる点ではパラレル方式と同様であるが、エンジンからの動力をプラネタリーギアを用いた動力分割機構により分割(スプリット)し、一方は発電機の駆動、他方は直接車輪の駆動と、それぞれに利用できる点でエネルギー効率に優れる。

プラネタリーギアの特徴を生かし、発電量と駆動力の分配割合を自在に制御できる点がパラレル方式との大きな違いとなる。エンジンを停止させたシリーズ方式的な制御パターンが加わるため、モーターの使用率はパラレル方式に比べ高い。1997年、プリウス用にトヨタハイブリッドシステム(THS)として登場し、スプリット方式は販売台数から、現在の主流となっている。
 シリーズ方式:エンジンを発電機の動力としてのみ使用し、モーターだけで走る方式。動力機構そのものは電気自動車だが、エンジンを搭載しているためハイブリッドカーの一種に含まれる。

 シリーズハイブリッドシリーズ方式(直列方式)は、エンジンを発電のみに使用し、モーターを車軸の駆動と回生のみに使用するもの。実際の仕組みは、エンジンで発電機を駆動し、発生した電力を大容量バッテリーに一旦蓄え、その電力でモーターを駆動し、走行する、自家発電が可能な電気自動車。電気自動車の大きな欠点とされる、出先での充電設備と長い充電時間、1充電あたりの走行距離が少ないことなどから、内燃車同様に燃料を補給するだけで開放される。
 エンジンで発電し、モーターで走行する、ガス・エレクトリックや、ディーゼル・エレクトリックと呼ばれる方式は古くから実用化されており、枯れた技術である。初期のハイブリッドカーはこれをベースとし、発電機とモーターの間に大容量バッテリーを追加することで、エンジンと発電機双方の小型化と、使用率の低減が可能となり、効率が改善された。

参考HP ECO JAPAN:日産自動車、新開発ハイブリッド「セレナS-HYBRID」発売  日産:リーフセレナS-HYBRID

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