イカの色は何色?
 イカの色は何色だろう?だいたい食べるときの「白」をイメージする人が多いのではないだろうか?だが、購入するときはどうだろう?新鮮なイカは、褐色を帯びているが、鮮度が落ちると白色になる。しかし、生きているイカはまったく違う。釣り上げたイカの表皮が明滅するように変色することに驚きを感じた人もいるだろう。生きているイカは瞬間的に体色を変化させることができる。


 それを可能にしているのは、イカが生まれながらにして持っている「色素胞」という細胞で、表面から黄、赤、褐色の色素(オモクローム色素)が重なり合って配置されている。それぞれの色素胞は筋肉で四方から釣られていて、神経の伝達によって筋肉が収縮すると色素胞の周囲が引っ張られることで色が広がる。逆に筋肉が弛むと色素胞の面積も小さくなって色が消える。

 この他、イカには虹色素胞もあり、それはキラキラと輝く、虹のような色を出す。このメタリックな輝きは、微小なグアニンの板状構造の集まりを持つ皮膚細胞「虹色素胞」が光を反射して生まれる。これは構造色の一種で、サンマやイワシなどの「ひかりもの」にもあり、可視光線がほぼ完全に反射されることで、体色が銀色に見える。


Squid-iridescence

 今回、イカの皮膚の色を瞬時に変化させるのは、神経細胞の働きであることが、新たな研究で判明した。神経に電気的な刺激を与えると、虹色素胞の色や輝きが変化する様子を突き止めた。発見したのは、米国、マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋生物学研究所。以下はNational Geographic News(August 22, 2012)からの記事である。

 これまで、イカが虹色素胞の“オン/オフ”を切り替える正確な仕組みは解明されていなかった。今回の研究では、イカの皮膚細胞に電極を取り付ける新しい手法を導入。神経に電気的な刺激を与えると、虹色素胞の色や輝きが変化する様子を突き止めた。イカの皮膚に小さな穴をあけて神経束に電極をつなぎ、神経細胞に沿って電気パルスを送信した。

 神経動物行動学者パロマ・ゴンザレス・ベリード(Paloma Gonzalez-Bellido)氏は、「石鹸の泡や、海面に浮かぶ薄い油膜などと同じ効果を生む」と話す。トレバー・ウォーディル(Trevor Wardill)氏は、「およそ15秒で色が変わる。その間の変化は、まるで万華鏡のようだ」と話す。「赤から始まり、黄色、緑色と順に変わって、最後には青色になる」。

 今回の実験から、虹色素胞の制御に特化した神経細胞の存在が突き止められた。「虹色素胞を個別にコントロールする能力が脳に備わっているようだ」とゴンザレス・ベリード氏は語る。ウォーディル氏は、「次の大きな研究課題は、個々の色や輝きを変化させる神経細胞の働きだ」と述べている。


 イカの虹色の皮膚、色変化の仕組み解明
 研究に用いられたのはアメリカケンサキイカの一種だが、ウォーディル氏によると、虹色素胞の伸縮によって体色を変化させるのはイカやタコで普遍的な習性だという。しかし、皮膚の神経細胞や筋肉の構造が複雑なので、コウイカやタコなど近親種でもプロセスが同一かどうかはまだわかっていない。

「コウイカは、海のカメレオンと呼ばれるくらい体色の変更能力に優れている。皮膚に刺激を与えて色と偏光を変化させることは可能だが、そのプロセスは非常に複雑だ。(実験に使った)このイカの方がシンプルで扱いやすい」とウォーディル氏は述べている。

 研究チームは現在、神経繊維の端にシナプスがないか調査している。色の輝きのオン/オフを切り替える神経伝達物質が神経繊維から放出する役割がある。

 ウォーディル氏は、「0.5ミクロン単位まで調べたが、まだ末端は見つからない」と話す。あるいは、神経に沿った特定の場所で放出されている可能性もある。「どこか突き止めれば、プロセスがより詳細に判明するだろう」。

 イカの生態で皮膚が果たす役割は、まだ十分に解明されていない。「攻撃の意思を示したり、カモフラージュとして、恐らく日常的に活用しているのだろう。怒ると非常に鮮やかになるが、周囲にどんなメッセージを伝えているか正確に理解するのは難しい」とウォーディル氏は語る。

 イカは皮膚の色を変化させることはできるが、視覚器官は色を識別できない。眼の中にある単一の視色素が認識するのは、主に青色の光だけだ。ウォーディル氏は、「海で20メートルも潜れば、ほとんどの色は判別できなくなる。イカにとって、色はそれほど重要ではないのだろう」と推測している。

 今回の研究結果は、「Proceedings of the Royal Society B」誌オンライン版で8月15日に発表されている。(National Geographic News August 22, 2012)


 動物の色素とは何か?
 動物の色素には、植物由来のもの、動物が体内で合成するもの、体内微生物由来のものがある。金魚が赤いのも、ニワトリの卵の黄身が黄色いのも、フラミンゴの羽の赤い色も、どれもカロチノイドという植物由来の色素によるもの。だが、サルのお尻が赤いのは血液が透けて見えるから。哺乳類の体色にはカロチノイドは関係していないが、ビタミンAの材料として重要である。

 サケの身(筋肉)が赤いのも餌に由来するカロチノイドだが、産卵の時期になると筋肉の色素が体表に移行して婚姻色となる。だから体表に婚姻色の出ている鮭の身は色が薄く脂肪分が少なく人気がない。

 フラボノイド系色素も植物由来だが、カロチノイド系色素よりは分布が限られるという。光合成色素ではないから、植物界にも量的に少ないためであろう。プテリジン系色素は、動物体内で合成されるが分布は狭いようだ。

 動物の体色に最も重要なのはメラニンで、色も黒色だけではなく、黄色や赤褐色までさまざまなのは、ヒトの皮膚の色をみてもわかる。赤道付近の紫外線の強い地域では、白い皮膚がガンになりやすいなど不利であるのは自明だが、北欧にはなぜ黒い皮膚が存在しない、つまりなぜ黒い皮膚が不利なのだ。それはビタミンDの生成が低下するからだという。

 帝王紫といわれる貝の鰓下腺の分泌物は、光に当たって美しい紫に変化する。古代フェニキアより古くから作られていたという貝紫(インドール系色素)は、ギリシャ、ペルシャ、ローマ帝国でも高位聖職者や王族の衣服を染めていた。

 キノン系色素のうち、カイガラムシの色素はアントラキノン系でコチニールとして食品にも使われる。メキシコのサボテンにつく昆虫で、「オアハカ日誌」で詳しく紹介されていた。カイガラムシがなぜこんなに多量の色素を含んでいるかは、あまり分かっていないそうだが、他の生物に対する忌避物質らしい。人体に対する有害性は低いが、こんなものを人間は食べている。

 メキシコからこのすぐれた色素コチニールが入ってくる以前には、地中海地方に生息する別のカイガラムシが赤色色素として使われていた。ヴェネツィアンスカーレットといわれるケルメス染料が有名で、中世ヨーロッパでは赤も権力の象徴だった。「ヴェネツィア絵画のきらめき」展で今日見たティツィアーノ・ヴェチェリオの描いた、サロメがまとう赤はそのケルメス染料で染めたものなのかもしれない。


参考HP Wikipedia 色素 イカ National Geographic news:イカの虹色皮膚、色変化のしくみ解明 壊れかけたメモリーの外部記憶:動物の色素-多彩な色彩の世界


動物の色素―多様な色彩の世界
クリエーター情報なし
内田老鶴圃
色素細胞―機能と発生分化の分子機構から色素性疾患への対応を探る
クリエーター情報なし
慶應義塾大学出版会

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