海に眠る豊富な資源
 尖閣諸島の魚釣島に上陸し、不法入国の疑いなどで逮捕された中国の活動家らは、8月17日強制送還され香港に戻った。中国と台湾は尖閣諸島の領有権を主張している。しかし、それは1968(昭和43)年に日本、中華民国、韓国の海洋専門家が国連アジア極東経済委員会の協力のもと、尖閣諸島付近を含む東シナ海の海底調査を行った結果、世界第2位にもなる大量の石油資源が埋蔵されている可能性が指摘されてからのこと。

 日本政府は、それ以前に中台が尖閣諸島の領有を考えていなかったことは「サンフランシスコ講和条約第3条に基づき、米国の施政下に置かれた地域に尖閣諸島が含まれている事実に、異議を唱えなかったことからも明らか」としている。(産経news)

 海に囲まれている日本、領土は世界第61位で、世界の陸地のうちわずか 0.25%しかない。しかし、海の広さは領海と排他的経済水域を合わせた広さで世界6位となる。海洋には手つかずの資源が眠っている。これを利用できるかどうかに、我が国の未来はかかっているといっても過言ではない。

 今回、海から新たな資源が発見された。海洋研究開発機構は8月16日、世界最深のマリアナ海溝などに生息するヨコエビの1種から、繊維質を糖類に効率的に変える新たな消化酵素を発見したと発表。バイオマス(生物資源)を基にした燃料や食料の生産に応用が期待できる。同日付の米科学誌プロスワンの電子版に掲載された。

Hirondellea gigas

 エビは体長3~5センチのカイコウオオソコエビ。生息地のマリアナ海溝チャレンジャー海淵は深さ約1万900メートルで水圧は1000気圧。えさとなる魚が生息せず、エビの生態は謎だったため、海洋機構の研究チームは2009年にエビを採取し、消化酵素の働きを調べた。(時事通信 8月16日)

 超深海生物は何を食べているのか?
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は8月16日、日本の南方約2500kmに位置する「マリアナ海溝チャレンジャー海淵」の世界最深部(深度1万900m)に生息する「ヨコエビ(学名:Hirondellea gigas,和名:カイコウオオソコエビ)」の生態解明を行い、その食性究明において、タンパク質、脂質、多糖類などに対する分解活性を解析したところ、新規で有用性の高い消化酵素の検出及び精製に成功したと発表した。

成果は、JAMSTEC 海洋・極限環境生物圏領域の小林英城主任研究員ら研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間8月16日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE(Public Library of Science One)」に掲載された。

1998年、JAMSTECの前身である海洋科学技術センターの1万1000m級無人探査機「かいこう」によって、海洋の最深部であるマリアナ海溝チャレンジャー海淵での探索が行われた。

一般に、深海海底は非常に水圧が高く、また貧栄養であるため、生物の生息は困難な環境であることが知られているが、「かいこう」の探索によって、世界最深部にカイコウオオソコエビが多数生息していることが確認された形だ。しかし、これら超深海生物が何を食べて超深海で生息できるのかはこれまでわかっていなかった。

そこで今回の研究では、2009年の調査潜航において、JAMSTECが作製したフリーフォール式の「カメラ付き採泥システム」を用いて、カイコウオオソコエビを採取すると共に、その食性を解明するため、消化酵素の解析が実施された次第である。(JAMSTEC)

 カイコウオオソコエビの消化酵素
 カイコウオオソコエビが、貧栄養環境下で生息するための生態解明に取り組み、その消化酵素に着目し、タンパク質、脂質、多糖類などに対する分解活性を解析したところ、「セルラーゼ」、「アミラーゼ」、「マンナナーゼ」、「キシラナーゼ」などの植物性多糖分解酵素の検出に成功した。

 これら4つの酵素は、それぞれ「セルロース」、「でんぷん質」、「ヘミセルロース(植物細胞壁に含まれるセルロース以外の多糖類)」である「マンナン」と「キシラン」を分解することが知られており、同時に採取した海底泥から、木片も見つかったことから、カイコウオオソコエビは、世界最深部の海底で流木や枯れ葉、タネなどの植物片を食べると予想された。

 そこで、消化酵素の酵素学的性質を検討するため、カイコウオオソコエビから抽出した消化酵素と、でんぷん、「カルボキシメチルセルロース(CMC)」、「グルコマンナン」、キシランを反応させ、その反応生産物についての調査を実施。結果、以下の通りに各物質が検出された。

でんぷん:分子量が「マルトテトラオース」以下の「オリゴ糖」、CMC:「グルコース」と「セロビオース」のみ、グルコマンナン:低分子量の各オリゴ糖、キシラン:キシラナーゼ活性が不安定だったため、同定に至らず
 上記結果の内、CMCからグルコースとセロビオースを生産するセルラーゼの報告例はなく、新規セルラーゼであることが期待された。

 このセルラーゼについて、カイコウオオソコエビ10個体分を精製し、一般的な分子生物学的手法を用いて酵素学的な性質を検討した結果、カイコウオオソコエビのセルラーゼは1種類であり、分子量は約5万9000、反応至適温度は25~35℃、反応至適pHは5.6である新規セルラーゼであり、CMCとの反応において、グルコースとセロビオースを2:1の割合で生産することが明らかになった。(JAMSTEC)

 「新セルラーゼ」は木・紙を分解 
 カイコウオオソコエビがこの新セルラーゼを用いて、木片を消化しているのかどうかを検証するため、この新セルラーゼをオガクズと反応させたところ、グルコースの生産が認められ、さらに、カイコウオオソコエビは、植物由来の生産物であるグルコース、セロビオース、「マルトース」を多く保有しており、特に、グルコースは乾燥体重の約0.4%含まれていることがわかった。

 以上の結果により、生物の少ない超深海環境では、カイコウオオソコエビは、ほかの生物の死骸が落ちてくる間、流木などの植物片を食べて命を繋いでいると推測されたのである。セルラーゼ以外の酵素についても、その特性解明を進めているところだが、それら酵素は、不安定であり酵素学的な性質などの解明は今後の課題とした。

 なお、今回の研究により新規に同定されたセルラーゼについては、特許出願が行われている。今回の成果は、カイコウオオソコエビが保持するセルラーゼが、木材や紙類を含めた多種多様なバイオマス全般に対して、高いグルコース生産性を有していることを明らかにしたものだ。

 木材などと反応させることによって、エタノールの原料であるグルコースを容易に取得できることから、再生エネルギーとして期待されているバイオエタノールの生産などに大きく寄与することが期待できるという。

またエネルギーを利用せず、枯れ木などから直接グルコース生産が可能であることから、生産したグルコースを食品に加工することで、世界の飢餓地域の栄養改善にも利用できると考えられるとしている。

 さらに、同セルラーゼは天然由来のセルロースだけでなく、一般紙のような加工されたセルロースでも、室温でグルコースを生産できることから、同酵素の利用範囲が広いことが示されており、今後、セルラーゼ遺伝子を取得し、大量生産を行うための研究を推進していく予定としている。

 また、カイコウオオソコエビからは、セルラーゼ以外の酵素も検出され、有意かつ多様な特性が期待されるところだが、前述したようにそれら酵素は不安定であるため、研究の進展速度がセルラーゼに比べ遅れているのが現状だ。今後、解析方法などについて多角的に検討を進め、生活・社会に期待される成果に結び付けていきたいと考えていると、研究グループはコメントしている。(JAMSTEC)

参考HP 海洋開発機構(JAMSTEC):マリアナ海溝世界最深部に棲息する深海エビから新セルラーゼ発見

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